「中学受験をするか、しないか」の判断基準は? 実は子どもだけでなく親の適性も!【教育系インフルエンサー東田高志さんに聞いた】

中学受験は、今や首都圏では5人に1人が経験する時代。受験熱が高まる中、わが子をその渦中に投じるべきか、あるいはあえて「しない」選択をするべきか、答えの出ない問いに悩む保護者は少なくありません。わが子の人生を左右する大きな分岐点だからこそ、世間の風潮に流されず、納得感のある決断をしたいもの。そこで今回は、Xで5万人以上のフォロワーをもつ教育系インフルエンサーの東田高志さん(東京高校受験主義)に、中学受験を「する・しない」の判断基準についてお話をうかがいました。

中学受験の適性その1:自分を客観視し相手をおもんぱかる「心の成熟度」

――東田さんは、中学受験のブームに流されず、あえて高校受験を選択することで、子どものポテンシャルを最大限に引き出すという「戦略的高校受験」を提唱されています。中学受験に向かない子どもに無理にチャレンジさせるとやはり弊害があるのでしょうか?

東田さん 中学受験は子どもに極めて高度なことを求め、競争も熾烈です。その精神的負担から、受験生の子どもが心療内科に通うことになったり、円形脱毛症になったりするケースもあります。

あとは、塾のクラスや模試の順位、偏差値などを巡って、「お前バカじゃん」などと他人を見下すという、マウンティングモンスター化してしまう子もいますね。これは、決してその子の性格に難があるわけではなく、自分の言動が他人にどのような影響を与えるかという客観的な視点が育っていないまま、中学受験という競争性の高い世界に放り込まれたことが要因だと思います。

――自分のことを客観視できるだけの成熟度が備わっていない子、心の成長が遅れている子は中学受験に向かないということでしょうか?

東田さん 心の成長が遅れている…というのは語弊があるかもしれません。むしろ、小学校高学年なんて、自分のことを客観視したり、他人の心をおもんぱかったりできないのが当然です。私が指導してきた経験則では、自分の思ったことをそのままストレートに口にせず、自制できるようになるのはだいたい中学2、3年生くらい。その頃には、メタ認知能力やソーシャルスキルが高まり、あからさまなマウントをとる子は激減するように実感しています。

ですから、「心の成長が遅れているから中学受験に向かない」というより、心の成長が早熟な子が、中学受験に向いているという見方が適切でしょう。例えば、お母さんお父さんに気遣いながら会話ができるような大人びた子は、国語での繊細な感情の機微を読み取る問題にも強く、中学受験に有利な傾向があります。

中学受験の適性その2:競争をゲーム感覚で楽しめる「競争適性」

――精神的な成熟度以外の点で、中学受験に向く、向かないという判断基準はありますか?

東田さん 先ほどから申し上げているとおり、中学受験は過酷な競争社会。その強いプレッシャーに耐えられる競争適性も、中学受験に参加するうえで不可欠です。

例えば、首都圏のとある塾では、成績がクラスのみならず座席順にまで影響を及ぼすシステムを導入しています。そんな大人でも耐え難いプレッシャーのある環境をゲームのように楽しめる子、負けん気が強く、たとえ結果がふるわなくてもへこたれず、むしろ「なにくそ」とバネにできる子は中学受験向きです。

一方、おそらくこちらのほうが多数派だと思いますが、成績の上下を深刻に受け止めすぎる子は、中学受験が成長のきっかけになるというメリットより、自己肯定感を損なうリスクのほうが大きいかもしれません。

もちろん、こうした競争適性も、中学入学以降、学校行事や部活動など様々なイベントを通じてじっくり育つものですので、中学受験の段階で十分に備わっていなくても、焦ったり気に病んだりする必要は全くないと思います。

中学受験の適性その3:夜更かしが苦にならない「身体的成長」

東田さん 身体的な成長も中学受験の適性にかなり影響すると思っています。ひとつの目安となるのは、その子の就寝時間。実は体内時計は年齢と共に変化し、子どものうちは前倒しの朝型に設定されていて、思春期に入ると徐々に後ろにずれて夜型になると言われているのです。

小学校高学年のうちからすでに体内時計が夜型に移行している子であれば、塾通いも体力的に負担になりにくいかと思いますが、通常の子どもの体内時計的には、夜21時頃に眠くなるのがごく自然。塾からの帰宅が21時を回り、就寝するのは23時や日付が変わる頃というタイムスケジュールはかなり無茶を強いていることになります。

子どもが塾の授業に集中できないのであれば、本人の努力不足ではなく、単純に体の成長が中学受験のスタイルに合っていないせいという可能性もあるでしょう。

実は子どもの適性以上に重要なのは親の「感情コントロール力」!

東田さん もうひとつ、中学受験において、子ども自身の適性と同じか、もしくはそれ以上に影響が大きいのは、親の適性。なかでも、私が最も重要だと考えるのは「感情コントロール力」です。

中学受験の伴走をしていると、子どもが宿題をやらなかったり、何度も同じ問題を間違えたり、勉強で手抜きやズルをしようとしたりと、子どものダメな部分が次々と露呈してしまう。すると、「なんでうちの子、こんなにできないのかしら」と感情的になってついつい子どもの人格否定につながるような言葉を発したり、あるいは口には出さなくても不機嫌オーラ全開になったりしがちなんですね。

東田さん もちろん、親として子どものことが心配なのは至極当たり前で、いろいろ口出ししてしまうのは責められることではありません。ただ、親がその時々の感情に振り回されると、ちょっとした発言やふとした瞬間の表情が子どもにとってトラウマとなってしまうことは往々にしてあります。実際、成人した教え子から「中学受験をしたときに、母親に言われたあのひと言は今でも忘れられない」という恨み節を聞くこともあります。

「よかれ」と思っての中学受験で、親子の愛着関係や信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があるのです。子ども以上に親こそが、模試の成績に一喜一憂しないスルースキルや、どんな結果であっても受け止める覚悟を備えてほしいと思います。

中学受験vs習い事…優先すべきなのはどっち?

――中学受験に関しては、親心とは裏腹に、子どもは乗り気じゃないというケースもよく見られます。例えば、「習い事を続けたいから、中学受験はしたくない!」と子どもが言う場合、意見を尊重したほうがいいのでしょうか?

東田さん 子どもが夢中になっている習い事があるのであれば、基本的には6年生の最後まで続けさせて高校受験に挑戦したほうがよいかと思います。というのも、9歳から12歳は、一生のうちで最も神経が発達しやすい「ゴールデンエイジ」といわれており、この期間に習い事などに打ち込むと伸びるというのが、世界的な考え方です。

とくにスポーツの習い事は、小学校卒業までをひとつの区切りとして設計されているものが多く、6年生は、いわば集大成の1年。都内のスポーツ指導者から、最上級生でなければ経験できないことも多いのに、いちばん学びのある時期に中学受験組がやめてしまうのは非常にもったいない、という話を聞いたことがあります。

中学受験と習い事が衝突する場合、子どもの熱意しだいでは習い事を優先したほうがよいということもあると思います。

中学受験vs地元の友達…優先すべきなのはどっち?

――では、「仲のいい友達と一緒に公立中学に進学したいから中学受験はしたくない」という理由はいかがでしょうか?

東田さん 私の個人的な意見としては、 「友達と一緒がいいから公立中学」というのも、中学受験をあえてしないれっきとした理由。地元の友達と仲良くできるのは、その子の個性や能力だといえますし、このタイプの子は高校受験に最も適したタイプかもしれません。

小中学の9年間、同じ仲間と共に成長していくというかけがえのない経験を、親の意向で奪ってしまうより、その子の意見を尊重して高校受験に挑戦させたほうがいいのではないでしょうか。

子どもの意向を無視した中学受験が深刻な影響を及ぼすことも…

――ただ、本人の適性がありそうで、親も子どもの頑張りを全力でサポートする意欲がある場合、やはり子どもの一存で中学受験という選択肢をなしにするのはもったいない気もするのですが…。

東田さん おそらく親としては、いろんな情報を持っていて、それに基づいて「中学受験させたい!」と思っているわけですよね。その場合、まず塾の体験授業を受けさせたり、中学の見学会に親子で参加したりするのはよいかと思います。百聞は一見にしかずで、実際に触れることで「意外と面白いかも」と子どもが興味を示す可能性はありますので。

――それでも子どもの心が動かなかったら、子どもの意思を尊重したほうがよいのでしょうか?

東田さん そうですね。基本的には、子どもの意向を無視して中学受験を強行するのはあまりおすすめできません。というのも、親が「何がなんでも中学受験」という勢いで子どもの進路を選択してしまうと、その後の人生において子どもがどこか他責的というか、物事がうまくいかないことを何でも親にせいにしてしまいがちです。

例えば、中学受験から数年を経た大学受験、ましてやその先の就職活動となるともう完全に自己責任の世界のはずですが、親から無理やり中学受験に誘導された子は、そのときの経験が尾を引いて「何もかもうまくいかないのは親が自分の人生のレールを敷いてしまったからだ」という発想になってしまうおそれがあります。

――たしかに、中学受験の時点で「こうしなさい!」と誘導した親が、その後「あなたの自己責任でしょ」と言い放つのは子どもにとって理不尽かも…。

東田さん 中学受験へと舵を切ったあとも、やはり本人に合っていなさそうだったり、家の中が過剰にギスギスしたりする場合、撤退する勇気も必要です。小学6年生の夏くらいであれば、多少無理してでもそのまま突き進んんだほうがよいですが、それ以前であれば、進路変更してもよいかと思います。

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お話を伺って、「何がなんでも中学受験」と決め打ちするのではなく、視野を広くもって親子にとっての最適解を模索していくことが重要なのだと感じました中学受験はあくまで選択肢のひとつ。親は子どもの可能性が広がるようになるべく情報は与えたほうがいいけれど、「子どもの人生は子どものもの」と割り切って、最終的な判断は子どもに委ねるべきかもしれません。

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お話を聞いたのは…

東田高志さん(東京高校受験主義) 教育系インフルエンサー

Xで5万人超のフォロワーのいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20年以上のキャリアを持つ塾講師。学校と塾の変化を見続け、現場を知り尽くし、小学生~中学生の指導に従事。著書に『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)がある。

取材・文/中田綾美

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