つるの剛士さん「おバカタレントだった僕が子どもに勉強しろと言えるのか」息子を叱って大反省、自ら塾通いして初めて知った学びの楽しさ、変化した親子関係

5人のお子さんを持つ父親であり、これまで4人の中学受験を経験してきた、つるの剛士さん。中でも、親も子もすべてがはじめてだった長男の受験は、すべてが手探り状態だったと話します。ゲーム機を投げてしまったプレステ事件、そして、つるのさん自身が塾に通うという、まさかの選択……。

インタビュー【前編】では、長男の受験期に起きた出来事を軸に、親としての向き合い方がどのように変化していったのかを、実体験をもとに率直に語ってもらいました。中学受験を前に、つい力が入りすぎてしまう親にこそ読んでほしい、リアルなストーリーです。

ゲームばかりしている息子に、初めて感情が爆発

――つるのさんは5人のお子さんがいらして、そのうち上のお子さん4人が中学受験を経験されているそうですね。

つるの剛士さん(以下、つるのさん):そうなんです。我が家は、長男21歳、長女19歳、次女18歳、三女16歳、次男9歳の5人きょうだいで、末っ子の次男を除く4人は、全員中学受験を経験しています。ただ、三女はいわゆる一般的な中学受験で、上の3人は一貫校の中での内部進学にあたる試験でした。

とはいえ、親としても子どもとしても、すべてが初めてづくしだった長男の受験が、いちばん大変でしたね。内部進学とはいえ、受験は受験。何をどうサポートすればいいのかも分からず、ずっと手探りの状態でした。

――当時、息子さんは勉強をすすんでやるタイプでしたか?

つるのさん:全然でした。もう勉強が本当に嫌いで、ゲームばかりやっていたんです(笑)。

僕自身は、どちらかというと見守るほうだったんですが、ある時、妻から「全然勉強しないんだけど……」と相談されて。妻がこういう話をしてくるときって、もう限界というか、最終段階のタイミングなんですよね。そこで、「じゃあ、パパからも一度話してみようか」という流れになりました。

つるの剛士さんご家族(つるのさんInstagramより)

つるのさん:息子がゲームをしているところで、「進学試験もあるから、勉強しないと合格できないよ。もし受からなかったら、今の学校には行けなくなって、友達とも離れることになるけど、それでもいいの?」と伝えたんです。

そうしたら息子も、「それは嫌だから勉強する」と答えて、その日は一応、話がまとまったように見えました。でも実際には、そのあとも、まったく勉強しなくて……。

プレステ事件と、父の後悔

――息子さんの様子は変わらなかったんですね。そこから、つるのさんはどうされたのでしょうか。

つるのさん:相変わらず、プレステ(プレイステーション)でゲームをしている姿を見ていたら、だんだん怒りがこみ上げてきてしまって……。思わず、プレステ本体をぶん投げてしまったんです(笑)。

ゲーム中にチャットで、あまりきれいとは言えない言葉を使っていたこともあって、実はゲームに関しては、すでにイエローカードが出ている状況。そこに「勉強しない」が重なって、僕の中では完全にレッドカード、という感じだったんでしょうね。

2人の息子との写真(つるのさんInstagramより)

つるのさん:あそこまで感情的になったのは、本当に初めてだったと思います。息子も衝撃を受けていましたし、僕自身もすぐに「やってしまったな……」という気持ちになりました。

「おバカタレント」としてテレビに出ていた自分が、息子に「勉強しろ」と言えるのか

――つるのさんご自身も、かなり反省されたのでは?

つるのさん:はい、ものすごく反省しました。壊してしまったプレステは、僕のお小遣いで買い直しました。その後は長男も反省して、勉強するようになりました。

でもその一方で、息子に「勉強しろ」と言っている自分を、もう一人の自分が冷静に見ていて。「お前、そんなこと言える口じゃないだろ」って、心の中でツッコミを入れてくるんですよ。

僕自身、学生時代はまったく勉強しませんでしたし、「おバカタレント」としてクイズ番組に出ていたことは、皆さんご存じの通り(笑)。もうこれは、自分が勉強するしかないなと。それで、当時息子が通っていた塾に、僕自身が通うことにしたんです。

父が塾に通うという選択

――つるのさんご自身が、塾に通われたんですか?

つるのさん:そうなんです。息子が通っていたのは個別指導の塾だったので、先生が僕のために授業をしてくれる形で。これが、もう本当に楽しかったんですよ。

特に歴史ですね。これまで仕事やプライベートで、いろいろな場所には行ってきたんですけど、その背景や成り立ちを理解しないまま訪れていたことに、初めて気づいたんです。

知識としては点がたくさんある。でも、勉強していくと、その点と点がつながって、一本の線になっていく。その感覚が、ものすごく面白くて。

取材に答えるつるのさん

――学生時代から、歴史は勉強されていたんですか?

つるのさん:まったくしていません(笑)。このとき初めて、「学びって、分かるとこんなに楽しいんだ」って知ったんですよね。

マネージャーさんには迷惑をかけていたと思いますが、新幹線での移動中も、ずっとクイズを出してもらうくらい、完全にハマっていました。

勉強の楽しさに気づいたら、逆に子どもに言わなくなった

――そこまで楽しかったら、お子さんにも「勉強しよう」と声をかけたくなりませんでしたか?

つるのさん:それが、逆だったんです。この子たちも、僕と同じくらいの年齢になって、「勉強しなきゃいけないな」と思うタイミングが来たら、そのときは、きっとやるんじゃないかなって。

学びの楽しさを知ったら、人って自然に勉強するものなんじゃないか。そんなふうに考えるようになってからは、自分が学ぶことに夢中になっていました(笑)。

声かけは「勉強しろ」ではなく「一緒に勉強しよう」

――つるのさんが塾で学ぶようになってから、お子さんたちとの関係に変化はありましたか?

つるのさん: 当時、小学生だった長女や次女が勉強している内容と、僕が塾で学んでいることが重なることもあって、「パパも今ちょうどやってるところだから、一緒に勉強しよう」って、同じ目線で声をかけられるようになったのは大きかったですね。

長男も、その様子を見ていたからか、自然とリビングで勉強するようになって。結果的に、試験も無事に乗り越えて中学に進学することができました。

――パパが楽しそうに勉強している姿を見て、お子さんたちも影響を受けたのでしょうか?

つるのさん:どうなんでしょう……。ただ、それまでの「親と子」という関係を少し超えて、仲間意識みたいなものは生まれていた気がします。リビングでは、みんなそれぞれの課題に向き合っていて、結構真剣でしたから。

親子から、一緒に勉強する仲間へ変わった

――「親の背中を見て子どもは育つ」とも言いますが、やはり言葉より行動でしょうか。

つるのさん:そうかもしれません。その後、すっかり学びにハマってしまった僕は、保育士と幼稚園教諭の資格を取るために、2025年春まで大学生として学んでいました。リビングでレポートを書いたり、試験に向けて勉強したりする姿は、子どもたちもずっと見ていたと思います。

2025年春まで大学生として学んでいたつるのさん(つるのさんInstagramより)

つるのさん:「パパも頑張っているから、私も頑張らなきゃ」と思ってくれていたかどうかは分かりませんが、少なくとも、頑張ることが特別なことではない、そんな空気は家の中にあったのかなと。

実際、テストの結果や評価がよかったときに家族のグループLINEに送ると、子どもたちから「おめでとう」のスタンプが返ってきたりして。お互いの頑張りを報告し合ったり、喜び合ったりする雰囲気は、以前よりもずっと増した気がしています。

――その後迎えた、4人目のお子さんの中学受験。【後編】では、つるのさんがパパとしてどんな役割を担ってきたのか、親自身はどう心を整えていたのかなど、気になる「親のスタンス」について伺います。

後編はこちらから

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お話を伺ったのは

つるの剛士さん タレント

1975年5月26日生まれ。二男三女、5人の子どもの父親。1997~98年放送の「ウルトラマンダイナ」で主人公を演じ注目を集めた後、俳優・歌手・タレントとして幅広く活躍。仕事と並行して積極的に育児に関わり、2010年、2016年に2度の育児休暇を取得。ベストファーザー賞を受賞している。

2022年に幼稚園教諭二種免許、保育士資格を取得。2025年には東京未来大学こども心理学部通信課程を卒業し、認定心理士資格取得に必要な単位をすべて修了。現在は非常勤の幼稚園教諭としても勤務している。

近著に「心はかけても手はかけず」 つるの家伝統・見守り育児 つるのの恩返し(講談社)。
Instagram:@takeshi__tsuruno
X:@takeshi_tsuruno

著・イラスト:つるの剛士 講談社 1,650円(税込)

勉強に夢中になる子、海外へ挑戦する子――それぞれが自分の興味や選択を大切にしながら、のびのびと育ってきた5人の子どもたち。結婚20年を超えても変わらない、夫婦の穏やかな関係性。そんな“つるの家”は、どんな子育てをしてきたのでしょうか。本書では、つるの剛士さん本人のロングインタビューを軸に、母、3人の妹、妻、そして5人の子どもたちへの取材を通して、「心はかけても手はかけず」を大切にしてきた、つるの家流の見守り育児と家族のかたちが丁寧に描かれています。

取材・文/篠原亜由美  撮影/五十嵐美弥

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