【つるの剛士さん×産婦人科医・宮城悦子先生対談】子宮頸がんを予防するHPVワクチンは、女の子はもちろん男の子にも有効。親子でしっかり話し合って、接種について考えよう

PR /横浜市立大学附属市民総合医療センター(厚生労働省「HPVワクチン拠点病院整備事業」関東ブロック)

子宮頸がんは、「マザーキラー」とも呼ばれるがんです。理由は、若い女性の死亡率が高く、子どもを残して亡くなることが多いためです。また子宮頸がんは、性交渉によってヒトパピローマウイルスに感染して発症することがわかっています。
子宮頸がんを防ぐために有効なのが、小学6年生から高校1年生相当の女の子を対象にした定期接種HPVワクチンです。
横浜市立大学附属病院産婦人科部長・宮城悦子先生に、子宮頸がんとHPVワクチンについて教えてもらいました。また5人の子どものパパである、つるの剛士さんが親目線で、宮城先生にHPVワクチンのギモンを伺いました。

子宮頸がんは、20歳代から増加する

子宮頸がんは、子宮の出口あたりにできるがんです。子宮頸がんは20歳代から増え始め、初期は無症状です。

国立がん研究センター調べによると、過去30年にわたる子宮頸がんの死亡者数は、全年齢ではやや増加、50歳未満では横ばいです。また30歳代までにがんの治療で子宮を失う人は、年間約1,000人にのぼります。

子宮頸がんの発症は、性交渉がきっかけ

子宮頸がんの原因の約95%は、性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス(以下HPV)です。

HPVは、皮膚や粘膜に感染するウイルスで100以上の型があり、その中のいくつかの型が子宮頸がんを引き起こしやすいことがわかっています。特に子宮頸がんの約60%~70%は、HPV16型または18型が原因と言われています。

ただしHPVは、珍しいウイルスではありません。またHPVに感染してもほとんどの人はウイルスが自然に消えますが、一部の人はウイルスがなくならずに子宮頸がんを発症することがあります。

子宮頸がんの予防には、HPVワクチンが有効

子宮頸がんを防ぐには、HPVワクチンが有効です。日本では、2022年4月から定期接種になり、小学6年生から高校1年生相当の女の子が対象です。

HPVワクチンは、2価ワクチン(サーバリックス®)、4価ワクチン(ガーダシル®)、 9価ワクチン(シルガード®9)の3種類あります。

接種スケジュールは、9価ワクチン(シルガード®9)は、15歳になるまでに1回目を接種する場合は合計2回。15歳になってから受ける場合は3回接種が必要です。接種スケジュールは、ワクチンの種類や年齢によって異なるので、医師に確認しましょう。

オーストラリアやイギリスでは、HPVワクチンを学校で集団接種

HPVワクチン接種と20歳になったら子宮頸がん検診を受けて予防

上の表は、イギリスとオーストラリア、日本の子宮頸がんによる死亡率の推移のグラフです。イギリスとオーストラリアは、子宮頸がん検診の確立によって死亡率が大幅に減少していることがわかります。一方日本は、横ばい状態がずっと続いています。

子宮頸がんを防ぐには、小学6年生から高校1年生相当の女の子はHPVワクチンの定期接種を受けて、20歳になったら子宮頸がん検診を定期的に受けることが大切です。

つるの剛士さんが宮城悦子先生に聞く! HPVワクチンの気になるギモン

5人のお子さんをもつタレントのつるの剛士さんが、宮城悦子先生に親の視点からHPVワクチンの気になることを伺いました。

子宮頸がんを他人事とは思わないでほしい

つるのさん:うちには22歳の長男、20歳の長女、18歳の次女、16歳の三女、9歳の次男がいますが、HPVワクチンについてわからないことも多くて…。宮城先生に、いろいろと教えてもらいたいと思います。

宮城先生:つるのさんは、子宮頸がんの原因や子宮頸がんが「マザーキラー」と呼ばれていることをご存じですか。

つるのさん:子宮頸がんの原因となるウイルスのことは聞いたことがあります。でも「マザーキラー」と呼ばれているなど、詳しいことは知りませんでした。

宮城先生:子宮頸がんは20歳代から増え始めるがんです。私も以前、担当した患者さんが子宮頸がんで、がんが見つかったときは手遅れでした。その方は21歳という若さで亡くなってしまったんです。その患者さんのことを思うと「将来、やりたいことがいろいろとあっただろうに…」「どんなにつらかっただろう…」と、今でも胸が張り裂けそうな気持ちになります。親御さんのことも忘れることができません。

子どもを残したまま、子宮頸がんで亡くなってしまう20歳代、30歳代、40歳代のママもいます。

だから子宮頸がんを、けして他人ごととして考えてほしくないんです。

HPVワクチンのことは、学校ではほとんど教えてもらえない

つるのさん:HPVワクチンのことは、中学校や高校で教えているのでしょうか。

宮城先生:しっかりと教えている学校はほとんどないと思います。そのためママ・パパが正しい情報を得て、親子で話し合うことが大切です。

つるのさん:子宮頸がんは、性交渉によって感染するHPVが主な原因とのことですが、子どもにはどのように子宮頸がんのことやHPVワクチンのことを伝えるとよいのでしょうか。

宮城先生:つるのさんのご家庭では、子どもと性の話をオープンにしていますか。

つるのさん:うちは娘が3人いますが、父親から娘には性の話はしにくいのが本音です。そのため妻に任せていて、妻には「何かあったら言ってね」と伝えています。僕は長男、次男と性の話をするようにしています。

うちのトイレには、ひとりになったときに手に取りやすいように性教育の本は置いています。

大切な人ができたとき「ママ・パパには言えない」という雰囲気にはしたくない

宮城先生:親子で性のことをオープンに話すのは難しいという家庭も多いと思います。HPVワクチンに関しては、性交渉の話には触れずに「もし子宮頸がんになって子宮を失ってしまうと、将来、赤ちゃんを産むことができなくなってしまう」「子宮頸がんを予防するには、HPVワクチンが有効だよ」ということを伝えるだけでもよいと思います。

つるのさん:子宮頸がんのことを伝えるだけでも十分ですよね。

あとわが家では、「大切な人ができたとき、家族には言えない」という雰囲気にはしたくないので、子どもたちの前で妻に自然とボディタッチをしたりすることもあります。

最初、娘たちは「パパ、キモイ!」とか言っていたのですが、僕が「いいじゃん! パパの大切な人なんだから」と言っているうちに、自然なこととして受け入れてくれたようです。これからも、子どもたちには「大切な人ができたときには、隠さないでオープンにしよう」「パパとママなら、きっとわかってくれる」と思ってもらえるようにしていきたいと思っています。

宮城先生:すごくいいことですね。

海外では、一般的に接種しているワクチンだが、日本は…

つるのさん:HPVワクチンは、失われた10年といわれる期間があったとのことですが…。

宮城先生:HPVワクチンは、日本では2009年に承認されて、2013年4月に定期接種になりましたが、同時期から有害事象の報道が相次ぎ、同年6月に積極的推奨が控えられて接種率はほぼゼロになりました。当時は、HPVワクチンに関してネガティブな情報ばかりで、SNSでは虚偽の情報も拡散されました。

私は「海外では、ごく一般的に接種しているワクチンなのに…。このままでは日本の子どもたちを、子宮頸がんから守れない」という思いで、この事態を変えたいと様々な努力を続けてきました。

ワクチンの副反応は、もちろんゼロではありませんが、それはインフルエンザワクチンなど、どのワクチンにも共通しています。HPVワクチンの主な副反応は、次の通りです。

痛みを感じる疼痛などが50%以上

皮膚が赤くなる紅斑、炎症によって腫れる腫脹などが10~50%未満

下痢、発熱、疲労、めまいなどが1~10%未満

HPVワクチン接種後の副反応で、重篤(※1)と診断された人は、接種1万人あたりサーバリックス®またはガーダシル®では約5人、シルガード®9では約2人(※2)です。

またHPVワクチンは、全国に拠点病院があり接種後に気になる症状が現れた際は、拠点病院で対応することになっています。

つるのさん:そうしたサポート体制が整っていると、親としては安心です。

※1 重篤な症状には、入院相当以上の症状などが含まれていますが、報告した医師や企業の判断によるため、 必ずしも重篤でないものも重篤として報告されることがあります。

※2 HPVワクチン接種後に生じた症状として報告があった数(副反応疑い報告制度における報告数)は、企業からの報告では販売開始から、医療機関からの報告では平成22(2010)年11月26日から、令和6(2024)年9月末時点までの報告の合計。

出荷数量より推計した接種者数(サーバリックス®およびガーダシル®は422万人、シルガード®9は177.2万人)を分母として1万人あたりの頻度を算出。

ワクチンに関する情報をアップデートをして、正しい知識を

つるのさん:先ほどのSNSでは虚偽の情報も拡散されたとのことでしたが、SNSの情報の見極めは大切ですよね。僕の感覚では、大人のほうが虚偽の情報に振り回されやすい気がしています。

宮城先生:HPVワクチンに関しては、大人のほうが先ほど話した「失われた10年」のときのまま、情報がアップデートされていない方が多いように思います。

私が知っているケースでは、子どもに「ママ、そのHPVワクチンの情報は間違っているよ!」と言われて、子どもから正しい情報を教えてもらったというお母さんもいました。

不安なときは、SNSで調べるよりもかかりつけ医に相談

つるのさん:HPVワクチンについて不安に思うときは、どうしたらよいのでしょうか。

宮城先生:SNSで調べるよりも、かかりつけの小児科や内科で聞くのがよいでしょう。また産婦人科でもHPVワクチンは接種できるので、この機会にかかりつけの産婦人科を見つけるのも一案です。特に生理不順や生理痛がひどいなど、気になる症状がある場合は10歳代からかかりつけの産婦人科を見つけておくと安心です。

一部の自治体では、男の子もHPVワクチンの助成対象

宮城先生:HPVワクチンは、女の子が受けるワクチンというイメージをもつママ・パパもいるでしょうが、一部の自治体では、小学6年生から高校1年生相当の男の子も全額公費で接種できたり、接種費用の一部が助成されたりしています。

男の子の場合は、HPVワクチンの接種によって中咽頭がん、肛門がん、性器にイボのようなぶつぶつができる尖圭コンジローマなどの予防が期待できます。特に中咽頭がんは、HPVが50%関係していると言われています。また尖圭コンジローマの90%以上は、HPV6型または11型が原因とされています。

オーストラリア、イギリス、アメリカ、フランスなどでは男の子もHPVワクチンは定期接種です。日本でも、男の子への接種がさらに推奨されていくと思います。

つるのさん:男の子も受けられるとは知りませんでした。親御さんも知らない方が多いんじゃないかなと思います。自分の住んでいる自治体ではどうなっているのか、調べるといいですね。

HPVワクチンをきっかけに、子ども自身が自分の健康に目を向けるように

つるのさん:HPVワクチンは、高校1年生相当までが無料接種可能とのことですが、高校2年生以上は接種しても予防効果がないのでしょうか。

宮城先生:予防効果がないとは一概には言えないのですが、HPVワクチンはあくまでもHPVの感染を防ぐワクチンです。すでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果はありません。HPVは、性交渉をきっかけに感染するので定期接種は高1年生相当としています。

高校2年生以上でHPVワクチンを自費で受けるとなると、接種費用はシルガード9(9価ワクチン)は3回接種で10万円ぐらいかかることもあります。

つるのさん:自費だと10万円もかかるんですか!

宮城先生:健康保険適用外ですので、自費だとかなり高いです。そうした費用面も含めて、親子でよく相談してほしいと思います。

私にも娘がいてHPVワクチンを受けています。HPVワクチンを受けるときは、親子でよく話し合い、娘の意見を聞きました。

娘が20歳を過ぎた後、自治体から子宮頸がん検診の案内が届いたときは、私は娘に「検診案内をよく読んで、自分が受けたいと思ったら行きなさい」と伝えました。娘は自分の意思で、子宮頸がん検診を受けに行きました。

HPVワクチンが受けられる年齢になったら、親が主導して決めるのではなく、子どもとよく話し合ってほしいと思います。そして、子ども自身が自分の健康に目を向けるきっかけを作ってほしいですね。

つるのさん:僕も妻や子どもたちと正しい情報を確認し、親子で納得いくまで相談していこうと思います。

「Why Now? HPV ワクチン」

子宮頸がんワクチンについてもっと知る>>厚生労働省ホームページ

お話を伺ったのは

右 宮城悦子先生

医学医博士。横浜市立大学副学長。同附属病院産婦人科部長。同医学部産婦人科学教室主任教授。横浜市立大学医学部卒。神奈川県立がんセンター婦人科医長などを経て現職。専門は、婦人科悪性腫瘍。産婦人科専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

左 つるの剛士さん 

タレント。二男・三女、5人のお子さんの父親。2010年、2016年と2度の育児休暇を取得し、ベストファーザー賞を受賞。2022年には短期大学を卒業し、幼稚園教諭二種免許、保育士資格を取得。2025年に大学の子ども心理学部を卒業し、認定心理士資格のための単位をすべて取得。非常勤の幼稚園教諭としても働いている。近著に『“心はかけても手はかけず つるの家伝統・見守り育児  つるのの恩返し』(講談社)Instagram @takeshi__tsuruno   X @takeshi_tsuruno

著・イラスト: つるの 剛士 講談社

本人のロングインタビューと母・3人の妹・愛妻・5人の子の徹底取材で、つるの家伝統の「手はかけずに気をかける」見守り育児と家族仲の良さの秘密が明らかに!
つるの剛士ってどんな父親?夫?息子?兄?つるの家総勢10名に赤裸々に語ってもらいました。家族からの通信簿、50歳を祝うメッセージなど、意外な真実とくすりと笑えるエピソードが満載です。

取材・文/麻生珠恵 構成/HugKum編集部 撮影/五十嵐美弥