テレビや雑誌、各メディアへのレシピ考案やコラム執筆など、さまざまなシーンで活躍。小学1・3・5年の1男2女のママでもあり、食育インストラクターの資格も持つ料理家の和田明日香さん。前回の食育についての記事では「子どもがごはんを食べるときは、一緒に食卓に座るようにしています」という話を聞かせてもらいましたが、今回は子どもの好き嫌いとどう向き合っているかを聞かせてもらいました。
魚介類が苦手な長男と肉が苦手な次女
小3の長男と小1の次女はそれぞれ好き嫌いがあり、年々ひどくなってますね。長男は魚や貝など、海の生き物全般が苦手。次女は肉が苦手。全然食べられないわけではなくて、レミさんが焼いたローストビーフとか、焼き肉屋さんの焼き立ての肉なら食べられるとか、我が子ながらちょっとイラっとすること言うんですよ(笑)。
これも、自我が出てきたり、自分の好みが確立されているという成長の証だと思うんですけど、この子のためにはこれ作って、この子のためにはこれって、私からしたらすごい面倒くさい!同じもの食べてよって思ってしまうんですけど(笑)。でも、好き嫌いは今日明日で克服できることじゃないし、あまりにも偏食でない限り、克服する必要もないんじゃないかな? 克服する必要がないってところで、世のママたちは気持ちをラクにすればいいと思うんです。私自身がそうなので!
苦手なものを食べたときのリアクションは1パターンじゃない
すごく新鮮な白魚を買って来て「これ唐揚げにしたら絶対おいしいね」って話しながら作って、長女と次女がポリポリ食べて、夫と私はビール飲みながら「最高だね」って話していると、魚嫌いの長男の手がスーッと伸びてくることがあります。そんな時、子どもによっては「すごい!お魚食べるの?えらいね」なんて言うほうが食べる子もいますよね。でも、うちの長男はそう言うと食べなくなっちゃう。だから心の中で「すごい!食べてる!」と思いつつ、見て見ぬふりします。
あからさまにほめるのは逆効果な場合も
次女の場合、肉嫌いなのでハンバーグも普段は食べないんですけど、この間はハンバーグと一緒に甘くソテーした玉ねぎを出したんです。「お箸をグサッて刺していいからハンバーグを玉ねぎではさんで、ハンバーガーみたいにして食べてみな」って私が言って、長女と長男は「本当だ、ハンバーガーみたいでおいしい!」って。次女もその食べ方がよかったのか「まぁ、ソースがいっぱいついてるところだったら食べてもいいけど」とか言っちゃって(笑)。次女もあからさまに褒めるのは逆効果。女の子って褒めて乗せるというより、対等だよってことを示したほうが良い気がするので「ね、おいしいよね」ってリアクションするのがよくて。これがお手伝いだったとしても「片づけられたの?すごい」じゃなくて「助かったよ。ありがとう!」ってリアクションすると「いいよいいよ、何でも言って!」みたいになるんですよね。
子どもがごはんを残すのはアリかナシか
長女は特に何かを教えたわけではないのに、毎食一粒も残さずにごはんを食べます。長男は「なんでそのひと口だけ残すの?」って量を残したり、味噌汁も具だけ食べて汁を飲まなかったり、一番食べ残し問題では怒っているかもしれません。次女はそもそも食べられる量しか自分の皿に盛らないので、自分が皿に乗せたものは完食するけど、残すものは「ママが皿に乗せたから」など、食べられなかった理由を主張します。
子どもの食べ残し問題に直面すると、学校給食のこともそうですけど、完食が果たして本当にいいことなのかな?って考えたりします。もちろん、生産者さんや給食を作ってくださっている方のことを想えば、出されたものを食べきるのは礼儀ですよね。でも、食べられる量って自分にしかわからないし、それを超えると体調が悪くなることだってあると思う。残し方が汚いのはよくないけど、「ごめんなさい、食べられませんでした」は、全然アリかなって私は思います。
弁当に苦手なものを入れる?入れない?
子どもたちが通っている小学校は毎日弁当なのですが、今年、次女が入学したので、3人ともパパが作った弁当を持って行っています。次女の初弁当の日は、リクエスト通り鮭弁当にしたのですが、2日目にして早速チャレンジ弁当! 苦手な肉だけど、ひと口でパクっと食べられるし、次女好みのオイスターソースのしっかり味。その日の弁当は私が作っていたんですけど、夫に「これ食べるかな」と言われて「わかんないけど、これが今日の弁当だって言って出すしかない。残してくるかもしれないし、食べられたら克服になるかもしれない」って。その会話を聞いてて、「なんでそんなの入れるの?」と、次女はすでに半べそ…。残ってた肉をひと口ポイって入れて「食べそうな味にしたから食べてみてよ」と言って持たせてみたんですけど、きれーいに残してきて(笑)。やっぱだめか~って。
毎回夫と試行錯誤の日々
嫌いなものでも食べられるようになるように、鬼のような気持で入れ続けるか、食べきれたという達成感のほうが大事だから、食べられるものだけを入れるか。どっちがいいんだろうねと、夫ともよく話しているんですけどね。
弁当は一緒に食べてあげられないので、食べようと思える声掛けもしてあげられないし、友達の手前がんばって食べなきゃというところもあるので、毎回試行錯誤してます。
家で一緒に食べる中で「この味つけだったら苦手な食材も食べられそう」というのを見つけていく。例えば次女は梅干しが好きなので、鶏肉も梅煮にすると食べてくれたり。家でのごはんで成功体験を作って、お弁当で一人で向き合ったときに本当に乗り越えていく、弁当の中で好き嫌いと戦っていくみたいな。いつもそんな感じでやってます。
食べなくても深く考えなくていい!
子どもの好き嫌いで一番大事なのは、根気強く出し続ける事だと思います。家庭ごとのやり方はあると思うんですけど「どうせ食べないでしょ」って出さなくなると「食べなくていいんだ」ってなってしまうし。実際食べなくてもいいんです。でも、いろんな味を知っているほうが人生がより豊かになる気がするから、嫌だったら諦めるってことではなく、もうちょっと頑張ってみるチャンスを与えてあげて欲しい。で、だめだったときは『だめか~』でいい! 深く考えなくて全然いいんです。
おいしいごはんを作ること間違いなしの料理家ママも、子どもの好き嫌いには直面しているもの。それをどう考えるか、克服させるさせないか、自分の子どもにはどうしていくのがいいか、これを機に考えてみるのもいいかもしれませんね。
お話を伺ったのは…
食育インストラクター
和田明日香(わだ・あすか)さん
1987年4月17日生まれ。東京都出身。料理家・平野レミさんの次男、和田率さんと2010年に結婚。10歳、8歳、6歳の3児の母。料理家・食育インストラクターとして、各メディアでのレシピ考案やコラム執筆、CM出演などで活躍中。2018年にベストマザー賞を受賞。著書に『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ)。『和田明日香のほったらかしレシピ』(辰巳出版)。『10年かかって地味ごはん。』(主婦の友社)がある。
10年かかって地味ごはん。-料理ができなかったからこそ伝えられるコツがあるー
和田明日香さんが毎日作っている食事を公開! 友達に教えるように話し言葉で書いたレシピは、わかりやすくて画期的!
取材・文/本間 綾