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不便を解消するために、牛乳パックを自動で切り開けるマシーンを開発!

豊福旺佑さんが作った自動カッターマシーン「牛乳パックカッター」。牛乳パックをセットしてスイッチを入れると刃が動き、牛乳パックを切り開くことができます。完成するまでには電圧や電気抵抗を考慮し、何度も試行錯誤したそう。一連の動作を動画としてまとめました。
旺佑さんの作品は>>こちらの動画から
――牛乳パックカッター作りを自由研究のテーマに選んだ理由を教えてください。
旺佑さん 理由は2つあって、1つは、リサイクル資源として欠かせない牛乳パックを切り開くのが家庭でも、学校の給食のときも大変に感じていて、作業が楽になるマシーンがあるといいなと思ったからです。
2つ目は2年前は歯車、1年前はモーターを使った作品を作ったため、今度はソレノイドを使うことを研究したいと思ったからです。
――ソレノイドを使っているということですが、使ったパーツや仕組みを簡単に教えてください。
旺佑さん 使ったパーツはドアやシフトレバーなどに使われるソレノイド(電流を流すことで磁場を生成し、その磁場を利用して物理的な動きを引き起こす装置)と、幅広い電子工作に対応するアルドゥイーノ(電子工作でよく使われるマイコンボード)です。
アルドゥイーノでプログラムを打って、ソレノイドを動かしたり制御したりすることができるので、それで刃を動かして、牛乳パックを切りました。

――工夫したところはどんなところですか。
旺佑さん 主に2つあって、1つ目は持ち運びやすくするためになるべく重さを減らしたことです。軽い段ボールや発泡スチロールを使いました。
2つ目は、台の上げ下げのためになるべく台を軽くしたことです。使うパーツを減らしたり、ぶれないようにするために、木の中でも軽い桐という木を敷いたりしました。

制作中に困ったら「Yahoo!知恵袋」を活用!
――大変だったことや苦労したことはありましたか?
旺佑さん たくさんあって、1つ目は、注文して届いたアルドゥイーノをいざ起動させようとしたら、USBを本体とパソコンに繋いだつもりだったけど、起動しなかったことです。もっと力を入れてみると起動したので、思っていたよりも差し込むには力が必要でした。
2つ目は、まずモーターを動かせるようになろうとやったら、回路に問題があるようでモーターが動かなかったことです。インターネットで見つけた回路を組んでみると、動いたけど、その回路はアルドゥイーノにかなり負担をかけていたらしく、壊れそうで危ういところでした。
3つ目は、牛乳パックが硬くて切れなかったことです。ペーパーカッターの刃を購入したけど、全く切れませんでした。最終的には、薄いカッターナイフの刃としっかり切れる短いノコギリの刃を使いました。
4つ目は、ソレノイドのパワーが足りないということです。強い電圧の電気をかけたり、長時間動かしたりすると、トランジスタという部品がとても熱くなるので、配慮しながら電池を増やしました。
――いろいろな困難があったんですね。途中で困ったときはどうしましたか?
旺佑さん 家族に聞いても解決しないときは、Yahoo!知恵袋で質問をしました。質問すると、結構長い文章の返事を書いてくれて、返事もすぐに来ました。
――Yahoo!知恵袋を活用していたのは驚きです! では、完成まではどのくらいかかりましたか?
旺佑さん 5か月くらいかかりました。
――途中でもう無理なんじゃないかとか、嫌になったりしなかったんですか。
旺佑さん ちょっとしました。完成したときは、やりきった感があってうれしかったです。
将来の夢は“みんなの役に立つ面白い科学者”。プログラミングも独自で勉強
――今回の工作に使ったプログラミングやソレノイドなどに興味を持ったきっかけを教えてください。
旺佑さん 1年生くらいから物を作ることが好きで、将来“役に立つ科学者”になろうと思っていたので、電子工学などに興味を持ったんです。
最初は、動画を参考にしながら段ボールとペットボトルでガチャガチャを何台か作りました。3年生のときは、「からくり儀右衛門」という人の作品を見たこともあって、歯車を使って玉を転がす「からくりワンダーランド」を作りました。4年生の自由研究は、発電用のモーターを使い、水車を回して発電に挑戦しました。
――プログラミングはいつから始めたんですか。
旺佑さん 5年生からです。
――では、始めたばかりなんですね。プログラミングは教室に通って勉強したんですか。
旺佑さん いや、動画を見たり、本をたくさん買ってもらったりして。
――自分で勉強してできるようになったんですね。
旺佑さん そうです。難しいこともあるけど楽しいです。

――今後作ってみたいものや将来の夢を教えてください。
旺佑さん まず、牛乳パックカッターは今は工作レベルだけど、将来は学校や家庭で実用化されるような安全な装置を作れるようになりたいです。
ほかに作りたいものはゲーム機、ミニ風力発電機、ミニ水力発電機、自動演奏機、トランシーバー、自作ラジコンヘリ、竹の車などたくさんあります。将来の夢はみんなの役に立つ面白い科学者です!
小1でソーラーパネルに興味を! 「パネルの仕組み、構造を教えて」と。
大人でも難しい装置やボードを使いこなし、わからないことは勇気をもって外部に質問して解決するなど、その姿は本物の科学者のような旺佑さん。普段はどんなお子さんで、ご両親は興味の種が広がるようにどうサポートしているのでしょうか。お母さんにもお話を聞きました。
――旺佑さんは普段どんなお子さんですか? 性格や得意なことを教えてください。
旺佑さんのお母さん 科学に関すること、特に物が動く仕組みやどうエネルギーが生まれるのかに興味がある子です。
そもそもは小1のときにソーラーパネルに興味を持って、「仕組みを教えて」と言われたんです。私たちは「太陽の光を電気に変えるんだよ」とドヤ顔で言ったんですけど、そうではなくて、「パネルの仕組み、構造を教えてくれ」と。このあたりから関心のベースが、そういった方に向いたと思います。
釣りや川遊びも好きだし、運動もします。いろんなことに興味を持って、楽しくやってみるという意欲は高いんじゃないかなと。性格としては基本的に真面目で、友だちを大切に思っている子です。
――ソーラーパネルで科学に熱が入ったんですね。
旺佑さんのお母さん ソーラーパネルで突然火がついた感じでした。そのときに、小さい子だからとなんでも大人が教えることができると思い込みが覆されて、ソーラーパネルの詳しい本を探すようになりました。子ども向けの本だと、細かい説明がなかったんです。

興味を広げるため発電所など電気関係、自動車工場、自然体験、ものづくり体験へも
――お子さんが好きなことをやりたい、見たいと言ったらどうはサポートしていますか。
旺佑さんのお母さん 軽い気持ちで言う場合もあるので、どこまで本気なのかを確かめて、その本気度に応じてこっちも動くようにしています。
発電所など電気関係、自動車工場、自然体験、ものづくり体験にも行きますし、大学生と一緒に学べるところにも行っています。
今は、地球沸騰化時代なので「エネルギー」はとても重要な項目です。親としても環境に役立つ、何かできる人になってほしいので、そういったことが学べるところにも連れて行っています。
――特にお気に入りの場所はありますか?
旺佑さんのお母さん 全国各地の科学館にはもう何十回も行っていて、発電所もいろいろなところに行っていますね。
科学と言っても、化学兵器に使うこともできるわけです。そこで平和祈念公園へも行き、科学者たちの戦時中の葛藤に触れて、どういう風に使っていくのかを考えさせるような場面も作っています。


親が不得意でも一緒に学ぶ! 子どもが作ろうとしているものを信じるのは大前提
――自由研究ではどんなふうにサポートされたんですか。
旺佑さんのお母さん 親の私たちの知識ではアドバイスできることが本当に少ないというか、ない状態で。でも、せっかくの本人の意欲の火を消さないために、できるだけのことはしました。
苦手でも一緒に学ぶところから始めたり、どうしてもわからないこともあるので、それは本人も言ったようにYahoo!の知恵袋に「ここで行き詰っています」と写真と回路図を載せて質問すると、熱心に「技術を伝えるんだ」っていう思いでたくさん書いてくださる方もいて、世の中捨てたもんじゃないかもと。本人にも、大人になったらこんな風に子どもたちを助けられるような人になろうねって。
――お母様の声がけも素敵ですね。
旺佑さんのお母さん あとは子どもが作ろうとしているアイデアを不審に思わず、「きっとできる」というのを大前提として一緒に進めるというのも大切にしています。
工作なら私も少し口出しできる部分もあったので、アイデアを入れ込んだりしながら、1人にはせず一緒に取り組むようにしています。
――さっき、旺佑さんが途中嫌になっちゃったこともあると言っていましたが、そういうときは声がけなどで工夫していましたか。
旺佑さんのお母さん 思った通りにならないことは多々あって。特にYouTubeとかがありふれてるなか、情報は参考にしていいけど、それと同じように作るのではなく、独自の発想で作りなさいと伝えているんです。つまり、完成する保証はなくて、果たして出来上がるのかすらわからない状態でやっているんですね。
すると、やっぱり行き詰まるので、苦しくなったとき、本人が熱を出したりするんです。
リフレッシュもさせるんですけど、結局そこで放り出さずに、いろんな角度から要因を突き詰めながら何度もやり直したり、別の視点でやってみるようにと、身近にいるものとしてそう伝えながら最大限伴走しています。
――子どもが熱心にやっていることを、信じて見守るって、意外と難しい気がします。
旺佑さんのお母さん 私自身モノづくりや教育に関わる仕事をしていることもあって、子どもたちがそれぞれが持ってる興味や才能をどう伸ばしていけるかというのは、わが子じゃなくても、見ていて考えることがあります。
でもお母さんたちはあんまり深掘りしなかったり……。自分が忙しいので日々が流れていっちゃうのが現実だと思いますが、子どもはあっという間に成長しますので、小学生のうちが頑張りどきかなと。

大事にしているのは人間力。将来は「被災地に電波で電気を届ける」という構想も
――子どもと接するときに何をいちばん大事にしてらっしゃいますか。
旺佑さんのお母さん 人間力がいちばん大事と言っています。自分が楽しいのもいいけど、それを仕事にすると苦しみも伴うし、仕事とは社会の役に立とうすることで、人の役に立つ代わりに報酬をいただいているんだよという話はしてます。だから、自分は何ができるかを考えようと。
――旺佑さんが発明家ではなく、”役に立つ”発明家って言ったのは、そういう教えがあったからなんですね。
旺佑さんのお母さん 今となっては教えになっているか…ですけど、ずっと長いこと温暖化対策に立ち向かえる科学者になるっていうのは言っていて、久留米市がやっている「探究心の炎を燃やそう」という取り組みにも参加し、3年連続でいい賞をいただいて。今後も地道にやっていってくれたらと思います。
先ほど本人がこれから作りたいものを言っていましたが、その先にすごく大きな目標があって「被災地に電波で電気を届ける」という構想があるんです。それに近づくために、今できることを1歩ずつやっています。親としても、地球の役に立つならこれはもう応援せんわけにはいかんねと。スムーズには行かないこともありますが、コツコツとやっています。
子どものアイデアを信じて見守る親の姿勢が、子どもの興味の種を広げる
今回のインタビューで驚いたのは、自由研究の完成度はもちろんのこと、旺佑さんの回答力。お母さんのお話に出ていた「探究心の炎を燃やそう」に参加した際は、実際に話す機会があるそうで、その経験を活かしてこちらの質問にすらすらとわかりやすく答えてくれました。科学者は、発明したものを説明することも大切である点からも、まさに科学者の風格でした。
そして、子どもの興味の種を広げる、お母さんの子どもへの接し方も勉強になる考え方ばかり。なかでも子どもが作ろうとしているアイデアを「きっとできる」と信じるのが大前提という考えは、子どもが好きなことを深掘りするのに、とても大切な姿勢だと思います。大きな構想を胸に、日々研究を続ける旺佑さんの将来が楽しみになるインタビューでした。
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文・構成/長南真理恵

