「子どもの障がいは公開した方が良い」「親も自由に生きていい」障がいのある子を社会人まで育てた当事者がそう考えるワケ【発達障害の子育て】

成人した知的障がいのある息子を持つ作業療法士のクロカワナオキさん。著書『障がいのある子どもを育てながらどう生きる?』(WAVE出版)には障がいのある子どもを社会人になるまで育てた経験から、先輩として、今悩んでいる親に送るメッセージが集められています。今回は著書より、親にも子どもにも寄り添う提案を5つご紹介します。

※ここからは『障がいのある子どもを育てながらどう生きる?』(WAVE出版)の一部から引用・再構成しています。

子育てにゆとりを作る

「親の我慢」は子どものためにならない

親が我慢すると、子どもにどのような影響があるのか。私自身に起こったことを例にあげて考えていきます。

・子どもに優しくなれない
 →我慢をしていると、我慢すること自体にエネルギーが費やされ、限界を超えてしまうと、そのはけ口を自然に子どもに向けてしまいます。
・我慢していることが子どもに伝わる
 →子どもは迷惑をかけていることを感じ取ってしまうことがあります。
・子どもが我慢をよいことだと認識してしまう
 →親がいつも我慢していると、「我慢することはよいこと」だという価値観に染まる恐れがあります。

子どものためにも、親がある程度自分のやりたいことに取り組み、親が自分の機嫌に責任を持つことが大切なのです。

親の我慢は子どもの成長を妨げることにもなる。

子育てのために人間関係を築く

子どもの障がいを公開して環境を整える

カミングアウトは子育てがしやすくなる一つの手段です。

息子のことを友人にカミングアウトしたことは、結果的に私たち親子へのインフォーマル(非公式の/形式ばらない)サポートになりました。

同じ世代のご近所さんは、気にかけてくれるようになり、息子にとっても留守番や近所に外出するときの大きな安心材料になっているようでした。

職場の上司や同僚にカミングアウトした結果、仕事の時間に融通が利きやすくなりました。
息子の療育や体調不良のときは躊躇なく頭を下げて早退や休みをもらい、子育ての時間を確保しながら昇進も果たしました。職場でカミングアウトすることは、ワークライフバランスを整えることになるのです。

カミングアウトすると、子育ても仕事もしやすくなる

子どもが成長できる支援をする

教育の場を複数確保する

教育の中心となる場を思い浮かべるとき、勉強や社会的行動を学ぶ「学校」と、親から生活の仕方を教わる「家」という2つのイメージが多いと思います。

しかし現実には「学校」では意見の合わない先生が担任になったり、「家」では思春期の子どもと親子関係がギクシャクしたりします。

私は「学校」「家」「放課後児童デイ」「個別指導塾」「外来リハビリ」を準備していました。どこかがうまくいかなくても、ほかの場で補えるようにしておけば、成長のための大きな流れを止めずに済むからです。

教育の場を複数確保することは、不測の事態への備えになり、親の心のゆとりを確保することにつながります。

教育の場を複数用意してリスクを分散する。

「キッズ携帯」を活用する 

息子は小学校低学年の頃、相手の話を最後まで聞くことができませんでした。発語は単語だけで、こちらが言いたいことを予測して会話していたので、いつまでたっても、言葉が文章に育ちません。
この悩みを言語聴覚士の先生に相談したところ、すすめられたのが「キッズ携帯」でした。

「キッズ携帯」のメールは、言葉を視覚で認識します。会話の内容が視覚情報に変換されるので、聞き終わるまで待てない子どもでも内容を確認しやすいのです。

「キッズ携帯」を購入したことで、息子と遠方にいる祖父母とのやり取りも始まり、コミュニケーションの頻度は増えました。

社会に出るまでに、「ありがとう」「ごめんなさい」という感謝や謝罪の気持ちを素直に伝える練習をするのにも、メールは向いています。
コミュニケーションのバリエーションを増やしたかったり、外出練習での連絡手段を考えたりするとき、「キッズ携帯」は子どものパフォーマンスを引き出すための有効なツールになるのです。

「キッズ携帯」はコミュニケーション能力を高める療育ツールになる。

子どもの将来を支援する

継続できない支援は手放していく

一時期、私は患者さんの自宅を訪問してリハビリをする仕事をしていました。

在宅介護では、介護者の疲労やストレスが蓄積し、体調を崩して介護を続けられなくなるケースがあります。

介護を上手に続けている家族には、自分でできる介護の限界を意識しているという共通点があります。
自らに抑制をかけ、介護が継続できるようにコントロールしているのです。

障がいがある子どもの生活の世話に、「終わり」はありません。
子どものために自分を犠牲にして疲弊し、子どもの世話を続けることができなくならないように、親が自分を大切にすることが必要です。

私は、子どもとの生活から幸福を、今もたくさん受け取り続けています。これから続く生活も、今と同じままでありたい。

そのために「自分を大切にできるから、子どもも大切にできる」という順序を間違えないようにしたいと考えています。

終わらない子育てでの問題は、継続することを基準に判断する

※ここまでは『障がいのある子どもを育てながらどう生きる?』(WAVE出版)の一部から引用・再構成しています。

著書はこちらをチェック

著/作業療法士 クロカワナオキ WAVE出版 1,980円(税込)

障がいがある子どもの子育てはいつまで続くかわからない。
育児、教育、仕事、時間、お金、周囲との関係、親亡きあとの子どもの将来、そして自分の人生———
親であるあなたのことを後回しにしないために。
発達障がいの子を社会人になるまで育ててきた著者が試行錯誤してわかった、自分も子どもも優先する
「こう考えればよかったんだ!」を全部詰め込んだ1冊
障がいのある子どもが不憫だし、そういう子どもを育てている自分も不幸なのでは

親の生き方は子どもにも伝わる。まずはあなたが軽やかに生きる。

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構成/kidamaiko

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