【つるの剛士さん】娘の中学受験、志望理由はまさかの制服。それでもいいと思えたワケは?5児のパパとして意識してきた子育てスタンス、受験期の家庭に必要なこと

上のお子さん3人は内部進学という形で受験を経験してきたつるの剛士さん。4人目のお子さんでは、初めて一般の中学受験を経験しました。
【後編】では、パパとしての役割や、親自身の心の整え方など、受験期の家庭に必要な「親のスタンス」を掘り下げます。受験が近づく今だからこそ、心に留めておきたいヒントが詰まっています。

娘の志望理由はまさかの制服。それでもいいと思えた理由

――つるのさんは、4人のお子さんが中学へ進学する際に試験を受けられていますが、それぞれ進路はどのように決めてこられたのでしょうか。親からアドバイスをすることはありましたか?

つるの剛士さん(以下、つるのさん):いやもう、本当にみんな全然タイプが違うんですよね。長男は勉強はあまり得意じゃないけど、自然が大好きで、興味を持ったことにはとことん突っ込んでいくタイプ。長女は、そんな長男を見て育っているからか、しっかり者で思いやりもあって、わりと俯瞰で物事を見るタイプです。

次女は長男と少し似ていて、野心家というか、みんなと同じ道を選ぶより「自分はこっち」と決めて進んでいくタイプ。三女はその下で、兄や姉を見ながら、どっしり構えて空気を読みつつ、自分なりに道を選ぶタイプですね。

こうして話しているだけでも、全然違いますよね。だから、「どうしたいか」は、もう子ども本人にしか分からないんだろうな、と。僕も妻も、「この子にはこうなってほしい」とか、「この道を歩んでほしい」と考えたことはありません。いい意味で、期待ゼロです。

つるのさん:だって、うちの父親は銀行員という、かなり堅い仕事をしていたのに、僕は芸能人ですから(笑)。こんなの、親がどうこう計算できる話じゃないですよね。

いくら親が「こっちのほうがいいんじゃない?」と言ったところで、思い通りになることは、まずない。もし一時的にうまくいったとしても、どこかで、「私、本当は違う道に行きたかったかも」と思う瞬間が来るんじゃないかなと。

だから、相談されたら全力で向き合いますが、最後に決めるのは子ども。そこは、ずっと変えていません。

最終決定は子ども本人。自分で選ぶことが納得につながる

――4人目の娘さんの中学受験でも、そのスタンスは同じでしたか?

つるのさん:はい、基本は本人の意向です。受けたい学校を受ける、というシンプルな考え方でした。

三女が今通っている学校は、当時の三女の成績から見ると、少し余裕のある学校だったんです。三者面談では、「ほかの学校も検討してみては?」と先生から言われることもありました。親としては、その気持ちも分かる。なので、「先生はこう言ってたけど、どうする?」と、選択肢として伝えました。

そうしたら、娘は「うーん……制服が好きだから」って(笑)。

一番の理由が制服かとは思いましたけど、本人が決めたこと。今はその学校に、楽しそうに通っています。

娘さんたちとクリスマスパーティをするつるのさん(つるのさんInstagramより)

――理由によっては、「あとで後悔するのでは」と心配になる親御さんもいそうです。

つるのさん:でも、娘には「自分で決めた」という実感が、ちゃんとあると思うんですよね。

実は三女、僕の子どもとは思えないくらいの勉強家で(笑)。塾にも通わず、自分で勉強して、希望していた学校に進学しました。勉強も部活動の弓道も、どちらも本気で取り組んでいます。

仮に、将来どこかで「あっちの道もあったかも」と思うことがあったとしても、自分で選んだ道なら、納得できる。その経験は、きっと次の選択につながっていくんじゃないかなと思うんです。

「心はかけても手はかけず」つるの家のスタンスは受験期も同じ

――先ほど、志望校選択のお話の中でも「最終的な決定権は子ども」という話がありました。受験において、親として大事にしているスタンスを教えてください。

つるのさん:僕たち夫婦は、普段から「心はかけても手はかけず」という姿勢で子どもたちと向き合っているんですが、受験のときも基本は同じでした。

特に、僕自身が学びにハマってからは、「勉強しなさい」と言うことは、本当になくなりましたね。受験が大変なことも、模試の結果の重みも、子どもたちはちゃんと分かっている。そこに親が何か言ったところで、あまり意味はない気がして。

だから、アドバイスをするというよりは、話を聞く。受験の時期も、いつも通りの家でいることを意識していました。

外で頑張る受験生にとって、家は心を休める「安全地帯」

――「いつも通りの家」という言葉が印象的ですが。

つるのさん:僕にとっての「いつも通りの家」は、帰ってきた子どもにガミガミ言わない家、ですね。学校や塾から帰ってきて、かばんをポンと放り投げて、そのままベッドに飛び込まれたら……何か言いたくなる親御さんの気持ちももちろん分かりますが、僕だったら言われたくない(笑)。だからその場は「おかえりーお疲れさん」だけ。

子どもって、外では思っている以上に気を使っていると思うんです。だから、せめて家にいる間くらいは、心を緩められる場所であってほしい。受験期はなおさらですよね。

「心はかけても手はかけず」つるの家伝統・見守り育児を書いた著書(つるのさんInstagramより)

つるのさん:家は、子どもにとっての「安全地帯」。勉強をさせる場所というより、安心して戻ってこられる場所でありたいと思っていました。テストの結果がどうであれ、「ちゃんと見ているよ」「信じているよ」という姿勢を、言葉じゃなくても伝えられたらいい。それだけで、子どもの気持ちは少し落ち着くんじゃないかなと思っています。

子どもを比較しない。信じて見守るのみ

――受験に反抗期が重なると、戸惑う親御さんも多いと思います。

つるのさん:反抗期ですか(笑)。それはもう、「おめでとうございます」ですね。誰もが通る道ですし、成長している証拠。息子もありましたよ。中学進学の時期ではなかったですけど、急に漫画の「ゴルゴ13」みたいな、何かを狙っているような目つきになって(笑)。

親からすると「え、どうした?」って思いますけど、本人もよく分かっていない状態なんですよね。だから、子どもが自分で道を切り開くのを信じて見守るのみです。

――少し前の子どもの姿と比べてしまうことも、ありますよね。

つるのさん:ありますよね。「あの頃は、もっと素直だったのに」って。でも、比べない。これは意識しています。他人とも、兄弟とも、子ども自身の過去とも、そして親である自分たちの子どもの頃とも比べない。

時代も環境も違いますからね。だから、何とも比較しないようにしています。

ママのケアはパパの大事な役目

――では、「パパ」だからこそできる役割は、どんなところにあると感じますか?

つるのさん:僕は、「ママを気にかけること」だと思います。多くの家庭で、子どもの日常をいちばん近くで見ているのは、やっぱりママですよね。そうすると、どうしても一緒に気持ちが張り詰めてしまう。

そんなとき、パパは少し引いたところから全体を見られる立場にいる。だから、どっしり構えて、家族みんなが安心できる空気をつくる。受験で家の中が「闘争モード」になりそうなときに、「いや、これは挑戦だよね」って戻してあげる。そうやって、家の空気を整える役割を担えたらいいなと思っています。

仕事でも趣味でもいい。ときには子どもから意識を離す

――パパとしてのつるのさんは、受験期に張り詰めた精神状態になることはありませんでしたか?

つるのさん:僕はギターを弾いたり、釣りをしたり、サーフィンをしたりと、趣味がいろいろあるので、自分なりにちゃんとリラックスできていたと思います(笑)。それに、自分自身も大学のレポートや試験があって、やることが結構あったんですよ。

趣味でも仕事でも、何でもいいと思うんです。とにかく、子どもにベクトルを全集中させないこと。それが、結果的に親子ともに楽になると思っています。

親はコーチにならず伴走者に

――親子ともに、ですか?

つるのさん:親の期待が大きすぎたり、気持ちが重くなりすぎると、「ママに怒られたらどうしよう」とか、「パパが悲しんだらどうしよう」といった余計な気持ちが、子どもの中に入り込んでしまう。そうなると、かえって勉強に集中できなくなってしまうんですよね。

一方で、親の側も、受験がすべてになってしまうと、不安ばかりが大きくなって、子どもが失敗しないようにと先回りしてしまう。でもそれって、子どものためのようで、実は親自身が失敗したくないだけだったりもする。

つるのさん:そうなると、親も子も、どんどん苦しくなってしまいます。だから、子どもに向けるベクトルは「心配」ではなく「信頼」。親は「コーチ」ではなく、一緒に走る「伴走者」でいること。ここは、すごく大事なポイントだと思っています。

――つい「コーチ」のような立場になってしまうこともありますよね。

つるのさん:ありますよね。アドバイスしたり、評価したり。でも、親は隣で一緒に受験までの道を走る存在。その過程をずっと見ているからこそ、たとえ結果が思うようにいかなかったとしても、「頑張ってたじゃん」と言ってあげられる。

結果を評価するよりも、そこに至るまでの過程を承認する。それが、子どもにとっていちばんの支えになるんじゃないかなと思います。

つるのさんからのメッセージ「自分たちの子どもなんだから絶対に大丈夫」

――子どもが頑張るためには、親の精神状態も大きく影響しそうですね。

つるのさん:子どもは、本当に敏感ですからね。親の不安は、親だけで解消する。夫婦でもいいし、友達でもいい。とにかく、大人同士のコミュニティで処理することが大切だと思います。子どもに預けない、ということですね。

――それでも、中学受験本番が近づくと不安が大きくなりそうです……

つるのさん:ここまでいろいろ話しておいてなんですが、僕、実はマニュアル本とか体験談って、あまり好きじゃなくて(笑)。だって、ゲームとは違って、同じ子どもは一人としていない。共通の成功法なんて、ないと思うんです。

でもきっと、真剣に向き合っている親御さんほど、いろんな情報と照らし合わせて、不安も大きくなってしまうんでしょうね。今、これを読んでくださっている方も、もしかしたらそうなのかな……

でしたら、そんなパパママへ、最後に僕からとっておきのメッセージを。
「お子さんは、あなたたちご夫婦の子どもなんだから大丈夫! 絶対に大丈夫ですよ!」

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お話を伺ったのは

つるの剛士さん タレント

1975年5月26日生まれ。二男三女、5人の子どもの父親。1997~98年放送の「ウルトラマンダイナ」で主人公を演じ注目を集めた後、俳優・歌手・タレントとして幅広く活躍。仕事と並行して積極的に育児に関わり、2010年、2016年に2度の育児休暇を取得。ベストファーザー賞を受賞している。

2022年に幼稚園教諭二種免許、保育士資格を取得。2025年には東京未来大学こども心理学部通信課程を卒業し、認定心理士資格取得に必要な単位をすべて修了。現在は非常勤の幼稚園教諭としても勤務している。

近著に「心はかけても手はかけず」 つるの家伝統・見守り育児 つるのの恩返し(講談社)。
Instagram:@takeshi__tsuruno
X:@takeshi_tsuruno

著・イラスト:つるの剛士 講談社 1,650円(税込)

勉強に夢中になる子、海外へ挑戦する子――それぞれが自分の興味や選択を大切にしながら、のびのびと育ってきた5人の子どもたち。結婚20年を超えても変わらない、夫婦の穏やかな関係性。そんな“つるの家”は、どんな子育てをしてきたのでしょうか。本書では、つるの剛士さん本人のロングインタビューを軸に、母、3人の妹、妻、そして5人の子どもたちへの取材を通して、「心はかけても手はかけず」を大切にしてきた、つるの家流の見守り育児と家族のかたちが丁寧に描かれています。

取材・文/篠原亜由美  撮影/五十嵐美弥

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