「公立中高一貫校」の適性検査って?親のサポートも必須?入学選抜のしくみと対策【中学受験】

前回「地元の公立中、私立中と何が違うの? 公立中高一貫校ってどんなところ?」では、公立中高一貫校の特色や地元公立中学、私立中学との違いについてお伝えしました。今回は公立中高一貫校の入学選抜について説明します。近年ますます難しくなってきた適性検査の対策はどうすればいいのでしょうか。引き続き公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんに聞きました。

地元の公立中や、私立中とはまた異なる「公立中高一貫校」。前編では公立中高一貫校の特徴を紹介しました。>>前編はこちら

教科の枠を超えた「適性検査」は難問ばかり!

公立中高一貫校の合格者は、「適性検査」「作文」「報告書」で決められます(学校によってはさらに「面接」があるところもあります)。とくに「適性検査」は私立中の入試とはかなり違いますし難易度も高いので、特化した対策が必要です。

 「適性検査」は教科の枠を超えて、文章や図・グラフなどの資料をもとにして問題の解決策を導く力、自分の考えを文章で書く力などの高い能力が求められます。国算理社といった教科ごとに知識や考える力を試す私立校の入試と大きく異なるところです。

グラフや資料を読み取る力が必要

「よく公立中高一貫校の適性検査は科目横断型といわれますが、社会の問題のように見えて算数の考え方や計算力が必要となる問題や、理科の知識をもとに国語の文章構成力が問われる問題など、‶教科の境目がない〟のが特徴です。音楽や家庭科の授業で習った内容をもとにした資料が出されることもあります。公立なので出題範囲は教科書の範囲内と決められてはいるものの、問題の文章自体は一般書や新書から抜粋されていることも多く、大人でも読みごたえがあるほど。小学校での成績がいくらよくても、かなりの対策をして慣れておかないと合格点をとるのは非常に難しいというのが現状です」とケイティさんは指摘します。

一つの正解を求めるよりも、考えるプロセスを重視する

適性検査では、例えば社会問題や環境問題など実際の問題に関するデータ(図やグラフなど)と長文による説明を資料として「正しく読んで理解」したうえで、今後の展開を予想したり、自分ならどう考えるかなど「論理的に考え、自分の言葉で書く」という記述問題がほとんどです。一問一答形式ではないし、答えも一つとは限らないものが多く、正解を求めるというより、考えるプロセスを重視している問題が多く出されます。

「初めて問題を見る大人は、まずその問題文の資料の量や複雑さ、内容の難しさに驚くと思います。それを1112歳の子どもが制限時間内に解くことが求められるのですから、相当の対策が必要なことがわかると思います」(ケイティさん)

「そうはいっても公立なのだから、塾に行かなくても大丈夫なのでは?」と考える親御さんもいるようですが、現状の難易度の高さを考えたら、自宅で独学というのはかなり難しいようです。

「今は公立中高一貫校対策をメインにする塾も増えています。受検対策だけでなく、学校情報も効率よく集められるので、そのような塾に行くのはできる限りマストだと思います」とケイティさんは続けます。

「作文」「報告書」も公立中高一貫校入試の特色

「作文」では、学校が求める生徒像も意識。自分と向き合って記述

作文では与えられた文章を読み、それに関する課題について、筆者の意見をまとめたり、自分の経験をもとにして持っている知識を総動員させて考えをまとめ、400600字程度で書かせる学校が多いようです。

「誤字脱字をしないことや、句読点、改行などの作文のルール、ていねいな字を書くといった技術も大事ですが、その前に作文を書くという一連の作業に慣れておくことがとても大事ですね」とケイティさん。

公立中高一貫校入試対策では、作文の練習が欠かせない

そのうえで作文の内容、構成力や表現力も問われます。

「‶学校が求める生徒像〟を理解して作文に反映させることも大事です。そのようなことを考えて作文の練習をすると、自分はどう考え、何を伝えたいのかと自問自答し、いやがおうにも自分と向き合うことになります。大変ですが、そういった対策をしっかりしている子は、自分を客観的に見ることができて自立している子が多いと感じます」(ケイティさん)

「報告書」は学校の先生に書いてもらうもの

報告書は小学校が作成するもので、通知表をもとに教科の評定や学校内での活動や様子、出欠の記録が書かれているものです。5、6年次の2年間の成績や活動が対象だったり、6年生の1年間が対象だったりと、報告書評価の仕方や総合点の対する割合は公立中高一貫校によって違います。願書提出日までに担任の先生にお願いして書いてもらい、願書といっしょに受検者が提出します。

「報告書のためにというと打算的に聞こえるかもしれませんが、成績だけでなく、委員会や学校行事にも積極的に活動するほうが報告書の評価も上がります。受検する・しないに関わらず、親は日ごろから子どもの学校での活動を応援し、担任の先生とは親子ともに良好な信頼関係を築くことが大切ですね」(ケイティさん)

公立中高一貫校の受検に向いている子は?

それでは、公立中高一貫校に向いている子はどんな子なのでしょう?前編では「勉強が好きな子」には素晴らしい環境ということをお伝えしました。その上で、適性検査・作文・報告書(学校によっては面接も)と特徴的な受検に適している子は?

「学校のテストでは4教科まんべんなくできていることが基本。そして日々の学習でも‶どうしてそうなるのだろう〟と深く考えたり、‶もっと知りたい〟と掘り下げて調べたりする姿勢が身についている子、自分の答えが間違っていたときにその理由を理解できるまで粘れる子は向いていると思います」とケイティさんはいいます。

子どもの「もっと知りたい」という気持ちに目を向けて

また公立中高一貫校に限ったことではないですが、ある程度自分を律することができるくらいに成熟している子は受検向きといえるでしょう。ゲームやテレビなどの娯楽をセーブできる、受検する意味を自分なりに理解している子は親との衝突も少ないようです。

 親は日ごろから子どもと「考える」習慣をつけ、メンタル面のサポートも

子どもの疑問を深める会話を。子ども新聞を利用するのも効果的

適性検査や作文では、子どもの「地頭の良さ」が試されるともいえます。ですから、親は子どもが低学年のときから意識して、子どもと考える習慣を作っておくといいでしょう。

ケイティさんは「公立中高一貫校の本格的な対策については受検日の500日前から、つまり5年生の秋くらいからでいいと思います。ただ、その時期にまったくの白紙状態では合格はかなり厳しいです。学校の教科書の内容はしっかり理解できていて、それ以上の知識や探究心・好奇心が旺盛であるといった素地ができていることが大切ですね」と言います。

例えばニュースを見たら、親が子どもに「この問題、どう思う?」と聞くのも効果的。「いいと思う」「おもしろい」で終わらせず、「どんなところがいいと思ったの?」「どうしておもしろいと思う?」などと質問を深めていけば、子どもはもっと考えようとするし、その過程で新たな疑問を見つけて調べるかもしれません。

気になる話題について子どもと会話する習慣をつけておくと◎

「家族みんなが新聞や子ども新聞などから気になる記事を1つ選んで持ち寄り、週末に紹介する」こともケイティさんは勧めます。家族がディスカッションを楽しめる雰囲気を作る、社会に対するアンテナを張っておくなど、親は「子どもが考える環境」を作ってあげられるといいですね。

メンタル面のサポートも親の大事な仕事

思考力を問う公立中高一貫校対策の学習は、暗記型メインの私立中の入試対策とは違い「努力した分、結果に表れる」とはならないことも多いのが現実。なので途中やる気がなくなったり、過度にナーバスになったりしたとき、親が上手にサポートしてあげることも大切です。また公立中高一貫校の受検倍率もとても高いので、合格できるのはほんの一握り。考えたくなくても不合格になる確率のほうがずっと高いので、子どもが一生懸命がんばった証明として、私立中を併願し合格体験を持つことをケイティさんは勧めます。

「最近は私立中でも適性検査型入試を行うところ、特待制度を設けていて合格者は授業料免除など費用が少なくてすむところもあります。‶なにがなんでも公立中高一貫に〟と選択肢を狭めずに、早いうちからたくさんの学校の情報を集めておくといいでしょう」(ケイティさん)

 

これからの時代、公立中高一貫校の入学選抜対策で身につく「思考力」「試行錯誤力」は生きる上でも大切。特殊な選抜の仕組みではありますが、挑戦することで親子ともに得られるものも多いでしょう。

こちらの記事では、公立中高一貫校の特徴について紹介しています!

「公立中高一貫校」は私立の中学受験とどこが違う?特徴は?公立中高一貫校合格アドバイザー・ケイティさんに聞いた基本のき
特徴①高校受験がないので、やりたいことに没頭できる余裕がある 公立中高一貫校とは、その名の通り、中高6年間一貫で過ごす公立校のことを指しま...

お話を伺ったのは

ケイティ | 公立中高一貫校アドバイザー

公立中高一貫校合格アドバイザー。大学在学中に大手進学塾講師として子どもたちに指導するなかで、中学受験で親子関係が壊れていくケースや、進学後に燃え尽きる子どもたちをたくさん見たことから、独立後も「合格をゴールにしない」をモットーにした指導やアドバイス徹し、人気に。適性検査対策の様々な情報を配信する「ケイティブログ 適性検査徹底攻略! 公立中高一貫校」を主宰。著書に『公立中高一貫校合格バイブル』など多数。

ケイティブログ 適性検査徹底攻略! 公立中高一貫校https://katy-tekiseikensa.net/

『公立中高一貫校合格バイブル』

実務教育出版(1,980円税込み)

文・構成/船木麻里

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