作家・タレント宮田愛萌さんの「本好き」「自分らしく」を貫いた中学受験。「日能研バッグを背負って通っていました」3校の女子校を受験し、選んだのは…

中高時代は芸能活動はせず、大学生になってからオーディションを受け、アイドルグループで活動した宮田愛萌(まなも)さん。幼い頃から無類の本好きで、今は小説家、歌人でもあります。中学受験の経験について伺うと、詰め込みではなく、自身の「好き!」を大切にした様子。「ちょっとゆるめ?」とも感じますが、お話を伺うにつれ、「こういう受験もアリ!」と思わせてくれる宮田さんの受験ストーリー。
前編は中学受験の体験、ぜひ読んでみてください!

物心つく頃から本の虫。あまりに読んで! とねだるので、母が絵本の漢字にかなをふる

――小さい頃はどんなお子さんでしたか?

宮田さん とにかく本が好きでした。絵本でも文字がいっぱい書いてあるのがよかったんです。母も父もよく読み聞かせをしてくれましたが、「もっと読んで!」と次々にねだるので、母がひらがなを教えてくれて、絵本の漢字に全部かなをふってくれました。

もともと幼稚園の頃から教わらなくてもひらがなと簡単な漢字は読めたのですが、もう少し難しい字も読めるようになり、いつのまにか本は自分で読むようになりました。

好きだったのは『天使のかいかた』という物語。ペットの代わりに拾ってきた天使を飼うのですが、天使はお話をすると元気になって、話さないと具合が悪くなっちゃう。それがかわいくて、うちにも天使がいたらいいなあと思って、何度も何度も読み返しました。

図書館にもよく行っていて、母の分と合わせて20冊借りて家に持って帰ってすぐ読んで、また借りに行く、という感じでした。それでも新しい本がどんどん読みたくて、「本を買って」とねだることも多かったかな。ショッピングモールに家族で行ったときなんかも、いかに本屋さんに行って本を買ってもらうか、そればかり考えていました。

親は心配して、「ゲームでもしたら?」

――親御さんにしてみたら、本好きなのはうれしいですよね?

宮田さん それがそうでもなくて。母としては、当初は「本をいっぱい読む子にしたい」と思っていたでしょうね。けれど、「こんなに本のことしか考えていないなんて、むしろ心配」って。ほかの遊びもしてほしい、おもちゃやゲームや洋服を買ってあげたい、でも愛萌は、本ばかり……、という気持ちだったんじゃないかな。だから、私が本屋さんに行きたがっても「ほかのところに行かない?」のように言われていましたね。

ほかの家では「ゲームはさせたくない」という感じだと思うのですが、うちの場合は「たまにはゲームとかやったらどう?」って。実はうちにはゲームソフトがいっぱいあるんです。私がちょっとでもそのゲームに興味を示したら、買ってくれたからです。本ばかりにならないようにという願いで……。

でも、私はとにかく本を買ってもらいたい。で、作戦を練るんです。本屋さんのあるフロアに着くと本屋さんに興味がないふりをして、バレないように近くまで行って、不意に本屋さんに飛び込む、みたいなことをしていました(笑)。

――インドア派でしたか? 外遊びは?

宮田さん クラシックバレエを習っていて、日に焼けてはいけなかったんです。なので、外で遊ぶのはイヤでした。ただ、中高ではダンス部でしたし、踊ることは好きでしたよ。それが芸能活動につながっていったと思います。

小さい頃は、社交的という性格ではなかったかな。同世代の子と遊ぶより本を読むほうが好きだったし、自分が考えていることに言語能力が追いついていなくて、「どう思っているの?」って言われても答えられなかった。自分がしっくりくる言葉を使いたいから沈黙を選ぶ、という感じで。気難しいと思われていたかもしれません。

本を読むのは得意だけれど作文は苦手な小学校時代

――未就学の頃から本をたくさん読み、今は小説家ですし、小学校時代、読書感想文などの作文も得意でしたか?

宮田さん いえ、苦手でした(笑)。本を読むことは好きだから、読書感想文の課題図書が6冊あったとすると、6冊全部読んじゃうんですよ。でも、自分が思っていることを言語化できないので文章にもできなくて、「書けない!」ってなるんです。「そんなにキチキチ考えなくてもウソでもいいんだよ、それっぽいことを書けばいいんだよ」と言われてもダメで。文章を書くのが楽しいと思ったのは、言語化が少しはうまくなってきた中学生、高校生になってからですね。

当時得意で好きだったのは、読むことです。6冊の課題図書は1日で読んでしまっていました。学校の休み時間に読むのは好きじゃなかったですね、中断しないといけないから。どうしても一気に読み切ってしまいたいんです。

家でも途中でやめることがどうしてもできないし、読んでいるときは誰にも話しかけられたくないんです。「夕ご飯よ」って言われてもやめないから、親もごはんを食べずに待っていました。それが申し訳ないけれど、でも途中でやめるのはイヤで…それで読むのがどんどん速くなっていきました。今も途中でやめるのは苦手で、せめてまとまった章は一気に読みたい! と思ってしまうほうです。

きれいな校舎と明るい図書室を求めて中学受験。教科ごとに極端な成績

――そんな宮田さんが中学受験をしたきっかけは?

宮田さん 親に言われたとかではなくて、私自身が中学受験したかったんです。バレエに一緒に通っていたおねえさんたちが私立に通っていて、「地元の中学は校舎が汚くてエアコンがなくて、制服がダサい」って(笑)。小学校もそれほど新しくなかったし、もっと古いなら私立に行きたいって思ったんです。

当時、「男の子が乱暴でイヤ」と感じていたので、女子校が希望でした。『大草原の小さな家』とか『小公女』を読んでいると、食事の前にお祈りするシーンがあって憧れて、キリスト教の学校がいいなあと思い、キリスト教の女子校ばかり受験しました。

――中学受験塾には通ったのですか?

宮田さん 日能研にNバッグを背負って通っていました。5年生まではバレエもやっていましたが、6年生になるとほぼ毎日塾があるのでやめました。

塾は楽しかったですよ。とはいえ、本を読んでいるほうがずっと好きでしたけれど。成績はそんなによくなくて。国語だけはとてもよくて、クラスでは必ず上位に名前が載っていましたし、1位のこともありました。でも、理科は苦手で最下位…のような、極端な感じでした。

理科にはぜんぜん興味がなくて、生物、特に虫が嫌いで、テキストの虫の単元で写真があると開けなくて、テストも白紙で出したり……。算数も文章題だったら文字を読むのが楽しくて解くんですが、図形になると興味がなくて。

――徹底していますね(笑)。

宮田さん 試験は全部言葉で書いてほしいくらいでした。じゃあ社会は言葉が多くて好きかと言われると、歴史小説は読んでなくて、平安時代だけ文学にからめてよく読んでいたから、平安時代だけが得意でした。あと、川の名とか県の名前とかが出てくるので地理は楽しかったです。

国語の偏差値は70を超えるのに、ほかが48~50くらいだったりして、平均で60いくかな、くらいの感じだったんです。

――結果は……。

宮田さん 立教女学院と、恵泉女学園中学・高等学校と、カリタス女子中学高等学校を受けて、立教は落ちてしまいました。

残りのふたつでどちらに行こうか迷いました。バレエの先輩たちは恵泉で、恵泉もいいなと思ったのですが、小学生の頃は翻訳家になりたかったんですよね。カリタスはフランス語が習えるし、校舎もきれいで図書室が明るいし、幼なじみも2人受かっていて「一緒に行こうか」となり、結局カリタスに入学することになりました。

ーー「本好き」「文章好き」を貫いた中学受験。イヤなことをガマンしすぎず、自分らしく臨み、結果を満足して受け入れる。「いい受験」でしたよね。そんな宮田さんが中学以降今に至るまで、どんな道筋を歩んできたのでしょうか。後編では「今でもこの職業に就きたい!」という情熱がほとばしる内容です。こちらもぜひお読みください!

後編:大学受験、アイドル活動、そして作家へ。著書が中受の問題に採用!

著書が中学受験の問題に採用! 國學院大出身の作家・タレント宮田愛萌さん。本を愛するからこそ、今なりたいのが「出版社の営業」!?
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お話を伺ったのは

宮田愛萌(まなも)さん 作家・タレント

1998年4月 東京都出身。國學院大學卒業。2023年アイドルグループ卒業時にデビュー作「きらきらし」(新潮社)を上梓。​現在は文筆家として小説・エッセイ・短歌などジャンルを問わず活躍。
​本に関するTV/トークショー/対談なども出演。

著書は『あやふやで、不確かな』(幻冬舎)、『春、出逢い』(講談社)写真短歌集『わたしのをとめ』(短歌研究社)

​ラジオ/動画配信コンテンツは宮田愛萌と渡辺祐真のぶくぶくラジオ(2023929TBS Podcast)、文化部特派員「宮田愛萌」 (202437、ニコニコチャンネル、YouTube)など。

取材・文/三輪泉 撮影/田中麻以 ヘア&メイク/yulaly(eif)

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