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表情が乏しいことで「怒ってる」と誤解されてしまう
発達障害の子の中には表情が乏しいと言われる子がいます。実はこれには、筋肉や神経の伝達の難しさや身体の固さ感情の分化の未熟さなど、さまざまな障害特性が関わっているのです。
表情筋を微妙にコントロールして笑顔を作ったり、驚いたり、怒ったり――。通常は無意識でやっているこれらの動作ですが、発達障害の子の中には、筋肉と神経の伝達にギャップが生じる場合があります。表情筋を動かす為に脳から指令を出したとしても、その信号が処理されにくかったりすると、自分が思うほどには口角が上がらない、目が笑っていない、ということがあります。
外から見て「怒っているの?」「気に障った?」と指摘される場合がありますが、本人はムッとしているわけではないのに、周囲からはそう見えてしまう場合があるのです。
今回は「表情に感情を出しづらい」理由と背景、それを踏まえた対策についてお話していきたいと思います。
なぜ、表情が硬くなるの?
その背景には、感情の分化の未熟さと筋肉の伝達の難しさがあります。発達障害の子は、そもそも感情そのものの捉え方や切り替えが未熟であることが少なくありません。
私たちは日常で「うれしい」「悲しい」「楽しい」「辛い」など、さまざまな感情を区別しながら表情を変化させています。ところが、感情を細かく分けることが難しい場合、「表情の変化が乏しくなる」といったことが起こります。結果として周囲から見ると「表情が硬い」という印象を受けるのです。
さらに、筋肉の動かし方に関係する神経伝達の難しさも大きく影響している可能性があります。たとえば、顔だけでなく頭皮や首まわりが常に強張っている場合、笑顔を作るための筋肉がスムーズに動かせず、柔らかい表情になりにくいことがあります。本人としては「口角を上げているつもり」でも、他人には無表情に見えたり、不自然な笑みだと受け取られてしまうことがあるのです。
空気を読めず、会話の間の取り方がわからない
表情が硬いことに加えて、「空気を読むのが苦手」「周囲の人が笑っている理由がわからない」「会話の間の取り方がうまくつかめない」などの特徴が重なると、コミュニケーションギャップがさらに広がります。たとえば、みんなで楽しく盛り上がっている場面では、自分が何について笑うのかを理解できず、周囲から浮いてしまうなどがよく見られます。
「笑顔」と「テンポの速さ」を求められるアルバイトで挫折を味わった子
これは実際にあったケースですが、この子たちが最初にぶち当たる障壁としてよく聞くのはアルバイトです。
アルバイトの募集は飲食店のサービス業が多く「笑顔」が求められる場合が多いですね。
特にアルバイトと代名詞ともいえるFCなどでは、一番はじめにつくポジションが接客なので、求められる仕事には「笑顔」が含まれます。
某FCのハンバーガーチェーンは「スマイル0円」とわざわざ表示をしていました。
笑顔ではお金は取りませんが提供している「商品サービス」として提示している訳です。つまり提供する従業員にとっては「仕事」として提供を求められるということです。
また会話のテンポが早い場所では、とっさに言葉を返せず「笑顔を作らないまま」固まってしまうことがあります。
「もっと笑顔で」と何度も言われるうちに自信を失い、長く続けるのが難しくなるケースも少なくありません。本人としては笑顔を意識していたとしても、注文を正確に聞き取ることに意識が集中すると表情まで気が回らなくなり、「二つのことを同時にこなすのが難しい」と感じてしまうのです。
可能であれば周囲に理解を求め、裏方の仕事に回してもらえるならそれが一番ですが、マニュアルのしっかりしているFCでは個別対応が難しい場合もあります。
解決のために日常生活の中でできることがあります
幼いうちから運動習慣を
まずは全身の身体を動かす運動を継続させましょう。本人の好きな運動で大丈夫です。ダンスや散歩など負担の無いものから始めましょう。推しアイドルの踊りを一緒に踊ることから始めるのもおすすめです。
全身運動として継続することが目的なので上手く出来なくても負担なく身体を動かせれば問題ありません。身体を柔らかく保つには本人が嫌がらない適度な運動を継続することです。
頭皮や顔の筋肉をほぐすケアを
顔や頭皮が硬いと感じる場合は、鏡を見ながら表情筋を使う練習をする事で動かしやすくなります。他にもリラックスさせるようなマッサージやストレッチもおすすめです。美容院でのヘッドスパや自宅での頭皮マッサージなども効果的ですが、お子さんの特性によっては「触られるのが苦手」という場合もあるので、本人が抵抗を示さない範囲で少しずつ試してみることです。最近では自分で使用できる頭皮マッサージ器もあるので利用するのも一つでしょう。
感情をうまく表情に出せないことが「自己否定」にならないような環境調整をしましょう
発達障害の子が「表情が硬い」と言われたりするのは、その子の性格や意欲の問題だけではなく、感情の分化の未熟さや神経伝達の問題から一度に沢山の処理が出来ない、そして空気を読むことや間を掴むことが難しいという特性が関係しているからです。
とくに女性は、「笑顔」を求められやすいということが、まだまだ社会的な期待としてあるため、当人も周囲もストレスを感じやすくなります。大切なのは、周囲が「うまく表情に出せない」事を正しく理解すること。そして、アルバイトをする際には、接客業などは避け、あまり表情を求められない仕事を選ぶことも検討してみましょう。
仕事には多様な種類があり、webが中心の業務であれば表情によるストレスは軽減されるかもしれません。保護者の方は、過度に疲れたり自己否定に陥ったりしないような環境調整をするアドバイスをしてあげてください。
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記事監修

健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。
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