定規だけで描く「ルーラーアート」で人気! ヘラルボニー契約アーティスト・高校生画家の柳生千裕さん。支援学級と通常学校での学びと「得意」の伸ばし方

軽くやわらかな布製ランドセルブランド「NuLAND®(ニューランド)」が、子どもの就学先や現在の就学環境に悩む保護者を対象に、「第4回 就学先情報交換会」を開催しました。ゲストは、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を幼少期にうけた高校生画家・柳生千裕(やぎゅう ちひろ)さんと、父・尚央(ひさお)さん。定規を使って色鮮やかな作品を描く「ルーラーアート」で話題の千裕さんは、小学校時代は支援学級と通常級の両方で学んでいました。今回はお2人に、学校での経験や絵を描き始めたきっかけ、先生と家族の支え、将来の夢について話を聞きました。

就学環境に悩む保護者が経験や情報を共有

NuLAND®は、社会貢献活動の一環として、2023年から就学に関する相談・情報交換の場を設けています。きっかけは、発売当初から、特別な支援を必要とする子どもたちにもランドセルを使ってもらっていたこと。保護者の悩みに寄り添いたいという思いから、取り組みが始まりました。

今回は、通常級と支援学級の選択や、現在の学習環境に悩む保護者に向け、相談支援員や元小学校教諭らに相談できる場として「就学先情報交換会」を開催。この会は、同じような悩みを持つ保護者同士が、経験や情報を共有できる機会にもなっています。

第4回のゲストとして登壇した高校生画家の柳生千裕さんは、定規を駆使して絵を描くことで注目のヘラルボニー契約アーティストです。NuLAND®とはランドセルカバーのデザインでコラボレーション。定規を使って描いた色鮮やかな動物の作品が、カバーのデザインに採用されています。会場では、千裕さんによる作品制作の実演も行われ、参加した親子は千裕さんの線画に色を塗る体験も楽しみました。

カバーに自身の作品がデザインされたランドセルをもつ柳生千裕さん

現在は勉強と創作活動を両立して頑張っている千裕さんと、ずっと側で応援して才能が開花する機会を与えた父の尚央さんに、小学校時代から現在に至るまでの経験談を語っていただきました。

通常級と支援学級、両方で始まった小学校生活

尚央さん:千裕は保育所に通っていた頃、先生から「発達に特性があるのではないか」と言われ、診断を受けました。大人とは普通に話せる一方、同年代の子どもとのコミュニケーションは苦手だったんです。小学校への入学にあたり、私は最初、通常級でもよいのではないかと考えていました。

ただ、医療関係の仕事をしている妻が詳しく調べる中で、支援学級も検討しようという話になり、自治体にも相談した上で、通常級と支援学級の両方で学ぶことに決めました。

小学校低学年の頃までは、作業療法(OT)にも通っていました。体を動かすことや手先を使うことが苦手だったので、ブランコやバランス運動などに取り組んでいました。

千裕さんと父の尚央さん

千裕さん:通常級と支援学級を行き来することに、違和感はありませんでした。小学1年生からずっとそうしていたからだと思います。支援学級でも先生が授業をしてくれましたし、国語や算数のテストを受けることもありました。両方の学級で学ぶ中で、通常級の勉強についていけないと感じることはありませんでした。

支援学級の先生との出会いが、絵の才能を伸ばすきっかけに

尚央さん:支援学級の先生から、「千裕くんがこんな絵を描いています」と、絵のコピーをいただきました。そこには、たくさんの棒人間が描かれていました。千裕がそんな絵を描いているとは知らなかったので、「すごいな」と思いました。得意なことを伸ばしてあげたいと考え、もう少し本格的に描いてみることを勧めました。

当時の千裕は筆圧が弱く、色鉛筆で濃く塗ることが苦手でした。私が芸術大学時代に使っていたコピックなら、軽い力でも色が付くので、千裕にも使いやすいのではないかと思い、プレゼントしました。それまでは白黒の棒人間を中心に描いていたのですが、コピックを使うようになってから、色鮮やかな絵を描くようになりました。

小学校低学年の頃に描いていた棒人間の絵

尚央さん:支援学級の先生は、教室に展示コーナーを作り、千裕の作品のコピーを飾ってくれました。それを見た同級生が、絵について声をかけてくれることもありました。自分の絵を見てもらえたことは、千裕の自信につながったと思います。

先生は今でも個展などに足を運んでくださる、大切な恩師です。先生がいなかったら、千裕は絵を描いていなかったかもしれません。

10歳で世界規模のコンテストに挑戦

9歳の頃からコピックを使って本格的に作品を制作するようになった千裕さん。尚央さんは、その独自の色彩や表現に可能性を感じ、年齢を問わず応募できる世界規模のコンテスト「コピックアワード2019」への挑戦を勧めました。

第2回コピックアワード 次世代アーティスト賞グランプリを受賞

作者の年齢や国籍を伏せて行われた審査で、作品「サンゴの海でかくれんぼ」が次世代アーティスト賞グランプリを受賞。千裕さんは当時10歳でした。副賞としてコピック全358色のセットを贈られたことで、作品の色彩はさらに広がっていきました。

千裕さんの作品がプリントされたバッグ

小学校高学年の頃からは、ヘラルボニーの契約作家としても活動。作品が商品や様々な場所を彩るなど、活躍の場を広げています。

ゴールを決めず、思いつきを重ねて描く「ルーラーアート」

千裕さんが定規を使って描くようになったきっかけは、沖縄の首里城の作品でした。建物の直線を表現するために定規を使い、そこから定規で描く楽しさに目覚めたといいます。

千裕さん:ゴールから逆算しているわけではなく、その都度の思いつきの連続で描いています。楽しく描けたらいいなと思っています。

作品の制作期間は、1点につき1~2か月ほど。大型作品の中には、完成まで1年8か月かかったものもあります。最近はデジタルで色を付けたり、重ね塗りのできるポスカを使ったりと、新しい画材や表現にも挑戦しています。

「ルーラーアート」を始めるきっかけとなった、首里城を描いた作品

小学5年生で通常級へ。家族と先生で話し合った進学への準備

尚央さん:小学5年生になる頃、私と妻、学校の先生で話し合いました。勉強にはある程度ついていけていましたし、友だちとの間に大きなトラブルもありませんでした。中学校や高校への進学も考え、少しずつ通常級に慣れていくことにしました。絵を描くことが千裕の自信につながっていたことも、大きかったと思います。

千裕さん:通常級に移ることに、とくに不安はありませんでした。移ったあとも、時々支援学級の先生に会いに行っていました。

中学校には同じ小学校から進学する人が多かったので、大きな不安はありませんでした。ただ、制服の締め付けや、肌に触れる素材は少し苦手でした。理科の実験など、みんなで一緒に取り組むことを難しいと感じることもありました。ただ勉強すること自体は好きで、自宅や学校で学習を続けてきました。

絵と勉強を両立。高校2年で英検準1級にも合格!

現在、高校3年生の千裕さんは、学業と創作活動を両立させながら今年英検準1級にも挑戦し、見事合格! 普段は、どのような生活を送っているのでしょうか。

千裕さん:学校の授業が終わった後は、教室や図書室に残って数学や英語を勉強しています。帰宅後は、絵を描いたり小説を読んだりして過ごしています。

英語を始めたのは中学生になってからです。最初はそれほど好きではなかったのですが、中学2年生のときに英検4級に合格して、勉強する楽しさを知りました。

高校1年生で準2級、2025年12月には2級に合格しました。その勢いで勉強を続け、約3か月後の2026年3月には準1級に合格することができました。

勉強は、単語帳や過去問を使ってほぼ独学で進めました。準1級の受験前は、絵や学校の課題に取り組みながら、毎日英語を勉強していました。

英検準1級の合格証書を手に、笑顔を見せる千裕さん

尚央さん:私は勉強を教えられないので、本人が「やりたい」と言ったら、参考書など必要なものをすぐに用意する。それくらいです。

大学へ進学して、一人暮らしをしたい。新たな表現に興味も!

高校卒業後は芸術系の大学への進学をめざしている千裕さん。絵画だけでなく、現代アートや立体作品など、これまでとは異なる表現にも関心を広げています。

千裕さん:大学へ進学して、一人暮らしをしたいです。海外へ行ける機会があれば挑戦してみたいですし、自分の作品について、英語を使って自分の言葉で話したいです。

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小学生の頃から創作活動で得た収入は、千裕さん自身のお金として大切にしてきたそう。尚央さんは、その収入を大学進学の費用に充てる予定だといいます。

絵を描く「得意」を育みながら、学びたいことや挑戦したいことを広げてきた千裕さん。これからどんな作品や表現を生み出していくのか、楽しみですね。

お話を伺ったのは

柳生千裕 アーティスト

2008年生まれ、兵庫県在住。幼少期に自閉スペクトラム症(ASD)と診断される。定規を使い、カラフルな色彩と幾何学模様で生き物などを描く「ルーラーアート」を制作。10歳だった2019年に「コピックアワード2019」で、作品「サンゴの海でかくれんぼ」が次世代アーティスト賞グランプリを受賞。現在はヘラルボニーの契約作家として、学業と創作活動を両立させている。

この記事を書いたのは

やまさきけいこ ライター

美容師として働いた後、子育てをきっかけにWEBライターとして活動をスタート。現在は親子向けWEBメディアを中心に、子育て・教育・ライフスタイル分野の記事を執筆している。親子イベントや商品レビュー、専門家インタビューのほか、映画や配信作品のレビュー記事も手がける。

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