【親子で学ぶSDGs】vol.1環境先進国スウェーデンの当たり前で豊かなエコ暮らし

 

SDGsとは、Sustainable(サスティナブル)・Development(デベロップメント)・Goals(ゴールズ)の略で、「持続可能な開発目標」という意味。地球の暮らしを守るため、2030年までに解決したい17の課題目標が2015年に定められました。「親子で学ぶSDGs」では、今、全世界が取り組んでいる持続可能な循環型社会のための「新しい社会と暮らし」の実践例を紹介していきます。ナビゲーターは、武蔵野大学環境システム学科のオサム先生こと明石修准教授。第1回は、環境先進国であるスウェーデンの現在をレポート。子どもたちが生きる未来に希望のトーチが光る、そんな世界がすでに始まっているのです。

スウェーデンが、環境先進国と呼ばれるワケ

ごみで走る自動車、CO2 排出削減に貢献するハンバーガー、化学物質を使わない美容室。まるで未来の光景のようですが、環境先進国・スウェーデンで実現していることです。

去年、僕は学生たちと持続可能な社会づくりで世界をリードする北欧スウェーデンを訪ねました。そこでは、人にも環境にもやさしい持続可能な社会づくりが進んでいました。今回は、そこで見てきた明るい未来のヒントを紹介したいと思います。

まず、スウェーデンでは、スーパーに行けば、たくさんのエコでサステナブル(持続可能)な商品に、当たり前に出合うことができます。オーガニック(農薬や化学肥料を使わない)な野菜や果物、フェアトレード(途上国の生産者の経済的・社会的自立をサポートする)のコーヒー、熱帯雨林を守る紅茶、持続可能な方法で獲られた魚介類、森林を保全する紙製品、プラスチックを使わない歯ブラシまで! しかも、第三者機関による審査が入った認証ラベル(お墨つき)つき。

環境ラベルのある商品を選ぶことでエコな暮らしを応援

スーパーなどで普通に売られているエコやオーガニック、フェアトレードなどの商品。これらを使うことがサステナブルな社会につながる。

オーツ麦のミルク。ヘルシーで環境に優しい。C O 2排出量も書かれたおしゃれなパッケージで大人気。

途上国の学校づくりに売り上げが提供されるバナナジュース。これを飲めば、おいしく、社会貢献ができる。

フェアトレードで、オーガニックで、CO2を排出しない、人にも地球にも良いPeople PlanetCoffeeコーヒー。

エコで健康な暮らしを支える様々な社会実践

大手ハンバーガーチェーンでも、ベジタリアン向けの「ベジバーガー」を販売

また、環境や健康に配慮したオーガニックな食材やベジタリアン向けの食も広く普及しています。大手ハンバーガーチェーンでは、普通のハンバーガーと並んで、大豆ミートを使ったベジバーガーも売られています。僕も食べたのですが、まさに「肉」の味でとてもおいしかったです。しかも、ちゃんと肉汁(的な野菜の汁)もありびっくりしました。そういう技術開発も進んでいます。

このハンバーガーチェーンでは、農場や輸送過程、製造工程等で排出されるCO2 を削減することはもちろんのこと、アフリカでの植林を通じて排出される以上のCO2 を大気中から吸収しています。つまり、温暖化に対して良い影響を与える(Climate Positive な)ハンバーガーです。

大豆ミートを使ったエコでヘルシーなハンバーガー。とてもおいしく、若者をはじめ多くの人に大人気。

ファッションや美容にも浸透している「エコ」

ファッション分野にもサステナビリティは浸透しています。素材に100%オーガニックコットンを使用し、購入後、着古した服を修理してくれるジーンズショップや、お客さんや従業員の健康のためヘアカラーに化学物質を使わない美容室もあります。まさにエコで循環型、人の健康にもいいビジネスです。

自然素材のものを使った美容室のヘアカラー。化学物質を使わないことで、環境にも人の健康にもやさしい。

オーガニック100%の素材を使ったジーンズショップ。着古した服を無料で修理し、最終的に着なくなったジーンズは引き取ってリメイクする循環型ショップ。

 

さらに、移動もエコです。街は自転車であふれています。自転車に乗ることで運動になるし、排気ガスやエネルギー消費、渋滞などの問題が解消されます。街を走るバスは地域の生ごみを発酵し発生したメタンガスを使って走ります。ゴミですら資源に変えているのです。

エコで健康的な街づくりを目指すスウェーデンでは自転車用の道が整備され、多くの自転車が街を行きかっています。

街を走るバスは、生ごみをガス化したバイオガスで走る。1kgの生ごみで2km走ることができる。

 

このように、スウェーデンでは、社会や暮らしのあらゆるところに、暮らしの質を高めるサステナブルなものや仕組みが普及していて、人々は豊かな暮らしをする一方で、一人あたりのCO2 排出量は日本の半分以下、資源のリサイクル率は99% というエコ社会です。まさに未来の社会という感じがしませんか。

サステナブルな社会へ移行し始めている世界の潮流。日本でも変化の兆しは見え始めています

興味深いのは、こういう変化が大きな流れになって起きてきたのは数年前からという点です。ということは、日本でも大きな変化が数年で起きる可能性があります。

実は、すでにその変化の兆しはいろいろなところで見えています。例えば、スーパーでは、森林を守る*FSC® 認証、海を守る**MSC 「海のエコラベル」などの環境ラベルのついた商品も売られ始めています。それらを選択することで、持続可能な社会への流れを応援することができます。

*FSC®認証 持続可能な資源管理をおこなう森林から生産された製品(木材や紙など)を表す環境ラベル

**MSC「海のエコラベル」。持続可能な資源管理をおこなう漁業で獲られた水産物を表す環境ラベル

ほかにも、さまざまな変化の兆しが日本でも見え始めています。次回からは、それらを紹介しながら、子どもたちが生きる未来の希望について考えていきたいと思います。

教えてくれたのは

明石修准教授(オサム先生)

武蔵野大学環境システム学科准教授。主宰する「明石ラボ」では、人と自然が共生したサステナブルで循環型の社会はどのように実現できるのか、について日々、学生たちと研究と実践を行っている。専門分野は、自然エネルギーや持続可能な食と農(パーマカルチャー)、モノの消費と循環経済など。 https://akashi-lab.com/

「親子で学ぶSDGs」は『小学一年生』別冊HugKumにて「21世紀的地球の暮らし方」のタイトルで連載中です。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

『小学一年生』2020年4月号 別冊HugKumより 執筆・写真提供(スウェーデン)/明石修 構成/神﨑典子 

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任つかう責任

SDGsとは?

編集部おすすめ

関連記事