小学生で起業した16歳社長の水野舞さん。耳につけないイヤリングで特許を取得。「子どもたちに人と違う道でもいいと伝えたい」

子どもが“可能性の種”を見つけて、いずれは自分らしく花開いてほしいーー。多くの親御さんが願うことですが、その難しいこと!今回お話を伺ったのは、若干16歳にして会社の代表取締役社長を務める水野 舞さんと、お父様の水野 敬さんです。舞さんは、8歳のときに発明したオリジナルアクセサリー「マイヤリング®」で、11歳のときに国内特許を取得しました。12歳で株式会社マイヤリングスを立ち上げ、現在は高校1年生。社長業と学業を両立しながら、講演会や特別授業、ワークショップ、ポップアップストアなどで、全国各地を飛び回っています。舞さんが「マイヤリング®」でビジネスを起こすに至ったきっかけとは?また、お父様である敬さんは、どのような子育てを心がけていらっしゃるのでしょうか?

おしゃれへの憧れから生まれた「マイヤリング®」

――舞さんは、小さな頃はどのようなお子さんでしたか?

水野 敬さん(以下、敬さん):舞さんは、先天性胆道閉鎖症という病気をもって生まれました。すぐに熱が出てしまい、発熱すると入院をして水も飲めず絶食になる。それが本当にかわいそうで。ウイルス性の感染症などにはつねに気を遣っていましたね。

成長とともに肝臓の状態が厳しくなったことと、社会的な生活も必要と考え、4歳のときに母親をドナーとする部分生体肝移植を受けました。

――舞さんは、幼い頃の入院生活を覚えていますか?

水野 舞さん(以下、舞さん):はい。長い間、入院していたのですが、病院の中で楽しいことを見つけるのはすごく大変だったことを覚えています。やはり治療が最優先ですので、楽しいことよりも、苦しいことやつらいことの方が多いんです。

そんな入院中に唯一できた楽しいことが、ものを作ること。だから自然ともの作りが好きになったように思います。病室でマスキングテープを紙にペタペタと貼って遊んでいましたね。

――もの作りが楽しみだったんですね。マイヤリング®は8歳のときに発明したそうですが、どのように発想したのですか?

舞さん:母がつけていた揺れるピアスへの憧れがきっかけです。もともと幼稚園の頃からおしゃれにすごく興味があったのですが、母のピアスを見て、これは一体なんだろう? と。

ユラユラ揺れて、きらんと光って、すごくおしゃれ。私もつけてみたいと思ったのですが、ピアスは耳に穴を空けなければいけません。かといって、イヤリングはつけているうちに耳たぶが痛くなってしまう。

小さなお子さんでもピアスをしている方もいますが、両親からは「大人になってからね」と言われました。この頃の私にとって、大人になるのはずいぶん先のこと。今すぐにおしゃれをしたかったので、思いつくままに、毛糸やストローなどの家にあった材料で「マイヤリング®」を作りました。

小学2年生の頃、ストローや毛糸を使って作ったマイヤリング®。

――マイヤリング®の仕組みは、ぱっちんタイプのヘアピンに揺れるパーツをつけて、耳の後ろの髪の毛に留めるという形です。最初に作ったものが、ほぼ完成形であることに驚きました。

舞さん:確かにそうですね。特許を取るとなってから、最初はヘアピンに糸をぐるぐる巻きにしてくっつけていたパーツを、このままでは商品化できないと、ヘアピンに穴を空けてつけるように改良しました。

――特許取得がきっかけで、より精度が上がったんですね。マイヤリング®が生まれたきっかけは、ともすると見落としてしまいがちな日常のワンシーンです。お父様は、どのようにして「これは発明だ」と気付かれたのですか?

敬さん:私の仕事は研究で、子どもの脳の発達研究も行っているのですが、子ども一人ひとりが持っている人格や個性を尊重することがとても大切だと考えています。

マイヤリング®は、舞さんの遊びの中から生まれた、母親への憧れをかたちにしたものです。子どもの人格や個性を尊重しないと「(子どもが)何か“訳の分からんこと”を言ってるな」と見落としてしまう可能性はありました。しかし“訳の分からんこと”の中にも、彼ららしさがあることを忘れてはならないと思います。

子ども扱いしないことも大事です。私は舞さんのことを所有物のようには考えず、「うちの子」とも言いません。叱るときは「まい!!」ですが(笑)、ふだんは「舞さん」と呼んでいます。

舞さんの場合、肝臓を移植しないと命に関わる病でしたので、まずは生きていることだけで本当にありがたい。ですから、舞さんが思ったことを自分なりに貫いて、それを楽しんでもらえたらという想いが根底にあります。

聞かれたらアドバイスをしますが、自分自身が考えて行うことを応援するのが基本。あまり口出しもしないで、自分で決断をするということを大切にしています。

現在のマイヤリング®。

命がけの金融教育!? 「国内特許」を取得した理由

――2021年、舞さんが11歳のときにマイヤリング®は国内特許を取得しています。特許取得はとても難しく、お金もかかるイメージですが、なぜ取得しようと思ったのですか?

舞さん:初めてマイヤリング®を作ったときに遡るのですが、できたものを両親に披露したら、母は「すごいね」と褒めてくれて。父は驚くと同時に「これは発明だ」と言ってくれました。

そこから2年ほど作ることはなかったのですが、2020年にコロナ禍になり、家族で過ごす時間が増えました。すると「そういえば、昔作っていたアクセサリーってどうなっている?」という会話が自然と生まれて、じゃあ、もう一度やってみるかと。そのときに父から特許を取得しようと提案されたんです。

――お父様からの提案だったのですね。そして、特許取得に合わせて「マイヤリング®」と名付けたと。

舞さん:はい。父と一緒に考えました。私の名前「舞(マイ)」と、“私にとってのイヤリング”という意味を込めた「My(マイ)」を掛け合わせた造語です。

――印象に残る、すてきな名前です。しかし特許は、大人や企業が開発したもので取るイメージがあります。お父様は、なぜ子どものアイディアで取ろうという考えに至ったのですか?

敬さん:私は仕事柄、特許を取得する機会もあるのですが、意匠や商標なども含む“知的財産”の中で、最も申請から受理までが難しいのは特許なんです。アイディアについて知的財産を取ろうと思うと、ほかにも実用新案という、特許に比べると比較的簡単に受理されるものもありますが、権利の実効性は日本では極めて弱い。ですので、最初から特許取得を提案しました。

舞さんのアイディアを「発明」として守りたかっただけでなく、特許を取得すれば、知的財産として世界に届けられる可能性がある。こういう方法論があるということを、舞さんはもちろん、マイヤリング®を通して多くのお子さんや保護者の皆さんに知ってもらいたいという想いもありました。

ヘアピンを使っているので、髪の毛だけでなく帽子につけることもできる。

――取得は、とても難しかったですよね?

舞さん:それはもう……(笑)。まるで留学で言語の分からない環境に放り込まれたように、言葉を理解するところから非常に苦労しました。そのうえ、膨大な書類を読まねばなりません。

さらに、300円で遠足のおやつがいくつ買えるかという金銭感覚しかなかった小学生が、特許取得のために何十万円ものお金が必要になりました。父が代わりに払ってくれて、「マイヤリング®で稼いで返しなさい」と言ってくれたのですが、わが家では「命がけの金融教育」と呼んでいます(笑)。

敬さん:水野家としては少々無理をしてお金を投じていますから、舞さんにも「いくらかかっていますからね」と包み隠さず伝えています。お子さんの発明で特許取得することは、金融教育にも、知的財産教育にも、キャリア教育にもなりますよ。

子どもだけど、「子どもだから」では通用しない社長業

――さらに小学生で会社も起こされています。これは最初から考えていたことですか?

舞さん:いえいえ! 国内特許が取得できたので、せっかくなら事業展開したいねと、いろいろな方にご相談しました。当時は小学生で起業するという概念はなく、すでにある会社の方にお願いしてマイヤリング®を販売していただこうと思っていたんです。

ところがご相談した経営者のお一人に、「舞ちゃんが自分で会社をやったら?」と言っていただいて……。えっ? 私が? と不安もありつつ、ちょっと面白そうだなと思ったんです。そのときの夢は建築士で、経営者になるなんて想像したこともなかったのですが、経験としていいかもしれないと感じました。

もう一つのきっかけは、中学受験です。受験勉強をしていたものの、私は勉強が苦手で。会社を作って、自分で稼ぐことができたら、勉強しなくても生きていけるのでは? という、ちょっと悪い考えが浮かびました(笑)。その後、中学受験は失敗しちゃったんですけれど。別の中学校に進んで、今では高校生です。

ーー起業も親御さんのサポートがあったのでしょうか?

舞さん:はい。まず14歳以下は印鑑証明を作ることができず、法人登記することはできません。そこで両親がサポートしてくれて、母は役員に入ってもらっています。

家族旅行でのお写真。舞さんの活動を一番に応援しているご両親とともに。

ーー小学生で起業して、感じたことや印象に残っていることはありますか?

舞さん:会社を作って1年ぐらい経った頃には、とんでもないところに足を踏み入れてしまったと感じました。私はもともと話をするのが好きなのですが、いくらしっかり話ができても、まだまだ子ども。でも、ビジネスで甘えは許されません。

マイヤリング®の制作以外にも、請求書や企画書、プレゼンテーション資料の作成、できあがったマイヤリング®の検品作業など、いろいろな業務を行っていますが、これは想像以上だと思いましたね。

でも、うれしいこともありました。2023年8月からクラウドファンディングで支援を募集し、入院している子どもたちにマイヤリング®を届けるプロジェクトを行いました。クラウドファンディングでは多くのご支援をいただき、2023年12月、順天堂大学の小児医療センターに入院する子どもたちへマイヤリング®を届けることができたんです。

マイヤリング®をつけた子どもたちの笑顔が、まるでお花が咲いたみたいにキラキラしていて。入院生活では楽しいことを見つけるのは難しいのですが、「病院の中でもおしゃれをしたい」という幼い頃の自分の夢も叶えられたような気分でした。

クラウドファンディングのページ。小児病棟の子どもたちにマイヤリング®を届けることができた。

子どもたちのアイディアを世界に発信する取り組みに力を入れたい

――今いちばんやりがいを感じていることを教えてください。

舞さん:近頃はいろいろなところでお話をさせていただく機会が増えてきました。小中学生など年下のお子さんだけではなく、高校生や大学生相手にお話をすることもありますし、取材を受ける機会もあります。

そのすべてで、相手に合わせたプレゼンテーション資料を作成することが私なりのこだわりで、いちばん時間をかけている仕事の一つです。毎回まったく違う資料を持って行き、話し方も変えています。その場でしか聞けないような話をしたいんです。

講演会ごとに、聴いてくれる方に合わせた話をしているのだそう。

――毎回新しい資料を作るのは、なかなか大変で、難しいことだと思います。お父様から見た様子はいかがですか?

敬さん:舞さんはプレゼンや講演が終わった後に「今日はだめだった」というふうに、自分で内省しています。

人前で喋るのは大人でも緊張しますので、疲れて振り返るどころじゃないと思うんですが。周りがどのように反応していたか、楽しませるにはどうすればいいのか、好きなものに対するサービス精神や探求心が非常に旺盛だと思います。

――大変でも、そこにこだわる想いを聞かせてください。

舞さん:私は幼い頃に闘病生活を送っていたことで、幼稚園にあまり通えなかったり、スイミングなどの習い事ができなかったり、進学についてもいわゆる一般的な流れから少しずつはみ出しながら生きています。

そんな私がマイヤリング®と一緒にメッセージを伝えることで、「次世代の子ども」と言われる、小中学生の皆さんが、「私も自分の好きなことをやってみようかな」とか、「人と違う道を歩んでも大丈夫なんだな」というふうに思ってもらえたらうれしいからです。

さらに、特許を取得したり、ひょっとしたら……会社を作ってくれたりしたら、もっとうれしい。私の話が、誰かが勇気を出すきっかけとして、少しでもお役に立てればと考えています。

普段は高校生として学生生活を送っている舞さん。好きなマンガは『名探偵コナン』。

――最後に、今後の展望も聞かせてください。

舞さん:私たちの事業の一つに、“子どものひらめき”を発明・知的財産・ビジネスのタネとして育てて形にする教育活動の「i育(あいいく)」があります。

子どもが課題を見つけて、解決策を考える。私の場合は、ピアスがつけられないという課題をマイヤリング®で解決しました。アイディアを形にする喜びや、誰かに伝えたときの感動は、その人にしか分からないものがあります。私の場合は形にし、行動する中で、さまざまな経営者やビジネスをともにする方と出会えて、すごくラッキーだと思っているんです。そしてこの経験を、独り占めするのではなく、多くのお子さんにも経験していただきたい。

日本は資源がない国といわれていますが、一人ひとりのアイディアは素晴らしい資源になります。だからこそ、次世代のお子さんたちのアイディアをたくさん出して、一つでも多く世の中に出していく「i育」を、もっともっと広げていきたいと考えています。

お話を聞いたのは

水野舞 株式会社マイヤリングス代表取締役社長

小学2年生の頃、母のピアスに憧れ、ヘアピンに装飾具を通してピアスやイヤリングのように魅せられるアクセサリーを発明。 「マイヤリング®」と名付け、小学5年生だった2022年1月に日本の特許を取得。その後、商品化をするため、小学6年生の頃に株式会社マイヤリングスを設立した。大手企業からコラボレーションの依頼も来ている。現在高校1年生。

この記事を書いたのは

ニイミユカ 編集者・ライター

朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。

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