アニメ業界の舞台裏は壮絶！『ハケンアニメ！』は白熱の演技合戦が見もの

熱いチームワークが心に染みる『ハケンアニメ！』

日本が世界に誇るアニメといえば、大人も子ども夢中になれる最強のコンテンツです。そんなアニメ業界で、最も成功したアニメの称号＝「ハケン（覇権）」を手にすべく大奮闘する人たちを描く映画『ハケンアニメ！』が、5月20日（金）より公開されました。

アニメ業界の舞台裏といえば、広瀬すず主演の朝ドラ「なつぞら」も記憶に新しいところでしょう。今回はSNSありきの現代を舞台にしているので、まさに今を生きる私たちが共感できるリアルなお仕事ムービーとなっています。

実際に魅力あふれる２作のアニメ作品も登場するので、ファミリーで観れば盛り上がれること請け合いです。また、コロナ禍でリモートワークが多くなった今だからこそ、人と人が現場で情熱をぶつけあい、切磋琢磨しあっていく姿を見て、熱いものがこみ上げてきそう。物作りにおける生みの苦しみや楽しみ、喜び、達成感など、すべてが詰まった快作となっています。

吉岡里帆、中村倫也ら実力派俳優陣が繰り広げる仁義なき戦い

原作は、直木賞＆本屋大賞受賞作家・辻村深月の同名小説で、「ハケン」を勝ち取ろうと闘っていく人たちの“仁義なき戦い”はかなり目からウロコの内容です。正直、見たくなかったような舞台裏の凄まじさにおののくことも多々あるかと。

主演の吉岡里帆が演じるのは、大チャンスをつかんだ新人監督の斎藤瞳。そして、彼女とハケンを巡り、ガチの勝負をしていくライバルの天才ワガママ監督・王子千晴役に中村倫也、瞳をサポートするつかみどころのない超クセ者プロデューサー・行城理役を柄本佑、そして王子の才能を信じて人生を懸けるプロデューサー・有科香屋子役を尾野真千子と、実力派俳優陣による白熱の演技合戦が見ものです。

メガホンをとったのは、中村倫也主演映画『水曜日が消えた』（16）で監督デビューをした吉野耕平ですが、もともと新海誠監督作『君の名は。』（16）のCGや空間デザインにも携わっていたクリエイターなので、今回のような作品なら、そのスキルを十二分に発揮できたかと。

また、アニメ業界を描くということで、劇中アニメの制作陣も一流どころを揃えています。Production I.Gをはじめ、日本を代表するトップクリエイター陣が参加し、実写本編の監修も東映アニメーションが務めるなど、鬼に金棒的な最強チームが関わっているので、隅々まで見応えのある作品に仕上がりました。

逆境に立たされても諦めないド根性スピリット

とにかく自分が作るものに対して一切妥協をせず、いいものを作りたいという信念を貫く瞳。令和の時代に叫ばれる「働き方改革」と真逆のベクトルを行く人たちが描かれていきますが、瞳のひたむきさを見ていると、彼女の情熱に突き動かされていく周りの人たちにとても共感させられます。

瞳のクリエイティブの原点になったのは、孤独だった少女時代の自分を救ってくれたアニメです。その作品に出会い、瞳は「初めて自分の人生が肯定された」と感じたそうです。

そして、熱い情熱を注げるものを見つけた瞳が、今は自分と同じように居場所を見つけられない子どもたちのために、すばらしい作品を作ろうとしている。そのポジティブな連鎖が、コロナ禍においては特に希望を見出してくれそうです。

きっとママやパパにも、自分の心を奮い立たせてくれた作品や、心に刺さった大切な1作があるのではないでしょうか？劇中ではそういう作品を生み出すクリエイターの葛藤や苦悩もリアルに描かれるので、そういう製作者への感謝の気持ちもあふれ出てくると思います。また、何事においても諦めなかった人だけが見ることができる景色がなんとも感慨深いです。

いろんな意味で、頑張る人たちを肯定し、元気がもらえる極上のエンターテイメント作品になっている『ハケンアニメ！』。ぜひご家族で観ていただきたいおすすめのエンターテイメント作品です。

文／山崎伸子

©️2022 映画「ハケンアニメ！」製作委員会