【初めての塾選び】中学受験のプロ・西村 創先生に聞くSAPIX、早稲アカ、四谷大塚、日能研4大塾の特徴とは?塾選びのポイントや陥りがちな失敗も

数々の塾の講師、教室長、エリアマネージャーを務め、現在は受験指導専門家として多くのメディアで活躍する西村 創先生。「SAPIX」「早稲田アカデミー」「四谷大塚」「日能研」からなる4大塾の特徴をひも解きながら、塾選びのポイントや陥りがちな失敗など、詳しくお話をうかがいました。

【塾選び】まずは各塾の特徴を知ることからスタート!

中学受験を検討する際、大切なのが塾選びです。我が子の中学受験を考えたらまず、何から始めたらいいのかを西村先生に聞いてみました。
「一般的に、中学受験をする場合、中学受験専門の進学塾に頼ることになります。そこで、まずは各塾の特徴を知っておきましょう。中学受験の塾といえば首都圏では「SAPIX」「早稲田アカデミー」「四谷大塚」「日能研」が4大塾です。ここでは、それぞれの塾の特徴をお話していきます」

圧倒的な御三家合格実績を誇る「SAPIX」

写真はイメージです

「SAPIX(サピックス)」は、TAP進学教室という塾のトップクラスの講師陣が独立して作った塾で、トップ校、御三家の圧倒的な合格実績を誇っています。現在「中学受験の塾は新小4から」がスタンダードになっていますが、それはSAPIXが小4スタートのカリキュラムを作ったことがきっかけです。

塾の雰囲気や進行スピード

SAPIXの強みはトップ校、御三家入試に対応したカリキュラム、教材、テストの質の高さです。αクラスという成績上位クラスに在籍する子達を中心とした学習意欲も学力も高い生徒が集まっているところも特長です。反面、授業についていけない場合でも、講師からの積極的なフォローはなく、塾の授業内容を定着させるために個別指導塾に通ったり、家庭教師を併用するご家庭が多く見られます。

クラス分けテストや宿題の量

SAPIXのクラス分けは、1年生から5年生は年3回、6年生は2回行われます。トップ校、御三家を受験する子は、成績上位のαクラスに在籍していることがほとんどです。授業では、毎回「デイリーサピックス」と「デイリーサポート」という小冊子が配られるので、事前に予習することはできません。宿題はないものの、家庭学習用として渡される課題、事実上の宿題の量は多く、内容も非常にハイレベルです。自習室はなく、講師に質問する時間は授業後のタイミングになります。

「SAPIX」が向いている子

トップ校、御三家を目指す子、学習習慣が身についていて勉強を楽しめる子、サピックスでαクラスをキープできる子に向いています。また、大量の冊子教材を整理するサポートが必須なので、保護者も選ぶ塾です。SAPIXの授業だけで完結できない子も多いので、別途家庭教師に頼る経済力も必要です。
目指している学校が中堅校の場合はオーバースペックになりますが、トップ校、御三家をめざすのあれば、第一候補の塾となるはずです。

塾界の老舗的な立ち位置「四谷大塚」

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1954年に設立された四谷大塚。大手老舗塾なので、首都圏で中学受験を経験した保護者には後述の日能研と並んで馴染みのある塾です。年長生から対象の日本最大の無料公開学力測定テスト「全国統一小学生テスト」を実施していることから、低学年の子どもを持つ親からも知られています。

中学受験生の半数以上が使っていると言われ「受験生のバイブル」として知られるネットでも購入可能な『予習シリーズ』というテキストは、完成度が高く、多くの四谷大塚準拠塾が教材として採用しています。

塾の雰囲気や進行スピード

カリキュラムの進行スピードはSAPIXに比べればややゆっくりではあるものの、近年『予習シリーズ』の難易度が上がり、算数を中心に学習内容が増加しています。『予習シリーズ』の名前のとおり、四谷大塚では予習を推奨していて、きちんと予習をすることで、授業の理解度が深まるとされています。

クラス分けテストや宿題の量

四谷大塚の入塾テストは、じつは四大塾、最もハードルが高く、受験者の半数が不合格となります。入塾後は5週間に一度、公開組分けテストを実施。宿題の量は大手塾の中では平均的ですが、予習をしなくてはならないので、自宅学習の時間は長くなります。

「四谷大塚」が向いている子

カラフルでポイントがわかりやすい『予習シリーズ』で勉強したい子、校舎数が多いので、家から近い塾に通わせたいというご家庭に向いています。

本気でやる子を育てる熱い塾「早稲田アカデミー」

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1975年、早稲田大学大学院を修了した初代社長が作った「早稲田大学院生塾」から始まった塾。開成高校の合格者が15年連続No.1であることもあり、高校受験の塾としても知られています。

早稲田アカデミーは四谷大塚のカリキュラムを採用しているので、テキストも四谷大塚と同じ『予習シリーズ』です。講習会や入試前の壮行会などでは「合格」と書かれたはちまきをしめて、「絶対合格するぞー!おー!」と気合いを入れる、首都圏の大手塾では珍しい、体育会系の雰囲気がある塾です。

塾の雰囲気や進行スピード

勉強ができる子もそうでない子も徹底反復して定着させていく授業スタイルです。講師が大きな声で生徒を叱咤激励することもある熱い指導が早稲田アカデミーの特徴です。

クラス分けテストや宿題の量

四谷大塚と同じく5週間に一度の公開組分けテストがあります。宿題量は大手塾中、最も多く、自宅でできない子は自習室で宿題をやることも多いです。大手塾の中では、講師のサポートは手厚い方です。

「早稲田アカデミー」が向いている子

勉強についていけない生徒、宿題をやってこなかった生徒を講師が叱咤激励してサポートしていくため、応援されると頑張れる体育会系の子に向いています。お尻を叩かれないと頑張れないが、叩かれれば頑張れるというお子さんは、早稲田アカデミーを検討してみるのがいいでしょう。

全国最大規模の塾「日能研」

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1973年に設立され、全国に進出している日能研と言えば、塾生のNマークのバッグや電車内広告の「シカクいアタマをマルくする」でお馴染みです。
日能研は6つの会社からなり、関東系日能研は上昇志向が強い進学塾、本部系日能研は、思考力や発想力を育むアットホームな雰囲気の塾です。

塾の雰囲気や進行スピード

日能研は予習を推奨しておらず、授業の進行スピードは他の大手塾に比べるゆっくりです。大学生アルバイト講師による授業はなく、授業を担当する講師は全員、社会人講師というのも日能研の特徴です。各教室には監視カメラがついており、教室の様子がモニタリングされているもの昔からの日能研の特徴です。

クラス分けテストや宿題の量

日能研のクラス分けは4・5年生は隔月、6年生は毎月行われます。 クラス分けの基準は隔週の「学力育成テスト」と公開模試の成績などで決められます。

関東系日能研ではテストの結果によって席順が入れ替わるシステムで塾生の競争心をあおります。テキストは白黒で、『予習シリーズ』やSAPIXの理科・社会のフルカラーの冊子教材に比べると、とっておきやすいとは言えず、子どもが自分自身でやるには不向きです。しかしながら、日能研のテキストは記述問題が多く、近年の入試問題の傾向である思考力を試す問題にも対応したよく練られたものだといえます。

「日能研」が向いている子

関東系日能研は上昇志向の強い子向けで、特に高い学力の子にはトップ校、御三家を目指すための最上位クラスが設置されている教室の「TMクラス」への受講資格が得られます。一方、本部系日能研はマイペースで無理なく勉強に取り組みたい子向けです。テキストは子どもひとりで取り組むには無理があるので、保護者のサポートは必要です。

塾を選ぶ時チェック! 5つのポイントを紹介

大手塾にもそれぞれ大きな違いがあることがおわかりいただけたでしょうか?
最後に、塾を選ぶ際に注意したほうがいいことなどをまとめて、西村先生に「5つのポイント」として教えていただきました。

ポイント① 「良い塾」を探すよりも、我が子の特性に注目

講師の指導力が高く、月謝が安く、保護者のサポートも最小限など、全方向にいい塾を探したくなってしまうと思いますが、そのような塾は存在しません。まずは我が子の特性に注目しましょう。知的好奇心は強いか、スケジュール通りに勉強ができるか、競争することが好きか、マイペースな性格かなど、お子さんによって、各塾の向き不向きがあります。どんな塾が優れているかを見極めようとするよりも、我が子の特性を見つめ直して、我が子に合いそうな塾はどこかという視点で塾を検討しましょう。

ポイント② ママ友の口コミに惑わされない

「うちの上の子はこの塾で偏差値が10上がった」「あの塾の先生に教えてもらったら間違いない」などという良い口コミや、「あの塾は教え方が下手」「志望校のレベルを下げさせられた」などという悪い口コミ。どちらの口コミも知人から聞くと、つい耳を傾けてしまいますよね。しかし、それらは「その子のケース」であり、我が子にとっても同じだとは限りません。知人に勧められた塾はあくまでも選択肢のひとつとして考え、参考にし過ぎないようにしましょう。

ポイント③ 塾ブランドや先生で選ばない

4大塾だと安心する、「SAPIXに行ってるの?すご~い!」と褒められるなど、大手塾のブランド力は絶大です。しかし、塾ごとに運営方針は異なり、その運営方針に我が子が合うかどうかはわかりません。また、塾講師は入れ替わりが激しいことや、組分けテストでクラスが変わる機会も多いです。「この先生に卒業までお願いしたい!」と思っても、その希望は叶いません。

ポイント④ 中小規模の塾にも注目!

大手塾は口コミが集まりやすく、友達が通っているなど、いい部分が見えやすいです。しかし、中小規模の塾は、大手塾の講師以上の指導力を持つ講師がいたり、塾生一人ひとりをきめ細かく面倒を見てくれたりするなどのメリットがあります。大手塾だけではなく、中小規模の塾も検討してみるのもひとつです。

ポイント⑤ 高校受験のメリットにも目を向ける

中学受験の受験率が上がっていることから、中学受験が注目されがちですが、高校受験ならではのメリットもあります。

  • ある程度将来の方向性が見えてきてから、志望校選びができる
    幼い頃から勉強が得意だった中学受験組が抜けた高校受験のため、努力が成績に反映されやすい
    私立高校の受験は3教科のところが多く、勉強内容を絞れる

などが挙げられます。高校受験を見据えた塾選びをするというのも選択肢のひとつです。中学受験だけが人生の勝ち組ルートではありません。子どもの将来は、その先も続いていきます。長い目で見てあげるようにしましょう。

一番大切なのは子どもの心身の健康

西村先生に4大塾の特徴や塾選びのコツなどを教えていただきました。子どもに合った塾を見つけ、成績が上がって欲しいと願う反面、我が子が塾についていけるのかと心配される方も多いと思います。
「塾の授業についていけない、宿題が終わり切らないなど、受験勉強のストレスが溜まってくると、心身に症状が出ることがあります。最優先すべきなのは、子どもの心身の健康です。塾が合ってないと感じたら、お子さんと対話の機会を作り、転塾や休塾も視野に入れつつ、お子さんの様子を見ながら対応していきましょう」
西村先生がおっしゃるように、塾が原因で心身に不調が出る子も多数います。また、我が子をサポートする保護者にとっても中学受験は大きな負担です。親子ともに無理しすぎないよう、最適な塾を見つけることができるといいですね。

記事監修

受験指導専門家|西村 創
早稲田アカデミー、駿台、河合塾Wingsなどで指導歴25年以上。合計6社の塾。 新卒入社の早稲田アカデミーでは、入社初年度に生徒授業満足度全講師中1位に輝く。 駿台ではシンガポール校講師を経て、当時初の20代校長として香港校校長を務め、過去最高の合格実績を出す。 河合塾Wingsでは講師、教室長、エリアマネージャーを務める。 現在はセミナー講演や書籍執筆、「にしむら先生 受験指導専門家」としてYouTube配信などを中心に活動。 著書は『中学歴史が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)など多数。

取材/本間綾

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