娘のおりもの、どんな変化に気をつける? 「色・におい・かゆみ」と受診の目安を産婦人科医に聞いた

娘におりものが出始めたり、本人から「なんだかいつもと違う」と相談されたり。気になっても、どこまで様子を見てよいのか、婦人科に相談すべきなのか、迷うことはありませんか。身近なものなのに、親子でも話す機会が少ないおりものについて、Inaba Clinic院長で産婦人科医の稲葉可奈子先生に伺いました。おりものシートの使い方やデリケートゾーンの洗い方も含め、女の子の体の変化に向き合うためのヒントをお届けします。

正常なおりものはどんな状態? 初潮前から出ることも

――まず、おりものにはどんな役割があるのでしょうか。

稲葉先生:主な役割は、腟の中の環境をよい状態に保つことです。もうひとつは、排卵の時期に性質を変えて、精子を入りやすくすること。妊娠を意識しているかどうかにかかわらず、体の中ではそうした変化が起きているんです。

――小学生の娘におりものが出始めたら、初潮が近いということでしょうか。

稲葉先生:そうですね。「そろそろ初潮かな」と考える、ひとつの目安にはなります。初潮の前後は女性ホルモンが分泌され始める時期なので、おりものが出るのは自然なこと。ただ、量や感じ方には個人差があるため、特に意識しないまま初潮を迎える子もいます。

――正常なおりものかどうかは、何を見ればよいですか。

稲葉先生:一般的には透明から白っぽい色で、においもそれほど気にならない程度です。時期によって少し酸っぱいにおいがすることもありますが、それだけで異常というわけではありません。量も、もともと多めの人がいれば、ほとんど気にならない人もいます。

――量が多いほうが妊娠しやすい、あるいは細菌が入りにくいといったことはありますか。

稲葉先生:いえ、おりものの量とそれらは関係ないので、量が少ないからと心配したり、増やそうとしたりする必要はありません。

一方で、量が多くて困っている方は、生理痛などの治療に使う低用量ピルによって、おりものが減る場合もあります。気になるほど多いなら、婦人科に相談するのもよいでしょう。

――同じ人でも状態は変化するものなのでしょうか。

稲葉先生:はい。生理周期やそのときの体調によって変わります。おりものは人と比べられないものですから、大前提として気にしすぎなくて大丈夫。もし変化が気になったら、普段の自分のおりものと比べて、明らかに違うかどうかを見ていただきたいですね。

おりものの異常をチェックするポイントは?

――普段と明らかに違うおりものが出た場合、どんな原因が考えられますか。

稲葉先生:感染症によって、おりものが変わることがあります。その中でも、一般に比較的よく見られるのがカンジダ症です。強いかゆみが出て、おりものが白くモロモロした状態になるのが特徴で、「カッテージチーズ状」と表現されることもありますね。

――カンジダ症は、小学生や中学生でもなるのでしょうか。

稲葉先生:そうなんです。カンジダは常在菌の一種なので、性交渉の経験がなくても、カンジダ症になることはあります。普段は特に悪さをしませんが、疲れやストレスがたまったり、体調を崩したりしたときにカンジダ菌が増えると、強いかゆみやおりものの変化が出てきます。いわゆる性感染症とは少し違うんですね。

また、腟の中にいる菌のバランスが崩れて起こる「細菌性腟炎」でも、おりものが変わることがあります。こちらも性交渉の経験がなくても起こり得るもの。親御さんには、お子さんから「おりものが変な気がする」と相談されたら、すぐに性感染症を疑うのではなく、「性交渉の経験がなくても異常が起こることがある」ことをまずは知っておいていただきたいです。

――そのほか、おりものの変化や症状で、どんなことに気をつけたほうがよいですか。

稲葉先生:かゆみやにおい、色などが、普段と比べて明らかに違うときですね。例えば、はっきりとかゆい、においが強い、血が混じっている、黄緑色っぽいといった場合は、婦人科に相談していただきたいです。

ただ、「この色ならこの病気」と、おりものだけで原因を判断できるわけではありません。性交渉の経験がある場合には、トリコモナスやクラミジアなどの性感染症の可能性も考えられます。クラミジアは自覚症状がわかりにくい一方、放置するとお腹の中に炎症が広がり、将来の不妊につながることもあるんです。

――一方で、気になって受診しても、異常がないこともあるのでしょうか。

稲葉先生:はい、おりもののご相談は多いのですが、診てみると問題のないことも少なくありません。気になり始めると、「いつもと違う気がする」と不安になりますよね。ご自身で判断するのは難しいので、気になるときは婦人科で確認していただいて大丈夫ですよ。

様子を見てもいい? 婦人科を受診する目安と検査

――おりものがいつもと違っても、しばらく様子を見てよい場合はありますか。

稲葉先生:おりものの変化だけで、すぐに受診しなければいけないケースは多くありません。腟の中の菌のバランスが戻って、自然によくなることもあります。気になっていた症状が完全になくなったなら、急いで受診しなくても大丈夫ですよ。

――例えば、かゆみが出たときは、いったんデリケートゾーン用の市販の塗り薬などで様子を見てもよいのでしょうか。

稲葉先生:かぶれによるかゆみなら、市販の塗り薬でよくなることもあります。ただ、カンジダが原因の場合は、かぶれ用の薬ではよくなりにくいので、「薬を塗ったけれど、やっぱりよくならなくて……」と受診される方も多いです。

カンジダ用の市販薬もありますが、初めての症状では、原因がカンジダかどうかわかりませんよね。その場合は、婦人科で診てもらうことをおすすめします。

――小中学生がおりもののことで受診した場合、どのような検査をするのでしょうか。内診台に上がる必要はありますか。

稲葉先生:原因を調べるためには、おりものを採って調べる必要があるので、私のクリニックでは、まず本人に「検査してもいいかな」と確認します。了承してもらえたら、ベッドの上で下着を少しずらしてもらい、綿棒でさっとおりものを採る。内診台を使わずに、そうした対応をすることもあります。

――本人が検査を嫌がった場合は、どうなりますか。

稲葉先生:無理に進めることはありません。ただ、検査ができないと原因をはっきりさせるのは難しくなるので、その場合は、「はっきりと診断をつけることはできず、症状を聞いて推測でお薬を出すことになるけれど、それでもいい?」と、本人と相談しながら進めます。

診察の方法は医療機関や症状によって異なります。お子さんが診察を不安に感じているなら、思春期の子の気持ちに配慮してくれる婦人科を探していただけるとよいと思います。

――娘のおりものが気になっても、親からは声をかけにくいかもしれません。どのように聞けばよいでしょうか。

稲葉先生:普段と明らかに違うように感じたら、「いつもと違わない? 大丈夫?」と、軽く聞いてみてはどうでしょうか。お子さんからは言い出しにくいこともあるので、こちらからひと言声をかけると、話すきっかけになると思います。

おりものが出始めたときに、「体の自然な変化だよ。でも、いつもと違ったり、嫌な感じがしたりしたら教えてね」と伝えておくのもいいですね。

おりものシートは使ったほうがいい? 毎日の使用や交換の目安

――おりものが気になる場合、シートを使ってもよいのでしょうか。小中学生が使うイメージはあまりなかったのですが……。

稲葉先生:これは本人のお好みで大丈夫です。おりものが下着につくのが嫌で、小中学生でもいつも使っているというお子さんもいらっしゃいます。

――使うメリットやデメリットはありますか。

稲葉先生:メリットは、下着が汚れないことですね。シートが肌に合わない、つけるとかぶれるといったことがなければ、特にデメリットはありません。ただ、だからといって「つけたほうがいい」と推奨するものでもないんです。つけてもつけなくても、どちらでも構いません。

――本人が希望するなら、毎日使ってもよいのでしょうか。交換の頻度も教えてください。

稲葉先生:はい、毎日使っても構いません。ただ、長時間つけっぱなしにはしないほうがよいですね。かといって、トイレのたびに必ず替えなさいというわけでもないので、清潔が保てる範囲で適度に交換してください。

――小中学生が使う場合、シートのタイプなど、気をつけたいことはありますか。

稲葉先生:特にありません。下着に貼るだけですし、タイプもどれでも大丈夫。オーガニックのものがよい、ということもないですよ。

本人が「下着が汚れるのが嫌」と言ったら、親御さんから「こういうのもあるよ」と教えてあげる。そのくらいでよいと思います。

洗いすぎに注意! デリケートゾーンの正しいケア

――おりものシートの使い方に加えて、日頃のケアについても伺います。デリケートゾーンを清潔に保つには、どのように洗えばよいのでしょうか。専用のソープは必要ですか。

稲葉先生:あえて専用のソープを使わなくても、普通のボディソープで、体を洗うのと同じように外側をさらっと洗えば大丈夫です。ただ、腟の中までは洗わないでくださいね。

――においが気になると、腟の中まで念入りに洗いたくなりそうですが……。

稲葉先生:そうですよね。でも、腟の中にもともといる菌のバランスは、とても大切なんです。洗いすぎてそのバランスが崩れると、かえってにおいが出やすくなることもあります。においをなくそうとして、洗いすぎないようにしてください。

――トイレのビデを使うのはどうでしょうか。

稲葉先生:ビデは外側から菌を押し込んでしまうことがあるので、日常的に使うことはおすすめしません。生理中など、どうしても気になるときに洗い流す程度に使うのはよいですが、毎回使ったほうが清潔になる、というわけではないんですよ。

――それでも本人が「においが気になる」と言ったら、どうすればよいですか。

稲葉先生:これも「気にしすぎなくていいよ」という話につながるのですが、おりもののにおいは、自分では気になっても、周りの人にまでにおうことはほとんどありません。生理の血のにおいも、自分ではわかるけれど、普通は周りには気づかれませんよね。それと同じです。

トイレで直接においを感じると、「すごくにおっているのかな」と思ってしまいますが、汗や脇のにおいとは少し話が違います。

ただ、「気にしすぎているだけなのか」「本当にいつもと違うのか」は、自分では判断しにくいこともあります。「異常によるにおいなのか、問題ないのか知りたい」というときは、婦人科で相談してみてください。

――下着の素材や締め付けなど、気をつけたいことはありますか。

稲葉先生:おりものに関していえば、肌荒れしなければ、素材は自分に合うもので大丈夫です。素材を変えることで、おりものが改善するわけではありません。

もちろん、下着のラインに沿ってかぶれるような場合には、締め付けの少ないものをおすすめすることもあります。でも、そうした症状がなければ、好きなものを選んでいただいてよいですよ。

――気にしすぎなくてよいとわかっても、わが子のこととなると心配になります。親として、どんなことを心に留めておくとよいでしょうか。

稲葉先生:小中学生におりものがあるのは自然なことです。繰り返しにはなりますが、必要以上に心配しなくて大丈夫です。

この年代は、気になることがあっても、親御さんに言い出せないこともあると思います。気軽に相談できる婦人科の先生を見つけておくとよいですね。

生理のことでも、おりもののことでも、「困ったら、この先生に相談していいんだよ」と伝えておく。そうすれば、親には言いづらいときにも、一人で抱え込まずに済むと思います。

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お話を伺ったのは

稲葉可奈子 産婦人科専門医・医学博士・Inaba Clinic 院長

京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子を含む四児の母。千葉大学客員准教授、渋谷区教育委員会委員。
産婦人科診療の傍ら、子宮頸がん予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を、メディア、企業研修、書籍、SNSなどを通して発信している。婦人科受診のハードルを下げて小中学生からかかりつけにできる婦人科を作るため2024年7月渋谷にInaba Clinic開院。著書に『シン・働き方 女性活躍の処方箋』などがある。

この記事を書いたのは

篠原亜由美 ライター

法学部卒業後、通信教育などを手がける教育業界の企業に勤務し、その後ライターとして、女性誌や複数のWeb媒体で、暮らしや子育てを中心としたライフスタイル分野で取材・執筆を行っている。2児の母で、子どもはすでに成人しており、中学受験や大学受験を経験。実体験をもとに、同世代の女性に寄り添えるような記事を心がけている。

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