【2024年度中学受験体験記】入塾テスト落ちから父の伴走がスタート。娘が受験を自分事に変えた小6夏の悔し涙

2024年の今春、中学受験を終えたばかりのⅯちゃん(東京都在住/小6女子/4月から私立の共学校に進学予定)。中学受験に熱心に取り組んだ父娘を見守ったお母さんのYさん(東京在住)が、中学受験のきっかけから経緯、波乱の4日間(2月1日~4日)について、語ってくれました。

まさかの入塾テスト、連続落ち⁉そこから父のスイッチが入った!

本人の意思でスタートするも入塾テストで…

―中学受験を決めたきっかけを教えてください。

首都圏ではありませんが、夫も私も中学受験を経験しています。それに、今住んでいるのは、公立小学校のクラスの半分くらいが中学受験をする地域です。それで、娘も自然に中学受験を意識するようになったようです。娘の意思を確認したところ、「中学受験したい」と言うので、塾に行くことになりました。

―塾に行き始めた時期はいつ頃ですか。

いわゆる各塾で新4年生のコースが始まる小3の2月です。

―塾選びで意識したことはありますか。

それが、中学受験の大手塾の入塾テストにいくつか連続で落ちてしまったんです。まさか塾に落ちることがあるなんて…と、首都圏の競争の激しさにビックリしました。娘は小学校で落ちこぼれているわけでもなかったのに。とにかくショックでした。

―入塾テストも大変なようですね。4年生(3年生の2月スタート)からの入塾がスタンダートだと言われていましたが、最近は低学年からの入塾も増えているようです。公立小学校での勉強と中学受験のための勉強は、やはり別物のようですね。

そのようですね。結局、入塾テスト2回目で受かった大手塾に行くことになりました。

―お父さんの考えはいかがでしたか。

入塾につまずいている様子を見たとき、急に夫のスイッチが入ったようです。「ぜひ塾に行かせてあげないとね」と。

―お子さんはすぐに塾に馴染めましたか。

娘は友達がすぐできるタイプなので、塾はずっと楽しかったようです。8クラスのうち一番下のクラスからのスタートでしたが、本人は劣等感も感じず、楽しく通い始めました。

―宿題をこなすのは大変でしたか。

他の塾のことは分かりませんが、娘の塾は、宿題はそれほど多くなかったと思います。その代わり、通う日数が多く、4年生は週2回、小5で週3回 小6のときは週5回通塾していましたし、自習室も利用していました。とにかく、慣れるまでは通うだけで精いっぱいの感じでした。ただ、4年生の頃はコロナ禍の影響もまだありましたし、「もっと勉強しなさい」とは言わず、「とにかく元気に塾に行って、勉強しておいで」と送り出していました。

お父さんのサポートと勉強への姿勢

受験真っ只中の部屋の壁。貼ってあるポストイットは一度間違えた箇所。右上は父親からのメッセージ

学校説明会も成績もお父さんが全面サポート

―お父さんは、受験に積極的でしたか。

いくつかの入塾テストに落ちたことで、夫のスイッチが入って以来、すごく熱心に取り組んでくれました。我が家の場合、母親ではなく、父親が主導で受験に取り組む形でしたね。塾探しも、塾の説明会も学校説明会も、夫が積極的に行ってくれました。いろいろな学校の説明会に参加する夫から「今日、見てきた学校は良さそうだから、今度、ママも行ってみて」と見学を勧められたこともあります。

―勉強面でも、お父さんがサポートされたのですか。

はい、成績も夫がバッチリ把握していました。娘の塾では毎週テストがあるのですが、その結果の表やグラフを夫がプリントして、赤で印をつけて娘に見せていました。「平均点は〇点で、君はここのあたりだよ」と娘に状況を説明したり、A5の小さいノートを用意して、成績の推移をメモしたりしていました。

―お父さんの愛情がつまったラブレターのようですね。お子さんの反応はいかがでしたか?

娘のために頑張ってくれているんだろうけど、私から見ても「ちょっと重いのでは」という感じでしたから(笑)、娘もそのノートをちらっとは見るけれど、基本的にそっけない感じ。お父さんが熱心に書き込んでいても、読みもしないときもありました。

―成長の早い子は、そろそろ思春期の入り口に立っていますから、父娘の距離感って難しいですよね。最後までそんな感じでしたか?

それが、小6の夏ぐらいに娘の態度が変わったんです。「ありがとう」と口に出して感謝することはなかったけど、ノートを見ながら「パパ、こうかな?」と相談するようになりました。自分自身を客観視できるようになったというか、自分の成績と真面目に向き合うようになったのだと思います。

初めて悔し涙「上のクラスに上がりたい」

―何か変わるきっかけがあったのでしょうか。

娘は、一番下のクラスで入塾したのですが、少しずつ成績が伸びてきて、6年生の夏休みあたりは、下から3番目のクラスにいました。あるとき、模試でよい成績をとったのに、あと数点足りなくて、上のクラスに上がれなかったことがありました。そのとき、本人はよほど悔しかったのか、帰宅してからベッドにうつ伏せになって泣いていたんです。成績のことで泣くなんてそれまでなかったので、とてもびっくりしました。

―向上心が芽生えていたのですね。

そのようです。娘に気持ちを聞くと、「行けるなら上のクラスに行きたい」とはっきり言いました。その頃から、受験が自分事になったというか、スイッチが入って積極的に勉強するようになりました。それまでは、娘が自分の部屋で勉強しているときにドアを開けたら、急いで何かを隠した⁉…なんてこともあったのですが(笑)、そういうこともほとんどなくなりました。

夏以降も、クラスに一喜一憂せずコツコツ努力を続けた

―上のクラスには上がれましたか?

夏休み以降、クラス替えのチャンスは1回ありましたが、たった1回の模試の成績が良かったからといって、すぐに上のクラスに行けるわけではありません。成績の推移なども考慮されるので、結局、それ以上クラスは上がれませんでした。ただ、それでも娘は「自分のクラスでは断トツで一番でいたい」と頑張っていました。また、一つ上のクラスや二つ上のクラスの平均点なども意識していたようでした。

―秋からの伸び悩みはありませんでしたか。

夏に本人のスイッチが入って、結果が出始めたのが10月~11月あたり。もともと、一番下のクラスからのスタートだったので、教科によっては点数が下がることはあっても、全体的な偏差値が下がることはありませんでした。

―得意教科は何でしたか。

社会が得意で、本人も好きなので、放っておくと、社会ばかり勉強している状態(笑)。逆に、算数は苦手で、足を引っ張っていました。今、振り返ると、最後まで算数ができなかったのが良くなかったかなと思います。何しろ、みんなが得点を取れるような最初の計算問題も間違えてしまうので…。

社会がいちばん得意だったので、直前まで歴史漫画を読んでいた。天声人語は1月になって読み始め、出題された学校もあって喜んでいた

―得意不得意は、皆それぞれにあるようですが、偏差値とは別の視点というか、出題傾向とか過去問との相性も大切ですよね。

倍率にも注目していました。実際親が直前に調べることはいっぱいありますよね。夫も、日々倍率がアップデートされるサイトを見て、研究していました。

志望校選びのエピソード

夫婦の約束は「親の先入観を押し付けない」

―学校見学や説明会は行きましたか?

夫が積極的に行ってくれました。良かった学校に私が再度申し込んだりして。学園祭は家族全員で行くことが多かったです。説明会では、校長先生のお話はもちろんですが、生徒が直接案内してくれる学校は、様子が分かりやすくよかったですね。

―学校選びの際に気を付けたことがあれば教えてください。

もともと、夫は娘の意向を大切にしようという考えだったので、学校見学の際もあまり口を出さず、「この学校は気に入ったようだな」「ここは、いまいちピンと来ていないようだな」など、娘の様子を静かに観察していたようです。私も、「ママはこの学校がいいな」など意見を押し付けたことはありません。

―娘さんの希望はどうでしたか。

娘は「共学校がいい」と言っていました。実は、私はカトリック系の女子校出身で、当時の厳しめの学校生活にはあまりいい思い出がなかったので、できれば娘には共学校に行ってほしいという思いはありました。直接「共学校にしたら?」と言った覚えはないのですが…。

―知らず知らずのうちに、親の志向や考え方が伝わることもありますよね。

今、振り返ってみると、ひょっとして、娘は私に忖度したかも?というのも、最後の最後に志望校を絞る段階で、「女子校でもよかったな」と娘が言ったからです。もともと、夫からは「頼むから、『自分は女子校が嫌だった』とあまり言わないで。女子校には女子校の良さもあるし、本人が興味を持つかもしれないから」と言われていたんです。だから、もし私の何気ない発言が影響を与えていたのなら、娘に申し訳ないなと思います。

―女の子の場合、女子校を選択肢に入れるかどうかは大きな問題ですよね。

そうですね。うちの子の場合も、共学より女子校のほうが多い偏差値ゾーンだったので、志望校選びは苦労しました。実際に学校説明会に行ってみると、女子校は丁寧に先生たちが子どもを見てくださっているなという印象を受けました。下に男の子がいるのですが、学校見学の際に先入観を与えないように気を付けなければと思います。

―秋以降、入試が近づくにつれて、志望校は変化しましたか。

ほんの少し変化したかなという感じです。小4のとき、はじめて学園祭に行ったのがA校(後に進学)で親子ともに気に入っていたのですが、B校も気になってきて、第一志望はB校という流れになりました。

―B校が気に入った理由は何でしょうか。

近年、偏差値がぐんぐん上がっている学校で、学園祭も説明会も先生たちがすごく力を入れていているのが印象的でした。大学進学実績も伸びています。本人が勉強するようになる体制が整っていて、校舎などの施設もきれいで…。学園祭が男女共に楽しそうなのもよかったですね。B校の存在は、娘が中学受験を頑張るためのパワーになったと思っています。

―志望校は絞れましたか?

お守り校、第二志望校、第一志望校と、本人の希望や偏差値などを考慮しつつ、親子で決めました。

 少しずつ成績を伸ばし、憧れの志望校も見つかり、本番に向けて頑張るⅯちゃん。Ⅿちゃんを待ち受けていた壮絶なドラマとは⁉ 結果は⁉ 後半へ続きます。

後編「受験本番、波乱の4日間」はこちら

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取材・文/ひだいますみ

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