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「ホルムズ海峡」は世界の急所
最近、中東情勢をめぐって緊張が高まっています。みなさんも毎日のようにニュースで報道されるのを見ているでしょう。そして、その中でよく「ホルムズ海峡」という言葉が出てきますが、実は「ホルムズ海峡」は日本にとって、とても重要な場所なのです。

世界地図を広げて中東のあたりを眺めてみると、ペルシャ湾という大きな海が、まるでお腹のように突き出しているのが見えます。この海から広いインド洋へと抜け出す唯一の出口が、今回お話しするホルムズ海峡です。
一番狭いところで幅が30キロメートルほどしかありません。これは東京から横浜までくらいの距離で、海としては驚くほど狭い場所なのです。しかし、この小さな隙間のような場所が、実は世界中の人々の生活を支える「地球の急所」と言っても過言ではないほど、とてつもなく重要な役割を果たしています。
世界で使われる石油の2~3割がこの海峡を通過する
なぜここがそれほど大事なのでしょうか、その最大の理由は石油にあります。私たちの周りにあるプラスチック製品やおもちゃ、洋服の繊維、そして車を動かすガソリンや電気を作るための燃料など、生活のあらゆる場面で使われているエネルギーの多くが、このペルシャ湾の奥にある国々で作られています。
サウジアラビアやクウェート、アラブ首長国連邦といった国々が輸出した石油を載せた巨大なタンカーは、必ずこのホルムズ海峡を通らなければ外の世界へ出ることができません。毎日、世界で使われる石油の約2割から3割がこの狭い通り道を通過していきます。

「ホルムズ海峡」を通れなくなると日本中のエネルギーが止まる
もしも、この海峡で戦争が起きたり、何らかの理由で船が通れなくなってしまったりしたらどうなるでしょうか。それは、まるで家の水道管が根本からギュッと締められてしまうようなもの。蛇口をひねっても水が出てこないのと同じように、日本に石油が届かなくなってしまいます。
日本は、使っている石油のなんと9割近くをこの地域に頼っているため、「ホルムズ海峡」が通れなくなることは、日本中のエネルギーが止まってしまうことを意味します。
そうなれば、私たちの日常生活には大きな影響が出ます。まず、ガソリン代が跳ね上がり、物流を支えるトラックが動かせなくなることで、スーパーに並ぶ食べ物の値段がどんどん高くなります。
また、電気が足りなくなって計画停電が起きたり、冬に暖房が使えなくなったりするかもしれません。このように、遠い外国の出来事のように思える「ホルムズ海峡」の平和は、実は皆さんが今日食べるご飯の値段や、部屋の明るさに直結しているのです。

世界の国々が海峡の安全に目を光らせている
国際政治という視点で見ると、この海峡は常に緊張の糸が張り詰めた場所でもあります。海峡の北側にはイランがあり、南側にはオマーンやアラブ首長国連邦があります。
もしイランが「この海峡を封鎖する」と言い出せば、世界中の経済が大混乱に陥るため、アメリカをはじめとする多くの国々が、ここを安全に通れるように常に目を光らせています。
一つの国がわがままを通せば世界中が困ってしまうため、みんなでルールを守り、平和を維持することがどれほど大切かということを、この小さな海峡は私たちに教えてくれています。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
