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料理をするなかで子どもたちから生まれた疑問、気づきが「実験レシピ」のもと
――この本は理科が大好きだった娘さんと、理科は少し苦手だった息子さんと取り組んできた実験ワークショップがもとになっているそうですね。中村さんご自身は昔から理科が好きだったのでしょうか? また、このようなレシピを考案するようになったきっかけはありますか?
中村陽子さん(以下中村さん) 私自身理系科目が大の苦手で、だからこそ、自分の子どもが生まれたときに同じような思いをさせたくないと思いました。
料理は作ることも食べることもずっと好きでしたし、子どもたちも食べることが大好き。それならと一緒に料理していると「なんで膨らむんだろう」「なんで固まるんだろう」「色が変わったのはなんでだろう」と、子どもたちから疑問や気づきが出てきたんです。“料理は科学”とも言いますし、そこで料理と理科をつなげられるかもしれないと思いました。理科が苦手で、料理が好き、この2つがなかったらこれらのレシピは生まれなかったかもしれません。
――では実験レシピを考案する前から、一緒に料理をしていたんですね。
中村さん そうですね。この本の監修の宮本一弘先生もおっしゃっていますが、料理は五感を使うからもともと教育にいいと思い、一緒にキッチンに立つようにしていました。
――忙しい日に「一緒にやりたい!」と言われたときはどうしていましたか?
中村さん そこは無理はせずに、ゆるやかにという感じですね。ただ、子どもとやると片付けが面倒くさいなと躊躇したとしたら、一呼吸置いてそこから得られるものの方に目を向け、やってみることはありました。あとは、子どもたちから出た疑問はキャッチして都度メモをとり、「こう言っていたから今度はこれをやってみよう」と、次につなげるのも意識していたことです。

実際に目や手を刺激した体験が、子どもの記憶に定着する
――最初にお子さんたちと取り組んだ実験とその際の反応は覚えていますか?
中村さん バスボムの仕組みを知って、同じ原理のラムネを娘と作りました。クエン酸と重曹と粉糖を混ぜ合わせたところに水分を加えて二酸化炭素を発生させ、しゅわしゅわさせてみたんです。
その後、今回の本の監修をしてくださった宮本先生のワークショップに娘とたまたま参加する機会があり、手のひらに重曹とクエン酸を乗せてしゅわしゅわさせ、吸熱反応があるので冷たくなるという実験をしました。そこで娘が「ラムネと一緒だね!」と言うと、先生が「そうなんだよ」とうれしそうに返してくれたのもよく覚えています。それが先生との出会いでした。
――理科を超えて化学ですね!
中村さん そのときはまだ化学反応は理解できていませんが、それでいいと思っていて。手のひらが冷たくなったり、口のなかがしゅわしゅわしたりする体験が五感を刺激して、記憶に定着するのかなと。娘は実際にこのことをよく覚えているようです。
身近なものだけど今まで経験したことがない、不思議な現象に子どもが興味津々!
――子どもがやってみたい! と興味を持つレシピ、実験には、どんな特徴がありますか?
中村さん この本で言うと「のび~るアイスクリーム」「とけないツートーンアイス」「絵本みたいなホットケーキ」など、身近なものだけど今まで経験したことがない、不思議な現象は「なんでなんだろう」と、興味を持ちやすいと思います。
――本作はどれも低年齢のお子さんでも作りやすいレシピが多いですが、レシピを考える際に気をつけていたことはどんなことでしょうか?
中村さん 視覚的に色や形、状態変化が短時間でわかりやすく、違いがすぐに実感できるものが多いです。混ぜてみたり、フルーツを袋の上からもんだり、指先や手を動かして五感を刺激する工程も意識しています。
『ひとりでできた! 食べられるじっけん』より アイスなのにのびる? 「あるもの」をまぜたアイスクリーム



失敗も大切な学び。失敗がわかりやすいお菓子作りは実験になりやすい!
――タイトルに「ひとりでできた」とあります。実験の際、大人のサポートは必要ですか? 子どもが自分で手を動かした方がよいでしょうか?
中村さん 失敗してもいいから、自分でやることが大切だと思います。包丁や火を使うなど危ないことだけはサポートをしつつ、自由にやらせてあげるのがいいですね。
――つい手を出したくなりますが我慢ですね。
中村さん 実験に失敗はないと思うんです。娘は中2からナミアゲハの研究を始めたのですが、相手は生き物なので仮説が正しくなかったり、うまくいかなかったりして全滅することもあります。私が「うまくいかなかったね。どうしようか」と言うと、娘は「なにいってるの? 失敗したっていうことがデータのひとつになるんだよ」って。確かにそうだよなと。
――失敗した、できなかったことも結果として、「これではできないとわかった」という学びも必要ですよね。
中村さん 私はお菓子を作る際はちょっと多めに材料を買っておいて、万が一失敗したら「なんで失敗したんだろうね」と問いかけて、前回と条件を変えてやり直すようにしていました。子どもはすぐに飽きたり忘れたりしてしまうので、間を空けないですぐにやるのがポイントです。
クッキーが焦げたり、パイナップルの酵素の影響でゼリーが固まらなかった、など、お菓子は失敗がわかりやすいので、実験になりやすいと思います。
――これから夏休みがやってきます。小学生の自由研究に特におすすめのレシピを教えてください。
中村さん しゅわしゅわの泡が楽しい「カラフルサイダー」、シロップをかけると色が変わる「色がかわるブルーベリープリン」、チョコレートがにじ色に輝く「レインボーチョコレート」は、視覚的にわかりやすくて科学的に解説しやすいのでおすすめです。
『ひとりでできた! 食べられるじっけん』より キラキラ輝くのはなぜ? にじ色に光るチョコ!



どれを作っても、その日の気温、キッチンの状況などによって仕上がりが変わってくる部分はあるので、そこを親子で考察、試行錯誤して取り組む機会になると思います。そのときはよくわからなくても、中学生くらいになって重曹やクエン酸の化学式が出てきたときに「あのときのあれだ!」とピンとくれば、それは成功だと言えるかもしれません。
仮説を立てて、実験・考察して、粘り強く考える力が身に付く
――さまざまな実験をされてきたと思いますが、息子さんは苦手だった理科に興味を持ったり、好きになったりしたでしょうか?
中村さん 今は、理科は嫌いではないけど得意な意識もないようです。ただ、一緒に実験をやってきたことを通して、粘り強く考えたり言語化したりする力につながったように思います。
彼は野球がとても好きなのですが、来季どころか2028年、2029年の日本のプロ野球、メジャーリーグ、昭和の名選手でチームを組んで、各チームの打率予想とか妄想打線を組むなど、深掘りしているんです。試行錯誤して表現する力が身に付いたからこそなんだと思います。
――実験のあとはみんなで話し合うようにしていたのですね。
中村さん そうです。リビングにあるホワイトボードの前で実験を振り返ったり、その内容を書き出したりして、頭のなかを可視化することをやっていました。子どもたちの感想が最初は「すごい!」「面白い」だったのが、だんだんと「どうしてこうなったんだろうね」と仕組みを知りたがるようになったのも成長を感じましたね。
――いろいろな力が養われますね。
中村さん 最近、理系脳とよく聞きますが、単純に数字や計算に強いから理系ということではなく、今やっていることに関して仮説を立てて、実験して考察して、試行錯誤して粘り強く考えること、あきらめない力、考えを他者に伝える力もつくのかなと思いますね。
最後に食べられるのもポイント! 親子で食べて実験を振り返って
――読者にメッセージをお願いいたします。
中村さん なんで色が変わるんだろう、固まるんだろうという「なんでなんだろう」という気持ちを大事にしてほしいです。疑問に思ったら実際に手を動かして作ってみて、もしうまくいかなかったらそこでもまたなんでなんだろう? と考えてみてください。
この実験は食べられるのもポイントです。実験して作って終わり、ではなく、親子で一緒に食べながら振り返ってみるとコミュニケーションも取れ、わが子の思考が見えて面白いと思うのでぜひ取り組んでみてくださいね。
中村陽子先生の新刊
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●全工程のわかりやすいプロセス写真つき。
●作って食べる過程で生まれる「なんで?」には、難しい言葉を使わない「ふしぎポイント」で解説。
●親御さんは温かく見守るだけでOK!
さらに各章末には、開成中学校・高等学校の化学教諭・宮本一弘先生が提案する、あっと驚く「スペシャル実験」も大公開。
おいしく食べて、楽しみながら知育と生活力を育む1冊です。
お話を聞いたのは…
この記事を書いたのは
子育てや教育、エンタメにまつわる方々への人物インタビューを多く取材・執筆。大人はもちろん、子どもたちから話を聞くのも好きです。3兄弟を育てる母でもあり、同じように子育てに向き合っている方たちが共感できたり、悩みや困りごとに寄り添えるような記事を発信しています。