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チックは4~6歳ごろから、症状が見られることが
チックは脳の神経伝達物質が過剰に働くことで起こるといわれています。4~6歳ごろに症状が見られることが多く、症状のピークは10~15歳ごろ。
チックは自分の意思とは関係なく声を発したり、体が動いたりしてしまいます。個人差がありますが、主に次のような症状が見られます。
音声チック
単純音声チック/「んんん」「あっ」など声を出す、咳払いをする、鼻を鳴らす、のどを鳴らすなど
複雑音声チック/不適切な言葉や性的な言葉を発する(汚言症)、言葉を繰り返すなど
運動チック
単純運動チック/まばたきをする、目を動かす、首を振る、口をゆがめるなど
複雑運動チック/叩く、腕を伸ばす、飛び跳ねるなど
(以下、菊地さんの談話)
小4から運動チックで首をくるっと回すように
菊地さん:最初に症状が出始めたのは小4です。首をくるっと回したり、まばたきが多かったりする運動チックの症状が出て、母に連れられて近所のクリニックを受診しました。ただ自分では、チックに気づいていなかったし、小4で反抗期も始まっていて、受診することに抵抗を感じていました。医師からは、チック症とは診断されずに癖だと言われました。
クリニックでは、癖だと言われたものの、両親はチック症を疑っていたようで、僕を連れずにこども病院に相談に行ったようです。反抗する僕をこども病院に連れて行くのは難しいと判断したのでしょう。
僕自身、症状を認めたくないという気持ちもありました。
中学生になると、自分の意思とは関係なく不適切な言葉が
菊地さん:症状は少しずつ変わり、中1の夏から突然「あっ」と声が出る音声チックが出始めました。中2からは、突然汚い言葉や性的な言葉を発する汚言症が出始めました。
それらは自分の意思とは関係なく出てしまいます。何時間かに数回というレベルではありません。10秒や5秒に1回のペースで「あっ」という声が出たり、不適切な言葉を発したりしてしまっていて、かなりひどい症状でした。

口内を血が出るほど噛むなどの自傷行為も
菊地さん:またチックが習慣化すると、自傷行為や強迫観念が見られることがあるのですが、僕も自分の肘でわき腹を思いきり殴り、青あざができたこともあります。さらに、「口の中の口内炎を思いきり噛む」などと思うとそのことが頭から離れず、痛いとわかっていても、何度も口の中を血が出るほど噛んでしまうこともありました。ストレスからよく口内炎ができていたので…。
それでまた、その痛みによって大きな声と汚言が出てしまい、その繰り返しという状況でした。
中3でトゥレット症と診断される
菊地さん:両親に自分から相談して、こども病院を受診したのは中3になってからです。頻繁に「あっ」と言葉が出たり、不適切な言葉を発したりすることで、まわりからジロジロ見られるようになって、自分でも「これはまずい…」と思ったんです。危機感や焦りもありました。
受診して、すぐに「トゥレット症」と診断されました。トゥレット症は、運動チックと音声チックの両方が1年以上続くと診断されます。トゥレット症は、発達障害の1つですが、僕の場合は多少、多動傾向はあるもののほかの発達障害の特性はありませんでした。
薬は抗精神病薬が処方されるのですが、合わない薬もあって、合わない薬だと、授業中に強い眠気を感じたり、ボ~としてしまったりするので、次の受診まで服薬をやめたこともありました。
人前でからかわれたり、文句を言われたりするのがつらかった
菊地さん:小学生、中学生の頃を振り返るとトゥレット症で、最もつらかったのは、みんなの前でからかわれたり、非難されたりしたことです。
小4から塾に通っていたのですが、後ろの席の子からわざと消しゴムを投げられ、「あっ」と声が出ると「うるせーよ!」と言われたり、「菊地のマネ~」と言われて首を回すマネをされたりしていました。テスト中に首がくるっと回ってしまい、「カンニングするなよ!」と言われたこともありました。
たくさんの人がいるところでクスクス笑われたり、からかわれたりすることは本当につらかったです。
当時は周囲も幼くて、トゥレット症だということも知られていなかったのでしょうがないかなと思っていますが、実際こうしたつらい経験がトラウマになり、今でも僕は若い子が集まるような場所は避けています。
【後編】周囲のあたたかさに助けられたことも。中学~現在までのお話を伺いました

取材・構成/麻生珠恵