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「誤学習」を起こしがちなASDの子の2つの特徴
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもと定型発達の子どもとの一番大きな違いは、誤った行動を、自分の気づきや周囲からの情報によって「調整」できるかどうかという点です。
ASDの子どもの場合、
・情報取得の段階に偏りがある
・誤った場面・誤った行動を自分で修正することが難しい
という2つの特徴があります。
保護者からは、子どもの行動に悩んでいる、という相談をよくいただきます。その子どもの行動の背景には「誤学習」が影響していることがあります。今回は、女の子の保護者からよく寄せられる、「誤学習」が背景にある事例を2つご紹介します。
事例1 きょうだいのお世話をしたがる子(6歳)
「自分の身支度はできないのに、人のお世話ばかり焼きたがって困っている。特に下の子のお世話を無理やりしようとして、下の子が嫌がって泣いても止めない」
「お世話」というと下の子の面倒を見ているイメージを持たれるかもしれませんが、当人の意思とは関係なく無理矢理されているならば、それは「邪魔」としか感じられません。
たとえば着替えの場面。自分の着替えはなかなか進まないのに、下の子の着替えには手を出す。下の子は自分でやりたいのに邪魔されてイライラし、泣きだしてしまう。
保護者は「自分の用意をしなさい」と女の子を注意しますが、自分はよいことをしていると思っているので、反発して泣きだし、結果、保護者が疲れ果ててしまう――という場面です。
背景にあるのは、周囲の大人による「強化」
この行動の背景には、周囲の大人による無意識の「強化」があることが多いです。この場合の「強化」とは、本人が行動した内容に対して、周囲から報酬が得られた場合、その行動を繰り返すことを言います。
大人が子どもの着替えを手伝う場面を見て、真似をする
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強化:それを見た大人が「〇〇ちゃんすごい!お世話してあげてるのえらいね!」と大げさに褒める
↓
誤学習:「小さい子が着替え始めたら脱がせて(着せて)あげることが“いいこと”だ」、つまり、お世話をすることがいいことだと誤った学習をしてしまう
こうして、小さい子が着替えだすと、余計な“お世話”をしようとして、自分のことは放ったらかしになり、大人に注意を受けることになります。これは着替えだけでなく、食事や遊びの場面でも同様に起こります。
つまり「お手伝い」と「余計なこと」を、相手の反応(嫌がって泣く)から判別することができないのです。
定型発達の子どもであれば、下の子が泣きだしたり大人に注意されたりすれば、自分のことのように置き換えて考えてイメージすることができます。しかし自閉スペクトラム症の子どもは、相手の立場に立って考えることが苦手なため、行動の修正に時間がかかりやすい傾向があります。
「誤学習」を生まない対応のポイントとは?
この事例の場合は、どのように対応をしたら「誤学習」を生まずにすむのでしょうか。
お手伝いをしようとした場合、テンションを上げて褒めず、また、お手伝いしようとしたことを頭ごなしに否定しないことです。そうして、冷静にこう伝えます。
「着替えを手伝おうとしたのね。子どものお手伝いは大人がやるから、まず自分の着替えをしよう。●●ちゃんはお着替え、手伝ってほしい?」
本人が着替えを苦手としているなら「手伝ってほしい」と訴えるでしょうし、自分でできるなら自分からやり始めるでしょう。
事例2 アイドルファッションへのこだわり(11歳)
「基本的に袖なしの服を着たがり、Tシャツでも首を引っ張って肩を出そうとする。冬でも、寒いはずなのに肩紐のワンピースを着たがる」

ファッションが好きな、軽度知的障害を伴うASDの11歳の女の子の事例です。特に幼いうちは、ママのお化粧やハイヒールを真似したがる子も少なくありません。
詳しく話を伺うと、アイドルの衣装で肩やお腹が出ているファッションを見て「可愛い」と理解し、「自分も同じ格好をすればアイドルのようになれる」と考えているということでした。
定型発達の11歳であれば、冬に肩紐のワンピース一枚では寒いと分かるので、そのままでは着ようとしません。「寒くても仕事だから頑張っている」と状況を推測できるからです。
しかし自閉スペクトラム症の子どもは、こうした背景の推測が難しい場合があります。本人の興味・嗜好が強く影響しているため、家庭で時間をかけて教えていくしかありません。
具体的には、
・真似をしていたアイドルの、舞台ではなく、日常の映像やSNSを見せ、「メディアに出ていないときは暖かい格好をしている」ことを教える。
・家にいるときは、アイドルのような服を着てよい時間を設ける。
・外の気温が25度以上のときは肩を出す服を着てよい。
などのルールを家庭で決めることにしました。このケースは、家庭内でルールを明確にすることで、本人が納得できました。
本人の気持ちが突然変わって戸惑いを感じることも。でも、子どもはちゃんと親を見ています

このような本人の興味や好みの問題は、なかなか手こずる反面、話し合いがうまくいったと思った途端に、本人の気持ちが突然変わり、強くこだわっていたことをしなくなる場合もあります。保護者が「今までの交渉と、そのための時間と労力は一体何だったのだろう」と感じてしまう、そんな「肩透かし」を食らうケースもよくあるのです。
それならほうっておいたら自然にしなくなるのでは、と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かにそういうケースもあります。しかし、その間に新たな誤学習がプラスされ、先の事例で言えば、肩出しの服から、腹出しの服になる…とエスカレートする場合もあるのです。
私は、保護者が子どもに向き合い、正しい方向性に導く労力は無駄ではないと考えています。子どもが納得するように向き合っている姿も、子どもはしっかり見ているからです。真似や模倣は、悪いことばかりではなく、大人が意識して行動を見せていくことが、子どもの成長に良い影響を与えていると考えています。
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記事監修

保育士、公認心理師。発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育を行う放課後等デイサービスLuce(ルーチェ)を2022年まで運営。現在は障害のあるお子さんと保護者が一緒に通うことができる脱毛サロンLuceを運営(施術中に療育相談に対応可)、子育てや療育相談、事業所での性教育のやり方、職員研修やコンサル、講演等を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』、『発達障害の男の子のお母さんが早めに知っておいて良かったこと70』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。
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