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「早く勉強しなさい」はやる気を減退させる
――宿題があってもきちんと取り組まず、ダラダラ過ごしている子どもにイライラします。どんな声がけをすれば勉強をやり始めるでしょうか。
「早く宿題やっちゃいなさい」「今やろうと思ってたんだよ!」というやりとりはよく聞かれるもの。たしかに子どもがダラダラしていると言いたくもなりますが、親から「早くやれ」と命令されると一気にやる気をなくしてしまいます。
具体的な声がけの言葉はそれぞれの子どもによって違うと思いますが、大前提として、上から押しつける、コントロールしようとする声がけはよくないです。大事なのはコーチング的視点を持つことではないでしょうか。
子どもと同じ目線で話す
コーチングでは、相手と同じ視点に立ち、一緒に考えてみるのです。「どうしてモチベーションが上がらないんだろう」という問いに子どもが答を出せないのならともに考えてみて、成果の出せるやり方を子どもが自分で考えて実行できるように伴走します。「こうやりなさい」と大人が命令してやらせても、モチベーションはなかなか上がりません。
それには、まず「なんでできないの!」と否定するのではなくて、「やる気、なかなか起きないよね」といったんは肯定する言葉をかけること。「じゃあ、どうやったらいいかなぁ」と問いかけをし、本人が何かアイデアを出してきたら、「そうか、それ考えたんだね、いいかも!」「こういうことプラスしたらもっといいかな?」と提案も加えつつ、決定するのは本人、となるように伴走していきます。
本人のアイデアが明らかに実現不可能だとすれば、決定した行為は肯定しつつ、そのメリットとデメリットを伝えましょう。さらに親からも提案すると冷静になり、積極的に行動しやすいでしょう。
ゲームやスマホをやめたからといって勉強するとは限らない
――勉強しないのはゲームをしてしまうから、ということもあります。中学受験をするならゲームはやめさせたいと思うのが親の心情ですよね。
「中学受験をするのにゲームをするなんてもってのほか」と思っている保護者は多いと思います。実際にゲームをしてしまって勉強時間が取れなくなることはよくあります。でも、本当にゲームは勉強にとって「悪」でしかないのでしょうか。
ゲームと勉強について研究をした大学教授がいます。その教授のデータによれば、たしかにテレビやゲームと、子どもの学習時間の間には負の因果関係があることが示されています。でも、1時間テレビやゲームをやめさせたとしても、2~3分程度しか学習時間が増加しないのだそうです。そうであれば子ども側の視点に立ち、「うちの子が勉強をがんばるためにゲームをどう使うか」と考えたらどうでしょうか。
そのルールも、子どもと一緒に考えましょう。たとえば、「10分ゲームをやったら50分勉強をする。勉強の間はゲーム機やスマホは遠ざける」など。親が最初から決めずに、子どもに「あとで後悔しないように、勉強もしっかりやったほうがいいよね。そのためには、どんなふうにゲームと勉強を両立させようか?」などと声をかけて考えてもらい、ちょうどいい方法にブラッシュアップしていきます。
人はだれでも、自分が決めたことは積極的にできます。本人ががんばるために少し後方で存在するのが親。主役は子どもだということを忘れないでください。
なんでもほどほどにできる子より「とがった子」が今後の社会では活躍する!
――親はつい、子どもを否定的に見てしまいますね……。
親御さんは心配のあまり、ついお子さんに悪いところに目を向けて直してあげようと思ってしまいますよね。それもわかります。でもいいところに目を向けたほうがうまくいきます。人はだれでも能力がデコボコで、いいところもあれば悪いところもあります。それをできるだけ丸に近づけて平均化するより、とがったところをどんどんとがらせたほうがいいんですよ。今の社会は役割が細分化されているので、お子さんが苦手な部分は将来、社会ではだれかが担ってくれます。それより、とがったところがないと、今後の社会では活躍できないと思います。
受験に関しても、「字が汚くてハネがきちんとできていないから減点になる」とよく言いますが、そんなことより漢字がわかっている、文章の意味が理解できるというほうが大事です。小さな部分を否定的にみられ、そこばかり練習しろと言われてしまうと、子どもはイヤになるものです。普段はダラダラしていても、短時間にグッと集中する力のある子もいます。できているところをほめて、そこを十分に伸ばしてあげたいですね。
「中学受験をやめたい」と訴えるわが子にどう対応する?
――でも、どんなに親が支援をしても、本人がどうにも乗り気になれない、親から見ても今のこの子に受験は無理かな、と思うこともあります………。
そんなときは「やめていいんだよ」と声がけしてあげてください。事実、地元には公立の中学校があるのですから、私立などの学校を中学受験しなくても行くべき学校はあるわけです。中学受験は、「しなきゃいけない受験」ではありません。究極、その子が幸せになるのが一番なのです。
親の敷いたレールに乗せようと思うのではなくて、一度レールを取っ払ってみてください。そして親子の関係を上下関係ではなくて、横並びの関係にして話し合いましょう。つまり中学受験を「やらせる」のではなくて、今、中学受験をすることが幸せなのかを親子対等に話し合いをしましょう。
そのときは、以前の記事(下記関連リンク参照)でお話しした「なぜ中学受験をするんだろう」「中学受験にどういうメリットがあってデメリットがあるんだろう」という原則的な問いをもう一度親子で考えます。そのときも、「これが正しいのよ!」ではなくて、「お母さんはこう思うけれど、あなたはどう思う?」「そうだね、そういう考え方もあるね」と、子どもの意見に耳を傾けて、全否定しないことを心がけてください。
中学受験は山あり、谷ありですが、その中で子どもとの対話を密にできれば、中学受験を体験しないときよりも、よりよい信頼関係を築くこともできるのです。中学受験をポジティブなものにするためにも、よりよいコーチングを心がけてください。