たった3つの運動で受験勉強の効率アップ! 目が疲れた、ストレスが溜まる、姿勢が悪くなる…子どもたちが身体をほぐし、リラックスできる動きとは【理学療法士監修】  

受験を控えたご家庭では、お子さんが椅子に座っている時間も長くなっているのではないでしょうか? 正しい姿勢で座っていても、血行不良や集中力の低下は起きやすいものです。今回は、子どもも感じる肩こりや目の疲れを軽減してくれる、おすすめの3つの運動を、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの伊藤彰浩さんに教えてもらいました。上手に取り入れて、勉強の効率アップをめざしましょう!

姿勢が悪いと学習効率が下がる! でも「背筋を伸ばし」すぎるのも問題

――なぜ勉強を長時間すると疲れるのでしょうか?

伊藤さん 同じ姿勢を長時間続けるからです。椅子にすわったままの姿勢を続けていること自体が疲れやこりにつながります。よく、「背筋をピンと伸ばしていないからよくない」といいますけれど、ずっと背筋を伸ばし続けていたら肩や背中、さまざまなところが緊張して疲れてきます。基本的には、いろんな姿勢をするほうが疲れません

でも、それとは別に、姿勢を維持するための体力がないと、すぐに姿勢が崩れてきます。そして、体力がないと、どんな姿勢をしていても疲れてしまう。身体もかたまってくるし、集中力もなくなり、学習効率の低下にもつながります。姿勢を維持するための体力は、生きるためにも勉強をするためにも必要なんですよね。

受験期こそ、短時間でも戸外で身体を動かした方がいい理由

――中学受験の勉強中でも、運動はしたほうがいいのでしょうか?

伊藤さん 受験期でも、いや、受験期だからこそ、時間を見つけて身体を動かし、運動をしてほしいです。

室内でもいいのですが、できれば屋外で運動をしてほしいですね。室内と屋外では身体に入ってくる情報量が違います。気温、湿度、季節の植物の匂いなどが脳への刺激になってよいリフレッシュになります。家に帰って勉強する前に、校庭で少し遊んでから帰ってくるとか、休みの日に少し家族で公園で遊ぶなど、外遊びの時間を少しでも持ってもらえるといいですね。

肩凝りや目の疲れを解消し、リラックスできる受験生向け運動3選

――中学受験をするお子さんは学年が上がるごとに勉強時間が増え、まとまった時間を運動にあてることがなかなか難しくなります。短時間でこりをほぐしたり、リラックスして勉強意欲を高めたりする運動ってありますか?

伊藤さん あります。3つの動きを紹介します。大人も肩こり解消やストレス発散のために同様の運動をすると効果的です。お子さんと一緒にやってみましょう。

1.肩こり解消のストレッチ

受験をするお子さんは机の前で同じ姿勢をすることが多いので、お子さんでも肩こりする子が多くなっています。また、受験をしない子でも、ポータブルゲーム機で長時間ゲームをすると猫背で画面に集中するため、肩こりします。

肩こりは肩甲骨の可動域を広げることで軽減することが多いです。勉強の合間に次のふたつのエクササイズを10回ずつやると効果的です。

肩甲骨を寄せてから腕を伸ばす運動

腕を曲げてうつぶせに寝る
胸まで身体を起こして、肩甲骨を背骨側に寄せる
その姿勢のまま両腕を前にグッと突き出す
もとの姿勢に戻って、一度力を抜いて休憩し、また繰り返す

②四つ這いから胸を広げる運動

四つ這いになって左手を頭のうしろに当てる。右手は右肩の真下に。背中は床と並行に
腕を大きく上げて胸を開く。目線は左肘に向ける。右側も同様にして繰り返す

2.視覚機能を高めるビジョントレーニング

伊藤さん 視覚機能が弱いと、体を自分のイメージ通りに動かすことができません。また、勉強や作業に集中できないことも増えてきます。

そこでおすすめしたいのが、ビジョントレーニング。眼球をよく動かすような運動をすると視覚機能を高め、目の疲れも解消しやすくなり、読み書きの力や手先の器用さ、運動する力、集中力、記憶力などが身に付いていくと言われます。

手近なものでビジョントレーニングをすることができます。お手玉か野球ボール程度のやわらかいボールを2つ用意してやってみましょう。勉強の合間の気分転換にもなります。

両手のひらを上に向けてお手玉かボールを持つ
お手玉かボールを真上に放り投げてキャッチする。できるだけ同じ高さに上げるように
うまくできるようになったら手をクロスしてボールを上に上げてキャッチする
歩き回りながらお手玉を上に上げてキャッチする

3.戸外でスキップしてリラックス

伊藤さん 勉強の合間に5分でも10分でも外に出て身体を動かすと、ストレス解消になります。そんなときにおすすめなのが、スキップです。スキップは全身運動。ラクなようでいて大きくスキップするとよい運動になります。

また、スキップのように一定のリズムで身体を動かしたり、リズムよくジャンプしたりすることで、心を安定させる働きのある脳内物質「セロトニン」が出ると言われます。スキップをすると楽しく穏やかな気分になるのはセロトニンのおかげとも言われています。

でも、外に出ていきなりスキップをするのは、お子さんでも少しはずかしいかもしれません。そこで、スポーツ選手のトレーニングにも見えるようなカッコいいスキップで全身を動かしましょう。

クロスタッチスキップ

スキップを始める。左足を出したら右手で左のつま先に触れる
右足を前に出したときに左手で右のつま先に触れる。スキップをしながら繰り返す

前後ハンドタッチスキップ

左足を前に出して右手で左足をタッチ
右足を前に出して左手で右足をタッチ
左足を後ろに蹴って右手で左足をタッチ

右足を後ろに蹴って左手で右足をタッチ

伊藤さん どの運動も、最初からうまくできなくてかまいません。特にビジョントレーニングはできなくて当たり前。なかなかボールが取れないことを大人も子どもも一緒に笑いながら楽しめるといいですね。

外遊びは集中力や思いやりの心も養う

伊藤さん 私が主宰する「スポトレ」は、放課後などを利用して、子どもたちが楽しく身体を動かしています。たとえばスポトレ横浜(横浜市連携事業)では小学校の放課後キッズクラブの中で、全学年対象に、運動の好きな子も苦手な子もみんな同じ動きをします。それが運動能力を高めるだけでなく、感謝や思いやりの心、傾聴力、チャレンジ精神も養ってくれます。キッズクラブの担当の馬場さんも実感していると言います。

放課後キッズクラブ内の「スポトレ」では、異学年の子どもたちが一緒に身体を動かします。ドッジボールなどでは、上手な子ばかりがボールを回してしまいがちですが、異年齢だと、高学年の子が気づいて低学年の子にボールを回してあげることも。鬼ごっこなどで小さい子の鬼がなかなかタッチができないと、大きい子がさりげなく近づいてタッチさせてあげる光景も見られます。身体を動かして心が解放されているので、思いやりの心も素直に出てくる気がしますね。土地柄、中学受験をする子が多く、6年生になるとあまり参加しなくなるのですが、それまでに培った運動を続ける力や集中力が、勉強にも役立っていると感じています。

(美しが丘東小学校放課後キッズクラブ主任 馬場香織さん)

勉強時間が長くなる受験生は、いつも通り元気に見えても、実はストレスをためていたり、疲労が蓄積している可能性も。伊藤さんおすすめの「3つの運動」を上手に取り入れて、心身ともに健康に、勉強の効率アップをめざしたいですね。

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お話を聞いたのは

伊藤 彰浩さん 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー/理学療法士

株式会社MEDI-TRAIN代表取締役。 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー/理学療法士、ドイツ式ライフキネティック公認トレーナー、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー。企業の健康経営サポートや医療機関・介護福祉施設のリハビリコンサルティング、産前産後ケア、アスリートサポートを行う。子どもたちの身体能力を伸ばし、スポーツが苦手な子でも好きにする子どもたちの主体的な「スポトレ」を全国で運営。

撮影協力/小松應太郎くん(小4)、美しが丘東小学校放課後キッズクラブ 取材・文/三輪 泉

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