自宅学習で英語脳を育てるコツは?スーパーバイリンガル小学生・川上拓土くん&ママに聞いた!

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 子どもが興味のある分野に「英語」を持っていく

「“英語をさせよう”ではなく、子どもが興味のある分野に英語のほうを連れていく、そんな環境を作るように心がけていました」と拓土くんママ。

この考え、すべての子育てに通じるような金言ですよね。子どもの好きなものに対する吸収力には目を見張るものがあります。そこに英語を寄せたのだそう。拓土くんが食虫植物に興味があるときは、食虫植物に関する英語の本を取り揃えたそうです。

食虫植物に興味をもったときは、実際に育てながら食虫植物に関する英語の本を

映画や洋書でさらに興味を深める

また、映画『ナイトミュージアム2』を観たときには、リンカーンが出てきたことをきっかけにアメリカ大統領に興味を持ったため、大統領にまつわる洋書を数冊用意したのだとか。

「和書だと、習っていない漢字が多かったり、保育園児には言葉が難しいところがありました。その点、洋書だと、知らない単語は出てきますが、和書ほどハードルは高くなく、かえって敷居が低かったんです」。

拓土くんママのお話を聞いていると、子どもの世界観を広げてあげるサポートが、親の役割なのだと伝わってきます。

「拓土は、基本的に知らない単語が出てきても辞書はひかず、前後の文脈で意味を推測して読み進めていきます。同じテーマの洋書に数多く触れることで、同じ単語と出会う頻度があがり、おぼろげだった意味が徐々にはっきりとしてくるようです」

映画がきっかけで興味をもったアメリカ大統領や偉人に関する本も、やはり洋書で

英語習得は、とにかく長丁場! 続けるためのモチベーション

「まず、英語習得は、とにかく長丁場。すぐに結果は出ないものなので、1~2年でインプットを止めてしまわないことが大切! インプットさえ続けていれば、アウトプットは必ずあとからついてくるから諦めないで」と拓土くんママ。

今までのお話からも伝わってくるように、英語をインプットする時間が多量に必要になりますね。そのためには、長丁場を支えるモチベーションも必要でしょう。

「英語に取り組んでいく中で、英語をやっている意義みたいなものを本人が感じられる瞬間があるといいですよね。たとえば、『家族にもお友達にも通じない英語』ではなく、『海外の人と交流するための言葉』なんだということを実感できたらしめたもの。
街中で出会った外国人の方に、まずは”Hello”と笑顔で話しかけてみてください。海外の方たちは大げさとも思えるくらいに褒めてくれます。それがうれしくて、海外の人を見かけるたびに話しかけていた拓土は、のちに観光ガイドをするようになりました。英語を身に付ける”ことで広がる世界を感じることが、自然と英語に対するモチベーションをあげてくれるんです」

と力強いアドバイスをくださいました。

英語をツールに、さまざまな国の人と交流をはかる拓土くん

 

英語が学習教科の一つとなってしまうと、英語を嫌いになってしまうこともあるかもしれません。“英語を身につけたら、こんなに楽しいんだ”という経験を少しずつ積み重ねて、英語に自然と親しんでいく環境に誘導していけたらいいですね。

 『プラスチックのうみ』翻訳時の舞台裏

『プラスチックのうみ』の翻訳の依頼が来たのは、拓土くんが偶然にも『Plastic Planet』という環境問題に関する本を読んでいた時のことでした。あまりにもタイムリーだったので、「『プラスチックのうみ』は、僕が翻訳する運命なんだ!」と直感的に思ったそうです。

そんな拓土くんですが、翻訳時に苦労したことはあったのでしょうか?

「会話だと意味が通じあえばいいですが、翻訳はただ訳すだけではなく、原作の世界観を壊さずに訳すのが大変でした。あと、原作では、韻が踏んであって音の響きが心地よかったんだけど、日本語に訳すと音が変わって韻が消えちゃって・・・。だから、せめて原作の持つリズムは残そうと思って頑張りました」と拓土くん。

会話と文章翻訳のちがいに、あらたな発見も

 

普段、英語で会話をしているときは、頭の中で翻訳することなく英語のまま理解しているという、拓土くんですが、「普段しないことにチャレンジできて、いい勉強になった」とにっこり。日本語に訳してから、理解するという経験はこれまでなかったため、新鮮なチャレンジだったそうです。

 食物連鎖のように言葉がつながっていく絵本『プラスチックのうみ』

「フォーカスしたい対象が英語だと文頭に来るのですが、日本語に訳すと文尾に来てぼやけてしまいます。だから、この本では『あみです』『ぎょせんです』というように、長い修飾語句のあとにくるメインキャラクターを最初に置いて、対象をはっきりとさせる工夫をしました」

最初は直訳をして、それを読みながら英語の時にあったリズム感を出すようにしたそうです。

英語と日本語の文法のちがいに配慮して翻訳した絵本の本文

 

 「和訳をしたことはないから、大変でした。でも翻訳するのは楽しかったです。僕が訳したら、日本の人にも読んでもらえるし、僕の名前も載るし!」

と弾ける笑顔を見せてくれました。スーパーキッズと呼ばれている拓土くんですが、無邪気な笑顔は小学生そのものでした。

 将来の夢は、「英語で執筆する物語作家!」

英語の観光ボランティアを通して、日本や岡山の歴史・文化にも詳しくなれたと拓土くん

 

「英語を話せて良かったことは?」と聞くと、「日本以外にも繋がりができ、交流が続いていること」と拓土くんは教えてくれました。
ボランティアガイドを通して知り合った、70代のオランダ人のご夫婦や画家でもあり、作家でもあるアメリカ人の方など、コロナ禍中もメールなどでお互いに気遣いあっていたそうです。

また、拓土くんママからは違う視点からの良さをうかがいました。

「海外の方と交流をするようになると、むしろ日本人であることを意識することが増えました。外国の方に日本のことを説明しようとすると、歴史や文化について勉強しなければならないですし、”日本人とは”と普段から意識するようになりますから」。

英語を学ぶことが、日本人としての心を育てることにも繋がるようです。

 最後に拓土くんの将来の夢を聞くと「英語で書く作家になりたい。ルイス・サッカーの『Sideways  Stories  From  Wayside  School シリーズ』や『Holes』が好きです。僕も物語を書きたい!」と教えてくれました。拓土くんの書く物語を目にする日も遠くないかもしれませんね。

川上 拓土(かわかみ たくと)
2008年生まれ。岡山県在住。生後6か月より教材を用いた家庭学習で英語を学び、小学2年生のころから、岡山の後楽園や倉敷の美観地区などで英語による観光ボランティアガイドを始める。環境問題にも関心があり、絵本『プラスチックのうみ』の翻訳を小学5年生で手がける。
作/ミシェル・ロード 絵/ジュリア・ブラットマン 訳/川上拓土|小学館|1,500円+税
人間が出したプラスチックごみが、どのように海を汚し、海に暮らす生き物に影響を及ぼしているのか、そしてきれいな海を取り戻すにはどうしたらいいのかを、美しいイラストと分かりやすい言葉で伝えます。日本語版監修は九州大学応用力学研究所教授・磯辺篤彦氏。

取材・文/末原美裕(京都メディアライン)

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