文房具は「困った」を解決してくれる道具
小学生は文房具のヘビーユーザー

厚生労働省の令和6年の調査資料によると、令和6年に誕生したお子さんの数は686,061人。そのままの人数で小学校入学の年齢を迎えると考えると、全盛期と比べると少ないものの、70万人弱のお子さんが、鉛筆や消しゴムを購入し学ぶ準備をします。
これを小学生全体に広げてみると単純に考えれば6倍の人数。筆入・鉛筆・消しゴムはもちろん、コンパスや習字セット、絵の具セットなど、授業で使うために購入します。逆に文房具がないと授業を受けることができない、なくてはならないものですよね。
最近はメーカー発「困った」を解決する商品開発も
本書でも紹介している文具・事務用品メーカーのソニックでは、子どもの「ついうっかり」を減らすためのルールや仕組みづくりを道具でサポートする商品「うかサポシリーズ」を展開しています。また、日本ノートの「スクールラインプラス 合理的配慮のためのノート」は、支援が必要なお子さんはもちろん、どんなお子さんでも便利に使えて、「困った」が解決できるシリーズの商品があります。
また、さまざま文具メーカーでも、子どものいる社員から自身の育児経験を反映させた商品を作ったりと、それぞれの視点で「困った」を解決する商品を手掛けることが増えているように感じます。
できないから不器用と決めつけない
学校では、児童に持ってくる文房具を指定している場合も多くあります。しかし、特定の動作・作業をすることが難しいお子さんも実際にいらっしゃると思います。「定規で線を引いても途中で曲がったりずれたりしてしまう」「鉛筆を削ることを毎日忘れてしまう」など。これらは発達障がいを持つお子さんに多い事柄かもしれません。でもそうではないお子さんでも起こることです。
そこで、「できない=障がいのせい」「できない=不器用」と決めつけるのをやめ、「できないのは道具がマッチしていないからではないか?」という新しい発想を持つようになりました。
そして、発達障がいを持っているお子さんの「困った」を解決できた道具は、他のお子さんの「困った」を同時に解決できる道具だと考えました。特別支援学校の先生に発達障がいをお持ちのお子さんに起こりがちな「困った」状況を挙げていただき、それぞれの問題を解決できると考えられる文房具250点以上を筆者がピックアップし、商品の紹介をしました。
本書を監修してくださったのは?
佐藤義竹先生
本書の監修をしてくださったのは、筑波大学附属大塚特別支援学校の佐藤義竹先生。佐藤先生は主幹教諭・研究主任として学校内外の支援教育を支えています。『自信を育てる 発達障がいの子のためのできる道具』(小学館発行)という本も刊行しており、すでに書籍を手に取っていらっしゃる方もいるかもしれません。この本の中でもたくさんの文房具が紹介されており、今回の監修をお願いするに至りました。
本書に出てくる「困った」解決商品を少しだけご紹介!
オートロック筆入
これは小学4年生である筆者の娘の「困った」が解決した話です。

箱型の筆入を使っている娘の「困った」はマグネットで閉じられたフタを開けるたびに「えいっ」とりきむ必要があることでした。しかも開けるためには両手が必要。辞書を引きながら筆入の中にある赤えんぴつを取り出すなどの必要があったときに特に困っていたそうです。
ここで解決してくれたのはクツワの「オートロック筆入」でした。ロックを解錠する操作をすると磁石の位置がずれて片手でも軽々開くようになっています。
春からこの筆入を使っている娘に先ほど聞いたところ、快適に授業を受けているとニコニコしていました。
絵の具のチューブ
また、本書では絵の具を例に挙げています。ここでは絵の具自体の発色の良さではなく、絵の具で感じる「困った」を解決する商品を二つ紹介しています。絵の具で感じる「困った」とは、チューブの使いやすさについてです。

一社の製品は「弱い力でもチューブから絞り出しやすいので、絵の具を出しやすく」しています。もう一社の製品は「キャップを下に逆立ちした状態にすることができるので、出口付近に絵の具を集めることで出しやすく」しています。
これはどちらが良い・悪いではなく、「お子さんの使いやすさ」で「困った」の解決法が変わります。このように文房具の持つ「機能」「工夫」「使いやすさ」「何を解決するか」を主眼に置き本書では紹介されています。
「困った」を解決したらハッピーにつながる!
学校生活をおくっている子どもたちには、特性によりできないことに長い時間苦労させるのではなく、やりたいことにたくさんの時間を使わせてあげたいものです。そこで、本書ではシーンごとの「困った」を解決する文房具をご紹介しています。

第1章:動作の困ったを解決する文房具たち
「書く」「消す」「描く・塗る」「切る・貼る」「はかる」「折る(組み立てる)」「とじる」「しまう」と動作ごとに「困った」を監修の佐藤先生に挙げていただき、筆者である私が解決する文房具を選出し解説を加えました。こちらは「同じ機能のものでも複数のメーカーを挙げること」「文房具店で手に入れやすい、もしくは注文可能な商品を選ぶこと」を大切にして商品選びを行いました。
第2章:日常生活の困ったを解決する文房具たち
「物や時間の管理」として道具箱、時計やカレンダーなど。そして「布製ランドセル」「防犯ブザー」「姿勢を保つための道具」といった日常生活と関係する道具たちもご紹介しています
第3章:もっとハッピーになる文房具のおはなし
今回、商品を取り上げさせていただいたメーカーのうち、数社にインタビュー。誰でも優しく使えるような商品がどのように生まれたのか、その背景やこれからの展開なども伺っています。そして、最後には一番身近なマイノリティと言われる「左利き」について、筆者・監修者と「左利きの方が使いやすい道具を取り扱うお店」の店長による座談会も収録されています。
書籍について
支援が必要な子からちょっと不器用な子まで 子どもの困ったを解決するハッピー文房具図鑑

サイズ・ページ数 : AB判・128ページ
定価 : 2,970円(本体2,700円+税)
出版社 : 学事出版
本のサイズはお子さんが学校で使っている学習帳より大きめでずっしりとしたものになっています。写真を多用することで商品の特徴をわかりやすく書きました。
お子さんの「困った」がある保護者の方にはぜひ一度、手に取っていただきたいです。
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