【俳優・星野真里さん】難病・先天性ミオパチーの娘との10年をまっすぐに伝えたい。著書『さいごにきみと笑うのだ』に込めた想いとは

俳優の星野真里さんと元TBSアナウンサーの高野貴裕さんの娘のふうかさん(10歳)は、難病・先天性ミオパチーであることを一昨年SNSで公表しました。今回ふうかさんとの10年間を綴った著書「さいごにきみと笑うのだ」の出版にあたり、ご家庭でのふうかさんとの日々を話す星野さんは、子どもを育てる飾らない母の顔を見せてくれました。

「知られなかったら見えないまま…」でも「知らない人があなたのことを知っている状況になる」ーーSNSを始めるときの複雑な気持ち

――ふうかさんのことを公表しようと決めたとき、どんな気持ちがありましたか?

2024年に娘のことを公表するということに踏み切ったのも、やっぱり知っていただくことが大切だとすごく感じたからです。人はわからないことに対峙すると、距離をとってしまうことがありますよね。それが例えば、障がいを持つ人との距離感を生んでしまう要因の1つになるのかなと。

でも、ただ「知る」というたった一つの経験があるだけでも、今まで見えなかったことにしていたものが見えてきて、今までとは全然違った、近い距離感になりますよね。そうなると見えてくる世界も違ってくると思うのです。

2024年9月15日、インスタグラムを開設した最初の写真

――公表する前と後で、見える世界は変わりましたか?

はい。私は娘と出会う前は障がいや福祉が自分とは関係のない、遠い話だなって思っていた時期が長くありました。でも出会ったことで世界は一変しました。

ありがたいことに私は皆さんに見ていただく仕事をしてきて、今回娘とSNSをしたり本を出版したり、それを皆さんにもっと知っていただくためのアクションをするということになったときに、これまで仕事を頑張ってきたのは、もしかしたらこのためでもあったのかもしれないと思う瞬間もありました。

――もともとふうかさんがYouTubeをやりたいと言ったそうですね?

やはり今どきの女の子なので流行りのSNSを見たりすることは好きなんです。それで「楽しそう、自分もやってみたい」と言い出したことがきっかけですね。

そういうことに怖さを感じてしまうタイプの私からすると、最初は少し心配の方が大きかったです。それで、「あなたが知らない人があなたのことを知っている状況になるんだよ」って、人から注目を浴びるかもしれないことや、SNSの特性といったものもきちんと説明しました。そのうえで「それでもやりたい」と言った娘に頼もしさを感じ、始めることにしました。

幼稚園のときの1コマ。迎えに行くとびっくりするような格好で出てきた想い出の写真

「泣いちゃうよね」本を読んだご主人の言葉

――SNSで日々の発信はしていて、今回「さいごにきみと笑うのだ」を出版されました。改めて本という形で残そうとしたのはどんな想いからですか?

もともと私が本が好きで、彼女が過ごしてきたこの10年間をまとめることができたら、この先の自分の人生であったり、娘の人生であったりの支えになるのではと思ったんです。本にはインターネットとはまた違う形で届けられるものもあるんじゃないかなと。初めて自分で企画書を書いて事務所と協力して、こうして形になったことがまずうれしかったです。

――企画書から書かれたのですね! 制作は大変でしたか?

はい。事務所で初めての企画書を見せたとき、最初は「これは企画書じゃありませんね」って言われたりして。今までも仕事でいろいろなものを読んできたつもりでいたけれど、0から生み出すのとは違うんだなと学びました。

制作が始まると短い期間でしたが締め切りがあったので、その間は他のことを置いてこれに集中できたのは良かったです。改めて自分がやってきたことを振り返り、泣きながら書く章も多くありました。でもこの本のおかげで「私、頑張ってたな」と初めて自分をほめてあげることもできたので、とてもいい時間でした。

――出来上がった本を見て、ご家族の反応は?

主人からは「泣いちゃうよね」と一言。まだ本になる前のまとまったものを渡したら、いろいろ思い出して泣きながら読んでくれたみたいです。ふうかは自分の絵や言葉が載っているのをとても喜んでいました。でも出たがりな性格なので、自分の名前が表紙にないのかと残念がっていました(笑)。

新しい家族(愛犬・ローク)がやってきた瞬間の写真。撮影前に星野さんが誤ってふうかさんの頭を壁にぶつけてしまったため、ふうかさんは涙目に

何気ない家族の日常とこれからのこと

――ふうかさんのイラストや会話がたくさん入ったこの本のこだわりは?

娘のことを書くので、彼女が嫌な想いをしないようにということを一番に考えていました。私がエピソードを書き上げるたびに娘に読んでもらって、「これを出していい?」と確認してから進めました。幼稚園のときのことなどは、彼女の言葉でいいなと思ったものを選んで入れています。

――イラストはこのために描き始めたのですか?

ふうかはもともと絵を描くことが好きで、今はオンラインでデジタルアートを習っています。描けたら画面共有をして先生にチェックしてもらえるので、お出かけが大変だったり、体力的にハードルがあったりする子にとっては続けやすいですよね。親が教えてあげられないことを習い事や学校でいろいろと経験させてもらえるのは、すごくありがたいです。

今、学校は支援学級に在籍しつつ、通常級で過ごす時間も増えています。根は真面目だからか宿題もわりとしっかりやっているようです。この間も書き初めをしたりして、お友達と同じ課題でできることは取り組もうとしています。

ランドセルが届いた日のふうかさん

――将来の準備や教育方針についてはどのように考えていますか?

障がいがあるとどんなことでも事前の準備が本当に大切です。幼稚園のころは、年少のときから小学校見学を始めました。これからのことだと、中学校の就学相談は入学の1年前から始まりますが、わが家はさらに1〜2年前倒しで将来のことを考えて情報を取りに行く必要があります。

情報は自分たちで取りに行かないと提供されないことが多いので、事前に何が必要か調べて、それで実際に情報を得られたら娘に共有して、そのうえで娘がどうしたいかを考える……、ということを繰り返してきました。

家族にでも誰にでも、言葉を大切に気持ちを伝えることが大事

――夫婦間の子育てに対する考え方はそろっていますか?

根本は似ていると思いますが、主人は今を楽しもうって考えで、私は先を考えすぎて心配に感じてしまう方でした。でも、過去のことは変えられないし、先のことはわからない。だったら今を楽しもうと主人がいつも言ってくれるので、一緒に過ごす中でずいぶん気持ちを楽にさせてくれました。

ふうかも主人の性格に似ていて、なんでも物怖じせずやってみようと思うタイプです。それはとてもいいことなので、そのうえで、ふうかはやっぱりどうしても周りにお願いをすることが多くなるので、言葉を大切にして気持ちを伝えていくことが大事なんだよという話も常に伝えています。

――SNSで発信を始めてから、ふうかさん自身に変化はありましたか?

ふうかのSNSを見てくれた方から「しっかりしている」とほめていただくことがあります。彼女はそれが自信になっているようで、自己肯定感がより上がって、前に出たいと思うようになっているようです。

私たち夫婦にとっては今までそれが普通のことだったので、ふうかの言葉や行動を当たり前と思っていました。でもそういったコメントがあると、客観的に見るとふうかはそう見える一面もあるんだということに気づかせてくれます。だから、娘をよりほめてあげられるようになりました。

最近は彼女が自分でコメントを書きたいと言うようになったので、もう少し年齢が上がったら、できることは少しずつ自分でやるようになるかもしれません。将来的にはSNSが彼女にとって大切なコミュニティになっていくと思うので、見守りながら皆さんとつながる場として育てていけたらと思っています。

「助ける」「助けられる」の立場は固定ではない

――最後に、同じく子育て中のパパママへ伝えたいことはありますか?

以前通っていた幼稚園の保護者会でのことですが、そこで皆さんの悩みを聞くことがあったんです。元気に走り回るお子さんでいつもうらやましく思っていたけれど、でもその子の親御さんはこんなことに困っていて、こんな悩みがあるって聞いたら、「むしろうちよりも大変そうじゃない?」と思うことがありました。

そういう姿を見せていただくというか、そういうことを感じられたことで、まず、子育てはどんな状況であれ大変で、悩みは必ずあって正解も1つではないということを知りました。

生まれたばかりですでに歯が生えているふうかさん。生まれたときから生えている歯を「魔歯」(まし)とよぶそうです

例えばこれが障がいのあるお子さん、配慮が必要なお子さんだけのグループの中にいたら、「そうだよね、私たちって大変だよね」となっていたかもしれません。だからそれは、障がいうんぬんとかは本当に関係がないということに気づかせてもらいました。

そのとき悩みを話せる場所の大切さをすごく感じたので、悩みがあったら信頼できる相手に吐き出してほしいです。その場で解決できなかったとしても、自分の中に溜め込まないで、少しだけでも言ってみてほしいです。それは自分にとっても大切ですし、実はそれを聞いている周りの誰かの何かの役にも立っていることもあるから、なんでも言葉にしてみてはどうでしょうか。

話すことで違う世界が見えることもあります。私のように聞いた側もそれをヒントに「うちはこうしてみよう」と思うこともありますから。「助ける」「助けられる」の立場は固定ではないので、申し訳ないと感じる必要はないと思いますよ。隠さないで言語化してやり取りすることで、生まれるものは多いと思います。

■ふうかさんのインスタグラム fuka_9_はこちら>>

お話を伺ったのは

星野真里さん 俳優

1981年7月27日、埼玉県生まれ。1995年NHKのドラマ出演で俳優デビューをしてから、数多くのドラマや映画に出演。そして2001年には歌手としてもデビュー。現在は俳優業のほかにコメンテーター、番組司会、エッセイ執筆やナレーションなど、幅広い分野にて活動している。

星野真里 小学館 1760円(税込)

難病と闘う娘ふうかと歩んだ10年間の記録
俳優・星野真里さんと元TBSアナウンサー・高野貴裕さん夫婦の長女、高野ふうかさん。

2025年7月で10歳になった彼女は、「先天性ミオパチー」という筋緊張低下の国指定難病を患い電動車椅子で生活していますが、周囲の人たちに支えられながら、明るく逞しく生きる日々をInstagramを通じて発信しています。そんな彼女の難病と共生する現実の中にある、ちょっと大変だけど少し楽しいエピソードを、母・真里さんの視点で綴ります。

「今日も生きている。それだけでこんなにも幸せを感じられるのですから」と星野さんは言います。ふうかさんを中心とした高野家の「ふつうじゃないけど、ふつうに幸せ」な日常を様々なテーマで紹介。星野さん自身が、ふうかさんから教わったという心が生きやすくなるヒントをお届けします。

こちらの記事もおすすめ

難病・アンジェルマン症候群の息子、夏斗くんの就学先は「特別支援学校」。元サッカー選手 島村毅さん&由子さんが「選んでよかった」と安堵する理由
毎日、元気に特別支援学校に登校 以前、インタビューしたときは「特別支援学校に通い始めることに不安もあります」と語っていた、島村毅さん・...

撮影/タナカヨシトモ ヘアメイク/佐々木篤(グルーチュ) スタイリング/Yoshino 文・構成/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事