6月19日に、「こども性暴力防止法」が成立しました。性教育のベースは「性」に特化したことだけではなく、子どもとの関係づくりや自己決定が基本です。「自分のからだと心を大切にする」ための意識づけは、まず、家庭から始まります。
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「プライベートゾーン」は、勝手に他人に触らせてはいけない大切な部位
令和3年4月に文部科学省から教材・手引きが発表され、令和5年からは本格的に取り組みが始まった「いのちの安全教育」。全国の学校で、幼児期から大学や一般、特別支援教育までが主な対象です。発達段階に応じてねらいを設け、それぞれに合わせた内容で指導がおこなわれており、昨年からプライベートゾーンについて教える取り組みをする園や学校が増えました。
プライベートゾーンとは、「勝手に他人に触らせてはいけない大切な部位」。一般的には水着で隠れるからだの部分が目安になりますが、口もプライベートゾーンになります。そして、プライベートゾーンを覆う下着も含まれます。
家の中にも存在する「パブリックスペース」。家庭での大人の無頓着な行動が、子どもの性に対するふるまいに影響します
同時にパブリックスペースとプライベートスペースの違いについても教えておく必要があります。
外の世界、つまり社会はパブリックスペースだというのは一般に知られている事ですが、社会でもプライベートスペースは存在します。それは試着室、個室トイレ等、他人から見られない場所です。
そして家の中でも、パブリックスペース、プライベートスペースは存在します。例えば、トイレやお風呂はカギがかけられ、排せつ、着替え等が出来るプライベートスペースです。しかし、リビングやキッチン廊下等は家族はもちろんお客様や他人も入ってくるパブリックスペースになります。
もし、自分の部屋やお父さんの書斎や兄妹の部屋などがある場合、個人の部屋はプライベートスペースです。部屋に入る、使用する場合部屋の主の同意が必要になることも伝えましょう。
家庭でプライベートスペースとパブリックスペースの区別を教えることによって、プライベートゾーンをだしてもいい、着替えをしていい場所、してはいけない場所があるという事を学ばせていただきたいと思います。
リビングでの着替えや裸でいることはNGです
自閉症スペクトラム症の子どもは、人の行動をそのまま真似ることが多いのです。大人がリビングルームなど、家の中のパブリックスペースで下着でウロウロしたり、着替えをすることは避けていただきたいと思います。「恥ずかしいでしょ」「人前で脱がないの」と言っているだけでは、自閉症スペクトラム症の子どもたちには伝わりません。
放課後デイサービスを運営していた時代に、保護者から「子どもが裸でウロウロする。言っても聞かない」との相談を受けました。詳しく聞くと、そのお子さんは、着替えをお風呂場に持って行くのをつい忘れてしまうそうです。このような場合、ただ、「持って行きなさい!」と言ってもお子さんの特性上改善するのは難しいと思われます。
脱衣所に子どもの下着とパジャマを収納するスペースを作ることを提案し、着替えを「持って行く」という作業を省く事で裸でリビングを通る事をなくしました。パブリックスペース(リビング)での着替えや裸になることは「恥ずかしいこと」として教えていく必要があります。
家庭で意識づけしたい、プライベートスペースとパブリックスペースの使い分け
家庭での行動が子どもの性に対するふるまいに影響することがあります。以下のポイントをご家庭でも実践してみてください:
・トイレをノックする習慣をつける(他の人が入っている際、いきなり扉を開けない)
・リビングで裸や下着で歩かない(大人も)
・親や兄弟の部屋に入るときはノックをして同意を取る
これからの季節、お子さんに外で水遊びをさせる方も増えるでしょう。幼いから平気だろうと公園などの水遊び場で、濡れた服を着替えさせる大人を時々見かけますが、人から見えない場所で着替えさせる、いきなり脱がせようとせずに必ず声掛けをして説明をすることを心がけ欲しいと思います。
これらの行動は、子どもの外での行動に繋がっていきます。プライベートゾーンの名称だけでなく、プライベートスペースとパブリックスペースを使い分ける意識を家庭で育て、他人と自分の体のプライベートゾーン守る意識を育てていきましょう。
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記事監修
健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。
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