就学前後でチェック! DCDの代表的な症状
昨今、よく耳にするようになった発達障害(神経発達症)には、自閉スペクトラム症(※以下ASD)や注意欠如・多動症(※以下ADHD)などが含まれますが、DCDはこれらと並ぶ発達障害の特性のひとつです。
DCDの主な症状としては、運動や動作のぎこちなさ、手先の不器用さがあげられます。また、ASDやADHDなどと合併して症状がみられることも多いようです。
<DCDの症状の例>
■未就学児
よく転んだりぶつかったりする
走り方がぎこちない
食べこぼしが多い
ジャンプやスキップが苦手
服のボタンが留められない など
■就学児
イスに座って姿勢を保つのが苦手
ボールを投げたり受けたりがぎこちない
鉄棒や跳び箱が苦手
ひもが結べない
立ったまま着替えができない
書字が苦手
はさみや消しゴムがうまく使えない など
「脳機能の問題」が原因!二次的な問題を避けるには?
DCDは運動や動作のぎこちなさがみられるため、筋肉などに問題があると思われがちですが、実はそうではないことがさまざまな研究から分かってきています。「体の部位を同時に動かして力をコントロールするための情報処理が、脳内で上手くいっていない」ことが原因だと考えられているのです。
視覚や感覚などから入ってきた情報をまとめ、体を動かすための指令を出すまでの一連の流れが脳内で上手く処理できないために、手足の力を正確にコントロールしたり、体のさまざまな部位を協調して動かしたりすることに苦手さを感じるようなのです。
脳機能の問題に起因しているので、本人や親御さんの努力不足が原因ではありません。ただし、だからと言って困りごとを放置しておくと、たとえば小学生以上のお子さんのなかには、書字の不得意さから授業についていけなくなったり、体育が苦痛で学校に行くこと自体がつらくなってしまったりする子もいるでしょう。
DCDの症状はお子さんの日常生活に直結していることも多く、それが理由で自信や気力を失ったり、集団行動がとれずに孤立してしまったりといった二次的な問題が起こる前に、適切なサポートを受けることが重要だと考えています。
DCDのリハビリが受けられる施設と専門家
他の発達障害と同様に、DCDには今のところ根本的な治療法はありません。しかし、運動能力や日常生活のスキルを向上させるための練習や、日常生活が送りやすいように道具や環境を調整することで、症状を改善することが可能です。
必要に応じて、専門家による理学療法、作業療法、言語療法といったリハビリを行うことができますが、リハビリは医師の指示のもとで行うため、まずは地域の療育センターや小児科、児童精神科などへの受診が必要です。また、「児童発達支援事業所」や「放課後等デイサービス」(※1)にもこれらの専門家が在籍している場合がありますので、一度相談してみることをおすすめします。
■理学療法士
粗大運動(大きな運動)の専門家。姿勢を安定させるための運動や体全体を使った運動などから、運動の苦手意識を軽減し、体を使って動くことが楽しいと思えるような支援を行う。また、日常生活の動きの改善を目的とした支援も行う。
■作業療法士
微細運動(細かな運動)の専門家。鉛筆を使った書字練習やひも結びなど、手先や日常生活に直結した動作の支援を行う。心のケアを通じて情緒面の安定を図り、自信を持って日常生活が送れるような支援も行う。
■言語聴覚士
言語やコミュニケーション、摂食の専門家。発音の遅れや言葉の理解の遅れに対し、言葉やコミュニケーションの苦手意識を改善し、より豊かな人間関係を築くことができるよう支援する。
支援の状況はお住まいの地域によって異なるため、DCDを含む発達障害を診察してくれる病院やクリニック、療育センターの予約がなかなか取れない場合には、まずはお住まいの地区町村の窓口などに相談してみるのもひとつの手だと思います。また、発達障害のお子さんが支援を受ける制度に基づくサービスをまとめた、日本理学療法士協会のHPもあるので、参考にしてみてください。
こちらの記事では具体的な運動での解決法をご紹介しています。
日本理学療法士協会
https://www.japanpt.or.jp/activity/asset/pdf/pamphlet_compressed.pdf
※1「児童発達支援事業所」「放課後等デイサービス」を利用するためには、お住まいの自治体への申請が必要です。
著者プロフィール
理学療法士、保育士、公認心理師
2009年に神奈川県相模原市にある「相模原療育園」に入職し、以後15年にわたり重症心身障害児や発達障害児の理学療法に携わる。児童発達支援センターの理学療法士訪問や、特別支援学校訪問なども行い、発達障害の方々やその家族の相談に応じている。
取材・文/小嶋美樹