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一年生になったら放課後をどう過ごさせるか。年長さんになったら準備を始めましょう
年長さんの保護者からよくある相談が「入学後、放課後をどう過ごさせるか」です。保育園のように長時間預かってもらえる環境から一変。小学校に上がったら、子どもは早い時間に帰宅します。すると、放課後の預け先や過ごし方を家庭で組み立て直す必要が出てきて、相談も増えていきます。さらに言うと保育園での預かりの時間が長かった分だけ、わが子との向き合い方がわからず、対応に困る保護者がとても多いと感じます。
現代は、多くの家庭が共働きで、保護者は仕事に時間を取られます。家事や育児に参加する父親が増えたと感じる一方で、実際の相談では「ワンオペに近い」「パートナーの仕事が優先になりやすい」といった声も多く、家事・育児に加えて仕事の負担が重なりやすい状況が見えてきます。ですから、私は発達障害のある子の放課後の過ごし方について、理想論ではなく「その家庭で現実的に続けられる形」を一緒に考えることを大切にしてアドバイスしています。
子どもに向き合える時間をどれくらい確保できるか

放課後の選択肢は家庭によって前提条件が違います。そこで最初に確認したいのが「家庭の持ち時間」です。人の時間は誰でも24時間で、仕事があれば家事や子どもに使える時間が減るのは自然なことです。「両立しなきゃ」と気持ちだけで頑張るより、まずは“確保できる時間”を具体的に見積もり、その範囲で何をするかを決めていくほうが無理がありません。
たとえば、祖父母など協力者が近くにいて毎日少し手伝ってもらえる家庭もあれば、頼れる人が身近にいない家庭もあります。前者なら、その分だけ保護者が別のことに時間を回せます。後者なら限られた時間の中で「何をやるか」「何をあきらめるか」を選ばざるを得ません。協力者の有無だけでも、選択条件は大きく変わります。
4つの指標から「重要で緊急性のあること」を見極めましょう
障害のある子を育てるうえで一つの指標として、「重要性」と「緊急性」を考えて以下のように優先順位をつけることをおすすめしています。
①重要で緊急性のあること
②重要だけど緊急性の低いこと
③緊急性はあるけど重要性はないこと
④緊急でも重要でもないこと
子どもの心身の健康にかかわることを最優先に
①重要で緊急性のあることは子どもの心身の健康や命にかかわることです。食事・睡眠・衛生・排せつなど、生活の土台を整えることは最優先になります。
「学校の宿題」は重要度は高くない

一方で、保護者の時間が最も奪われやすいのは「③緊急性はあるけれど重要度は高くないこと」です。
典型的なのが宿題や学校からの持ち込み課題です。期限があるため焦りやすく、やっていかないと保護者として責められているように感じてしまい、優先しがちです。小学校低学年で宿題が終わらず、夜遅くまで取り組ませているケースに出合うこともありますが、休息が削られると疲れがたまり、機嫌が悪くなり、癇癪や気分のむらなど日常生活に支障が出ることがあります。学校だけで体力を使い切ってしまい、帰宅後はしっかり休む必要がある子も少なくありません。
発達障害のある子の場合、学校のカリキュラムが本人の学びのペースに合っていないこともあり、時間をかけても身につきにくいことがあります。内容によっては、その学年を過ぎるとあまり使わないものもあり、興味の持てない学習は残りにくいという現実もあります。
社会のルールや性教育は、根気よく継続して教えるべき「重要なこと」
さらに後回しにされやすいのが「②重要だけど緊急性の低いこと」です。
社会のルール、性教育、本人のペースに合った学習などは、積み上げに時間がかかり、評価もしづらい分、つい後回しになりがちです。けれど、思春期以降に困りごととして表面化しやすいのは、まさにこの領域です。
教え方がわからず「叱る・注意する以外に手がない」と感じる保護者もいますが、言語理解が難しい、イメージが持ちにくい場合は、言って聞かせるより、手本を見せるほうが伝わりやすいことがあります。「ダメ」と止めるだけでなく、望ましいふるまいを大人が意識して示すことが必要な場面も多くあります。
情報収集のつもりがネットに振り回されていませんか?

そしてもう一つ見落としやすいのが、「④緊急でも重要でもないこと」に意外と時間を使っているケースです。
スマホやネット、なんとなくの動画視聴などは、気づくと時間が過ぎてしまいます。SNSやYouTubeには発達障害の情報が多く、保護者の中にはわが子の将来への不安から見続けてしまう方もいますが、環境設定や発達特性を無視した内容は、結局“ネタで終わる”ものも少なくありません。まずは「自分がどれくらいそこに時間を使っているか」を振り返るだけでも、本当に必要な時間かどうかを考えるきっかけになります。
障害のある子の家庭では、これから先も、限られた条件の中で選択しなければならない場面が増えていきます。だからこそ「自分の家庭の条件で、無理なく続けられる形は何か」「限られた時間を何にどれくらい配分するか」を、現実に沿って選べる力が重要になります。
放課後の過ごし方も、まずは家庭の持ち時間を見える化し、緊急性に引っ張られすぎていないかを点検しながら、「何を大切にし、何を手放すか」を自分の条件で決めていくことが、長く続く支えになります。
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記事監修

保育士、公認心理師。発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育を行う放課後等デイサービスLuce(ルーチェ)を2022年まで運営。現在は障害のあるお子さんと保護者が一緒に通うことができる脱毛サロンLuceを運営(施術中に療育相談に対応可)、子育てや療育相談、事業所での性教育のやり方、職員研修やコンサル、講演等を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』、『発達障害の男の子のお母さんが早めに知っておいてよかったこと70』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。
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