【教育YouTuber葉一さん】算数・数学のつまずき克服法は「目の前にある問題を解決させ、成功体験を積ませること」

登録者数200万人以上の教育YouTuber葉一さん。小学3年生から高校生を対象にした授業動画はわかりやすく、子どもたちに人気です。インタビューの後編では、葉一さんの動画へのこだわりと算数・数学の苦手意識を克服する方法などを伺いました。

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「お金が理由で塾に通えない子をなくしたい」登録者200万人超の教育チャンネルYouTuber葉一さん、開設のきっかけ、14年間で感じる子どもの変化とは?
教師志望だった大学時代。営業職、塾講師を経てYouTuberに。葉一さんのこれまでの歩み ――葉一さんのこれまでの歩みとYouTub...

板書の美しさにこだわりが! 飽きずに授業を見てもらうために気をつけていること

――葉一さんの授業動画は、とにかくわかりやすいと人気ですが、授業へのこだわりはどんなところにありますか?

葉一さん 板書にはめちゃくちゃこだわっています。字のフォントを統一して、まっすぐになるように一文字ずつ定規で測って書いています。勉強をやりたくない子が、しぶしぶ私の動画をクリックしてくれたときに、目に入ってくる板書がきれいだったら、ちょっと頑張れると思うんですよね。

また、板書はホワイトボード1枚におさめています。終わりだと思ったのに次の板書が出てくると、やる気がしぼんでしまいますよね。だから、ぱっと見た瞬間に、その動画で取り組む問題の分量がわかるようにしています。ちなみに、授業動画は編集していません! もし最後の問題で私が何か間違えてしまったら、また最初から撮り直しています。

――ライブ感のある授業にはそんな工夫がつまっているんですね。

葉一さん 子どもたちが集中できるように、授業動画は10〜15分でおさめるようにしています。今は「タイパ」という言葉もありますが、私がYouTubeを始めてから14年の間に子どもたちの集中できる時間はどんどん短くなっているように感じます。ですから、子どもたちが短い時間の中で頑張れるように意識して作っていますね。

小3、小5は算数のつまずきやすいポイント 早めに解消を!

――葉一さんは数学がご専門ですが、算数や数学の動画はどんな工夫をされていますか?

葉一さん 例えば、分数のわり算は、割る数を逆数にしてかけ算で答えを出しますよね。私の動画では「なぜそうなるか」は一切説明していないんです。それは、子どもたちが動画を見て、目の前にある計算ドリルや問題集をまず「解ける」という経験を積み重ねてほしいからです。「動画を見たら自分で問題集を解けた!」というところまで持っていきたい。そうやって成功体験が積み上がると勉強に対しても前向きな気持ちが出てくるんですよね。その中で、「この分数はなんでひっくり返すんだろう?」という疑問が出てくれば、今の時代は調べればすぐに答えは出てきます。ですから難しい話はカットして、子どもたちが今目の前の問題を解決する力、そして成功体験を積ませるという部分に全振りしているんです。

――算数や数学が苦手な子に共通する特徴はありますか?

葉一さん 算数は「ピラミッドの科目」だとよく言われています。例えば理科なら、単元によってできたりできなかったりするんですよね。「電気」は苦手だけれど、「植物」は得意ということもよくあります。ですが、算数は小学校の知識がなければ、当然中学校の数学はできません。どこかでつまずいて、そこから知識が積み上げられていなければ、授業がずっとわからないままになってしまうんです。それで苦手意識だけが蓄積されてしまっているケースも多いです。算数は学年上がるほど、「なんとなく」では解けなくなるのでどんどんしんどくなってしまいます。

――つまずきやすいポイントはありますか?

葉一さん まずは小3ですね。小2までは足し算、引き算が中心なので、みんなわりとできます。小3になるとわり算も出てきますし、全体的に急に難しくなってついていけない子が出てきます。次は小5ですね。「割合」が苦手でつまずいている子が多いと感じます。

【動画】小3・あまりのあるわり算

――自分のつまずきを知るにはどうしたらよいのでしょうか?

葉一さん 学校や塾の先生などにテストをしてもらい、どこでつまずいているのかを教えてもらうのがよいです。ただ、例えば中1の段階で小4のつまずきに気づいた場合、その3年分を補いながら中1の勉強をするのは大変です。ですから、まずは今勉強している単元を補うために必要な部分をさかのぼって、ピンポイントで穴埋めしていくのがよいと思います。今の単元ができるようになると苦手意識はかなり克服できるはずです。小学生なら、親御さんが学校のテストをよく見ることも大切です。普段80〜90点とれているのに、50〜60点しかとれない場合は、確実につまずいています。親御さんが一緒に問題集などに取り組み、早めにつまずきを解消するとよいでしょう。

低学年はクイズで算数力アップ! 算数・数学への苦手意識を取り除くには?

――YouTubeを使って勉強する際の注意点はありますか?

葉一さん 参考書よりも映像の方がわかった気になりやすいです。ですから何回か見て復習するとよいと思います。19ch(塾チャンネル)という私の別のサイトで動画に出てきた板書をPDF(無料)で配布しているので、こちらも活用してもらえればと思います。1回目に余裕で解けた問題は何回もやる必要はありません。1回目で怪しかったり、失敗したりした問題だけもう一度解くだけで十分です。中学生くらいだったら2回目は1問ずつ動画を途中で止めて、解き方が頭に浮かんだらその問題はやらなくてOKです。

――幼い頃から算数に親しむために、家庭でできることはありますか?

葉一さん 私も自分の息子たちに、数字に強くなってほしいとずっと思っているんです。それで就学前から低学年のうちは、勉強というスタンスよりも、「5+7はなに?」のような感じでクイズをよく出していました。それで「すごいじゃん!」とほめていると、絶対に「もう1問!」って言ってくるんですよね。そんな形で楽しくやっています。

――算数や数学への苦手意識を克服するにはどうしたらよいのでしょうか。

葉一さん 算数が苦手な子が「好き」になるというのはハードルが高いですが、「嫌いじゃないかな」くらいのところまで持っていくことは可能です。私は個別指導塾で教えていたのですが、勉強が苦手な子を受け持つことが多かったです。中3で入塾して、中1の内容が全部できない子もたくさんいました。その子たちに教えるときはまずプリントを子どもたち自身に1/4に削らせるんです。問題数が多いとやる気を失ってしまうので、12問あるプリントなら3問やればOKです。その問題をまず説明して、一緒にやってみる。そして授業の最後に数字を入れ替えて、自分でやらせてみる。そうするとできるようになります。そういった方法を続けていくと、それまでは諦めていた子どもたちも「やればできるかもしれない」と思い始めます。つまずいてる時間が長ければ長いほど、時間はかかりますが、子どもたちは変わりますね。

ありがとうございました。まずはたくさんの問題をやろうとせず、少しずつ「できる」という経験を積み重ねることで苦手意識を克服できることがわかりました。ぜひご家庭でも、葉一さんのYouTubeも活用しながら取り組んでみてください!

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お話を伺ったのは

葉一 教育YouTuber

1985年、福岡県生まれ。東京学芸大学教育学部初等教育教員養成課程数学選修。大学卒業後は教材の営業職、塾講師を経て独立。2012年にYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設し、登録者数は209万人(2024年12月現在)。学生や保護者向けの講演活動を精力的に行うほか、テレビ出演や教育系メディアへの寄稿も多い。著書に『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』(フォレスト出版)、『やる気ゼロからでも成績が必ずアップする 一生の武器になる勉強法』(KADOKAWA)などがある。

取材・文/平丸真梨子 

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