幼少期から中学受験までのお話はこちら
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立教新座と筑波大附属の中学入試に、著書『春、出逢い』が採用された!
――カリタス女子に合格後は、國學院大學に進学し、アイドル活動もスタート。その辺りのお話も伺いたいのですが、まず先に、著書についてお聞かせください。なんと著書が2025年春の中学受験の問題に採用されたそうですね!
宮田さん そうなんです。『春、出逢い』という作品から、立教新座中学校と筑波大附属中学校、ふたつの学校で国語の問題に使われたんです。あとから知ってびっくりしました。
この本は、短歌のサークルに入っている高校生たちが主人公で、短歌甲子園というコンテストに出場する物語なんです。途中で短歌も入ってくるし、小学生だと短歌に触れたこともあまりないだろうから、大丈夫だったかな、調子乱さなかったかな、と。
でも、中学受験の問題になった、ということがうれしいです。「小学生に読ませられる作品だ」と先生たちが思ってくださったということですし。短歌をはじめ、万葉集とか、日本の古典文学はとても奥深くておもしろいんですよ。

また、受験に採用されたことをきっかけに、母校の國學院大學の図書館にこの本を置いてもらえることになりました。それもとてもうれしくて。これからも、出身のカリタス女学校にも國學院大學にも恥じない生き方をしたいですね。
中高のカリタス女子では日本文学にのめり込み、アポなしで巫女さんの体験依頼に!
――では、中高時代のお話を聞かせてください。中学受験でカリタス女子中学高等学校に入学し、中高一貫で6年間学びました。中学生活はいかがでしたか?
宮田さん 校舎もきれいだし図書館も明るくて、とてもいい環境でした。女子校が自分にはぴったりで、毎日が楽しかったです。
英語やフランス語もしっかり学べる学校で、それもよくて入学しました。ただ、勉強してみるとどうも外国語はあまり向いていなくて、本も好きだし平安時代の歴史も好きだし、「日本語で生きていこう」と決めました(笑)。
中高生の間は日本文学を読んでみようと思い、いろいろ読み始めるうち、日本の妖怪とか都市伝説とか民俗学とか、そっち方面にのめり込みました。神社の文化にもひかれて、中3のときに勝手に「巫女さんの職業体験をしたい!」と思って機会を狙っていたら、知り合いの方に乃木神社を紹介してもらえたんです。アポなしで社務所にお願いしに行ったら「やっていいよ」と言ってくださってうれしかったですね。
巫女さんをやっているときに、「そういう方面が好きなら」と國學院大學のことを教えてもらいました。国文学、神道では屈指の名門大学で、神主さんの資格を取れる大学なんですよね。日本文学科では古典文学のほか、民俗学や口承文芸、祭礼など、まさに私が関心を持っていることを学べるようで、とても興味を持ちました。
文化祭をパスして模擬授業へ。「どうしても行きたかった」國學院大學

宮田さん 高校に上がって将来の進路を考えるときに、國學院大學日本文学科への進学をまず考えました。カリタスの女子校の雰囲気が好きだったので、大学も女子大がいいなとも思ったんですが、國學院で学べる内容がすごく魅力的で。
当時、國學院には、受験生のための模擬授業体験があったんですよ。たしか2日間の体験授業が6回くらいあったのですが、とてもおもしろくて、6回全部行きたくて。高3の最後の文化祭と重なっていたのですが、模擬授業を受けたくて文化祭に行かないくらいだったんです。
一般入試だと3教科で受けるんですが、AO(現在は総合型選抜)だと国語重視型で受けられたので、私には絶対に有利だと思ってAOで受けました。
私は万葉集が好きで、大学に行ったら万葉集を深く学びたいと思っていたんですが、面接の先生がまさに万葉集を教える先生だったんですよ! これは運命だと思いました。幸い合格して、本当にうれしかったです。
ーー日本文学一筋なんですね。ご両親は喜んでくれましたか?
宮田さん 喜ぶというか、あきらめてましたね(笑)。小さい頃から本ばかり読んでいたので、「本に埋もれていないでいろいろな外の世界に目を向けてほしい。外国語をやったら?」と言われていましたが、私は一度決めたら頑固で譲らないので。
それと、國學院大學では図書館司書の資格も取れます。私は本好きで高校時代は「将来は図書館司書か出版社の社員になりたい」と思っていたので。両親も、司書になれるということで「國學院、いいね」と言ってくれました。
大学入学後、すぐオーディションに合格。親は芸能活動に猛反対!

――そんなふうに日本文学にのめり込んでいましたが、一方で大学入学をしてまもなく、アイドルグループのオーディションを受けたのですよね?
宮田さん はい。当時、個別塾で塾講師のアルバイトをしていたのですが、ひとつバイトを増やすくらいの軽い気持ちで、「エピソードトークで使えるかな」って感じで受けてみました。
実際に受けてみたら、周りのみなさんがとても真剣で、刺激的でした。そしてなんと1500倍の倍率をくぐり抜けて合格しちゃったんです。
――ご両親の反応はどうでしたか?
宮田さん 大反対でした。「なんでそんなの受けたの!? 絶対ダメ!」って、母に合格通知を破り捨てられました。もう大げんかですよ。自分も受かると思っていなかったし、合格した後のことは考えてなかったけれど、真剣に受けて落ちた子もたくさんいる。「やっぱりやめた」なんて、言えませんよね。
さんざん両親とやり合って、最後に条件を出されました。「大学は必ず4年で卒業すること、図書館司書の資格は必ず取ること、別のオーディションは絶対に受けない」。やっと折り合いがついてホッとしました。
仕事が忙しくなるにつれ、大学の授業もおもしろくなって……

――実際に活動を始めてみたら、大変だったのではないですか?
宮田さん 両立できると思っていたんです。大学生の授業は、学部によりますけどコマ数も少なめでしたし。ほかの子たちは高校生が多くて毎日授業があるわけだし、活動は夕方以降だったりするんだろうなって思っていました。でも、合格したらみんな通信制高校とか芸能活動OKの高校に転校していって…甘くなかったです。
私は親との約束があるので授業をあまりサボれなかったし、勉強自体すごくおもしろくて、サボりたくもなかったんですよ。空いている時間は全部授業を入れたいくらい。仕事が忙しくなればなるほど大学もどんどん楽しくなって、四苦八苦している私を見て、母は今度は私の身体が心配だってなりました。でも、私にも意地はあるし、授業も出たいしで。
授業をあまり休むと留年してしまうので、細かく計算して、休むたびに先生に「すみません、授業はすごくおもしろいのですが、この理由で休みます」みたいに言いに行っていました。なんなら勝手に作った欠席届の紙も出していました。先生に直接渡したいから研究室まで行って渡そうと、先生の「出待ち」をしたことも(笑)。
出席の代わりにプリントをもらって自主学習したり、2000字のレポートを出したり、授業で発表があるときは調べるための本を10冊くらい抱えて仕事に行ったりして、かばんのストラップは2回くらい切れました。最大の難関は卒論でした。私の学科では、卒論は書くか書かないかを選べるのですが、私は書きたいと思っていたんですよね。でも、私の状況や性格をよく知る先生のほうから、書かずに卒業する方をすすめられました。すごく残念でしたが、やっぱり助かりました。
大学卒業・アイドルを卒業し、作家・タレントとして活動中。けど、実はなりたいのは出版社の営業!?

――大学を卒業し、2年後アアイドルグループも卒業し、今は大学時代から書き始めた小説を書いたり、本にまつわるトークをしたりと、本来の「本好き」に関係する仕事も多いですね。今後も作家活動や本に関係する活動を中心として、お仕事をされていくんですか?
宮田さん そうなんですけれど、私、どうしてもなりたい職業があるんですよ。大学で図書館司書の資格を取り、小学校の図書室の先生になることも考えていたのですが、それより出版社の社員になりたいって思っていました。高校のときからです。
今は紙の本離れをしている時代ですよね。でも、本って大事! 本を売りたいんです。私は本が好きでたくさん本を買いますが、私がひとりで100冊買うだけじゃダメですよね、100人が1冊ずつ買わないと。そのために何ができるんだろうか、そう考えたときに、出版社、それも営業部に行って自分が本をたくさん売ったらどうかと。それか広報で、本をたくさんPRするか。
出版社の人が書店に営業に来る様子を見ていた
「編集をやりたいんじゃないの?」と言われますが、自我が強すぎるし、自分の好きな本ばかり作ってしまいそうで向いていないかも……。私、学生の頃に毎日地元の書店に行って、出版社の営業とか販売の人が来るのを見て、「こういうふうに仕事をするのか」と見ていました。高校時代は漫画雑誌とかに投稿をよくしていました。名前が珍しいので、もしも大学のときに就職活動をしたら、ワンチャン覚えていてくれないかなという淡い期待もありました。
――かなり本気ですね。
宮田さん 本気です! 大学時代に出版社に就職のインターンに行きたいと思って応募しようとして「あなたはアイドルなんだから」と止められたり。今でも思いは変わっていません。どこかの出版社が私を営業で雇ってくれないでしょうか(笑)。
――幼少期からとにかく本が大好きで、受験も今の活動も「本好き」が高じてのこと。こんなふうに「好き」が真ん中にある人ってステキです。これから宮田さんがどんなふうに本にまつわる仕事を続けていくのか、ウォッチしていきたいですね!
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お話を伺ったのは
1998年4月 東京都出身。國學院大學卒業。2023年アイドルグループ卒業時にデビュー作「きらきらし」(新潮社)を上梓。現在は文筆家として小説・エッセイ・短歌などジャンルを問わず活躍。
”本”に関するTV/トークショー/対談なども出演。
著書は『あやふやで、不確かな』(幻冬舎)、『春、出逢い』(講談社)写真短歌集『わたしのをとめ』(短歌研究社)
ラジオ/動画配信コンテンツは宮田愛萌と渡辺祐真のぶくぶくラジオ(2023年9月29日 – 、TBS Podcast)、文化部特派員「宮田愛萌」 (2024年3月7日 – 、ニコニコチャンネル、YouTube)など。
取材・文/三輪泉 撮影/田中麻以 ヘア&メイク/yulaly(eif)