離婚を控えた夫婦が同時に記憶喪失に!？とんでも設定なラブコメが痛快な『ラブリセット 30日後、離婚します』

カン・ハヌル、チョン・ソミンが織りなすドタバタ結婚＆離婚劇

2023年に韓国で観客動員数200万人を超え、ラブコメ映画の興行収入No.1を記録した映画『ラブリセット　30日後、離婚します』が3月29日（金)より公開されました。“結婚して初めてわかったあるある”を散りばめた本作は、Hugkum世代のパパママなら爆笑しつつも、夫婦にとって大切なものは何だろうと、自分自身に問いかけてしまう深い映画になっております。

主演は人気ドラマ「椿の花咲く頃」や「イカゲーム２」の出演決定などで注目集めるカン・ハヌルと、映画『オオカミ狩り』（22）やドラマ「還魂」などに出演し、日本でも多くのファンを持つ実力派俳優のチョン・ソミン。2人は、映画『二十歳』（15）以来、8年ぶりの共演となりましたが、劇中では息の合った掛け合いを見せています。

“大恋愛”“記憶喪失”“様々な障害”と、まさに韓国ドラマの王道というべきベタな要素をこれでもかと盛り込んだ本作。メガホンをとったのは『偉大な願い』（16）や『色男ホ・セク』（20）などを手掛けたナム・デジュン監督ですが、そこを敢えてツッコんでいるところに座布団1枚。でも、同時に2人が記憶喪失！という設定は、かなり新しいと思いました。

幸せなのは最初だけ。結婚生活はスリラーに路線変更！

弁護士を目指すも今は無職のジョンヨル（カン・ハヌル）と、名家出身のお嬢様で仕事が大好きなナラ（チョン・ソミン）は、まるで映画のような大恋愛をし、親の反対を押し切ってようやく結婚します。とても幸せな結婚式を挙げますが、いざ結婚生活が始まると、「こんなはずじゃなかった！」と嘆く毎日を過ごすことに。

相手の“残念ポイント”ばかりが目についたり、生まれ育った環境が違いすぎて価値観の違いも露呈します。それに輪をかけて嫁姑問題まで勃発し、夫婦は離婚を決意。ところが裁判所の調停で、離婚のために30日の熟慮期間を持つことを言い渡されてしまいます。そんな2人が、なんとその帰り道で交通事故に遭い、共に意識不明状態に！

奇跡的に目を覚ましたジョンヨルとナラですが、2人はこれまでの記憶をすっかり失っていました。彼らを離婚させたいと願う両家の両親は、2人に離婚を決心した当時の記憶を取り戻させるため、かつて夫婦が一緒に住んでいた家で再び共同生活をさせることに。とはいえ、間違っても2人が元のさやに納まることのないようにと、ナラの妹を同居させます。果たして2人の仲は、どうなっていくのでしょうか？

主演2人のたたみかけるようなテンポ感の掛け合いが最高な本作は、序盤からつかみOKです。「幸せなのは最初だけ。結婚生活はスリラーに路線変更した」というジョンヨル。ナラが「一度きらいになると食べる姿も見たくない」と言うと、ジョンヨルが「鼻をふさいで息を止めたくなる」と返すなど、倦怠期バリバリの夫婦ならではの身も蓋もない舌戦が繰り広げられます（苦笑）。

また、ワーキングウーマンであるナラが惣菜を買ってきたり、洗剤を数回プッシュして水を出しっぱなしで食器を洗ったりしていると姑から「あなたは金持ちの娘だから」と毎回言われたり、潔癖症のジョンヨルがナラに「酔っ払うと体も洗わずに求めます」と文句を言ったりと、結婚にまつわる不協和音がオンパレード状態に。

ところが記憶喪失となり、一旦、そういうものがすべてリセットされてしまったので、ちょっと話が変わってきます。改めて2人は、なぜお互いに惹かれ合ったのか、そしてなぜ他の人ではなく、この人と結婚したいと思ったのかを、考えていくことに。

演じるカン・ハヌル、チョン・ソミンが実にチャーミングだからこそ、下世話な夫婦ネタも遠慮なく笑い飛ばせるところがミソ。また、彼らを取り巻く家族や友人たちとの関係性もたっぷりと盛り込まれ、まったく中だるみすることなく、最後の最後までドタバタ劇を堪能できそう。

監督が「寝床に入ってからも、もう一度、思い出し笑いをする映画になる」とアピール

本作を観終わって改めて感じたことは、結婚、すなわち人生でのパートナー選びは、そんなに理屈で割り切れるようなものではないのかなということでした。そこはきっとHugkum世代のパパママは、大いに共感できるポイントではないでしょうか。

ちなみに劇中で、ある登場人物が、ジョンヨルとナラ夫妻について「お互いに憎いはずなのに、離ればなれになると会いたくなるんです。男女それぞれの頭の中はどうなっているんですか？」と専門医に問うシーンがあります。その答えが絶妙なので、ぜひそこは本編を観て確かめていただきたいです。

ナム・デジュン監督は本作について「一日中、楽しませてくれるコメディ映画。寝床に入ってからも、もう一度、思い出し笑いをする映画になる」とアピールしていますが、私自身も「なるほど！」と納得できました（笑）。この作品はぜひ、夫婦で映画館へ行って観ていただくと、大いに盛り上がれそうです！

©CINEMA WOOLLIM, TH STORY AND MINDMARK

文/山崎伸子