目次
ギャングエイジとは、小学校中学年に起きる“心の揺れ”
――ギャングエイジとは、どのような発達段階なのでしょうか?
鈴木先生:小学校中学年くらいになると、親や先生の影響よりも“友だちの考え”を重視するようになり、大人と子どもの間で揺れながら自立へ向かう時期に入ります。扱いにくさは増えますが、成長の大事なプロセスです。
――ギャングエイジの子どもには、どんな行動の変化が見られますか?
鈴木先生:成長は一直線ではありません。中学年はとくに“進んだり戻ったり”が表れやすく、家庭と外で態度が大きく変わります。家庭では、口答えや反抗が増える一方で、夜になると甘えてくるなど、頼りたい気持ちも強く出ます。一方、外では友だちとの関係が影響し、ふざけすぎたり、弱い子をからかったり、約束を守れなかったりなどの行動が起きやすくなります。
これらの根っこには、「自立したい」気持ちと「まだ依存したい」気持ちが同時に存在する矛盾があります。そのため反抗と甘えが行き来し、行動が不安定に見えるのです。

――ギャングエイジの表れ方には、男女差やタイプの違いはありますか?
鈴木先生:男の子は「複数のグループを行き来」し、冒険心が強く出やすいため、外遊びの延長でトラブルにつながることがあります。女の子は「固定されたグループで関わる」ことが多く、その狭い関係の中の小さなすれ違いが、大きなトラブルにつながりやすくなります。ただし、これはあくまで一般的な傾向です。実際には個人差が大きく、きょうだいでもまったく違うケースがあります。
気を付けて見たほうがいいのは、行動の大小ではなく「生活に支障が出ているかどうか」。腹痛・チック・登校しぶりなど子どもの体に反応が出るときは、学校と共有しながら早めにサポートできると安心です。
家庭内の“よくある困りごと”への向き合い方
――宿題をしない、口が悪い、すぐ怒る…そんな子どもに、親としてどう向き合えば?
鈴木先生:親としては、子どもの強い言葉に反応して、ついカッとしてしまいますよね。ただ、感情的に言い返して良い結果になることはほとんどありません。大人が怒ると、本来必要のない言葉まで出てしまい、子どもは内容を受け取れなくなります。
――冷静に対応するコツはありますか?
鈴木先生:ギャングエイジというのは、本格的な思春期、反抗期が来る前の「親の準備期間」だと思うんです。まだ親と話してくれる場面も多く、自然と寄ってくることも少なくありません。だからこそ、これから少しずつ距離を取っていくための、親側の心構えを整える時期だと考えてもよいのではないでしょうか。
問題はその時期に突然起こるように見えますが、実際には多くの場合、その前段階に何らかの積み重ねがあります。そうした背景を振り返り、考えるきっかけとしても、この時期はとても大切です。そう捉えることができれば、出来事に対して感情的に反応せず、少し立ち止まって冷静に考えられるようになるのではないかと思います。

鈴木先生:また、私は「自分の状態を知っておく」ことを意識していました。忙しい時期や寝不足の日はイライラしやすいので、“今日は怒らないようにしよう”と事前に意識するだけで反応は大きく変わります。自分の“コップの水量”を把握するイメージです。イライラしやすい状況を自覚しておくことが、トラブルを防ぐ第一歩になります。
――反抗的な態度とは逆に、急に甘えてくるようなときは、存分に甘えさせたほうがいいんでしょうか?
鈴木先生:そうだと思います。子どもは成長とともに、心も少しずつ強くなっていきます。もう1段階、2段階と時期が進めば、いろいろな困難に対しても、自分ひとりで向き合い、乗り越えられる力が育っていくでしょう。
一方で、年齢が低いほど、心の面でもまだ弱さや未熟さがあります。だからこそ、親が関われる時期には、しっかり関わってあげることが大切なのだと思います。
ギャングエイジの子どもに「やってはいけない」関わり方
――この時期に“避けたほうがよい関わり方”はありますか?
鈴木先生:ギャングエイジは親子の距離感が難しい時期です。心配でスマートフォンの中までチェックしたくなることもありますが、踏み込みすぎると信頼関係に影響します。
私が子どもの頃にはスマートフォンはありませんでしたが、親に知られたくない秘密は誰にでもあったと思います。内容は人それぞれで、交換日記のような紙のやりとりだったかもしれないし、形はいろいろです。そうしたものに、親がすべて踏み込んではこなかったという経験を、多くの人が持っているのではないでしょうか。
それが今、スマートフォンになり、SNSなどでトラブルが起こりやすいからといって、親がその中身にまで踏み込んでいいのでしょうか。信頼や信用を前提にした関係がどこかに必要で、もちろんトラブルが起こる可能性はありますが、そのときはその都度対処すればいいんです。

鈴木先生:ゲームであれば、ルールを守らなかった結果として取り上げる、というのはまだ理解できます。ゲームはあくまで娯楽だからです。スマートフォンは友だちとのつながりを支える大事なツールでもあるため、強制的に取り上げるのは避けたいところです。
大切なのは、「使い方を親子で一緒に学ぶ」姿勢。学校のタブレット教育ともつなげながら、家庭でもルールづくりを話し合えると良い関係が保てます。
また、幼少期なら親が少し大きい声を出したり、ガミガミ言ったりすれば子どもも従ってくれたかもしれません。そんな抑え込み、大声を出して従わせる方法が通用しなくなってきます。たとえ一時的に効いても、恐怖で従っているだけ。長い目で見て、良好な親子関係を築くためにも避けたい関わり方です。
友だち関係や学校生活に揺れが出る時期。親はどう関わる?
――友だち関係が複雑になる時期、親はどのくらい介入したり、サポートしたりすべきでしょう?
鈴木先生:どの程度介入すべきかは、先ほども申し上げた「生活に支障が出ているかどうか」が判断基準になるかと思います。
この時期は交友関係が広がり、遊び方も変わるため、クラスのまとまりが崩れやすいことがあります。小さなトラブルは経験として見守ってよいですが、学級全体が落ち着かない場合は、家庭と学校が連携することが必要です。
連携のコツは、“批判ではなく、同じ目的を見る姿勢”で関わること。「よりよい環境のために何ができるか」を一緒に考える形で相談すると、先生も動きやすくなります。また、親同士で情報を共有できる関係があると、クラスの状況を客観的に把握しやすくなります。

――学校の先生との関わり方について、うまくいくコツはありますか?
鈴木先生:コロナ禍以降は学校行事が減って先生と直接会う機会は少なくなりましたが、連絡ツールやオンライン面談などが普及し、むしろ気軽に相談しやすくなっています。小さな“気になること”を早めに共有できると、問題が大きくなる前に一緒に対応できます。親・先生・子どもが同じ方向を見ることが、学校生活を支える鍵になります。
うそ・隠し事は“成長のサイン” 。自立の土台をどう育てる?
――この時期はうそや隠し事も増えますよね。親としてどう受け止めれば?
鈴木先生:うそや隠し事が続くと不安になりますが、子どもが成長する過程で自然と起こることです。これも親子にとっての学び、育ちのチャンスだと捉えられるようになると、見え方は少し変わってきます。
「絶対にやめさせなきゃ」と力が入りすぎると、親子ともに苦しくなります。少し肩の力を抜いて関わることで、子どもも安心しやすくなるでしょう。
また、人はトラブルを経験する中で育っていく面があります。トラブルを完全に避けようとするなら、徹底的に管理し、リスクをすべて排除する育て方も考えられるかもしれませんが、それは限界がありますよね。小さなトラブルや失敗の経験は、将来の大きなトラブルを防ぐ力にもつながります。
うそや隠し事に端を発した小さなトラブルも子どもの成長の一部なのだと、大きな心で受け止められるようになれば、親の関わり方もずいぶん変わってくるのではないかと思います。

――家庭でできる「自立の土台づくり」には、どんな関わり方が大切ですか?
鈴木先生:子どもが自立するためには、親の一方的な指示ではなく、理解し合える関係づくりが大切です。そのうえで重要なのが、子ども自身の「内発的動機づけ」、つまり “自分がやりたいと思って取り組む気持ち” を育てることです。勉強でも習い事でも、理由を親子で共有することで、やらされるのではなく自分の選択になり、粘り強さが育ちます。
また、会話が難しい年齢になったら、メッセージアプリなど“文字で気持ちを伝える方法”も有効です。現代ならではのコミュニケーションを補助的に使うことで、素直な気持ちを届けやすくなります。
ギャングエイジは“親子で育つ時間”。本格的な反抗期の前に関わり方を学ぼう
鈴木先生:ギャングエイジは、子どもにとっても親にとっても“良い学びのチャンス”です。少し余裕をもって関わるだけで、ぐっと良い方向に向かうことがあります。完璧をめざさなくて大丈夫。親子で成長していく気持ちで向き合ってください。
***
今回のお話を通して、「反抗も甘えも、すべて成長のプロセスなんだ」とあらためて感じました。つい不安になり、イライラしてしまうこともありますが、親子にとって必要な「揺れ」なら、少し気持ちをゆるめて見守ってみようと思えます。これからも、子どもの成長に寄り添いながら、ゆっくり歩んでいきたいですね。
こちらの記事もおすすめ
お話を聞いたのは…
東京学芸大学教育学部卒業。放送大学大学院文化科学研究科修士課程修了。公立小学校で22年間教諭として勤務し、現在も教育現場を支える立場で活動中。このほか、相模女子大学学芸学部・人間総合科学大学人間科学部の非常勤講師として大学教育にも携わる。専門は子どもの心と体の健康。保護者や教育関係者向けに、執筆・講演・研修などを行い、現場の課題に寄り添った情報発信を続けている。
取材・文/やまさきけいこ