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小3で決めた第1志望。ブレなかったことが、受験の軸になった
――桃太郎くんは中学受験をはじめたときに第1志望が決まっていて、それが最後まで変わらなかったのが印象的でした。成績やクラス替えをきっかけに志望校が揺れるご家庭も多いと思いますが、桃太郎くんが最初に第1志望校と出合ったのはいつだったのでしょうか。
うえださん:小3のときに、テレビの特集で第1志望になる学校を観たのがきっかけでした。生徒さんの雰囲気や部活動の楽しそうな様子に「一目ぼれ」だったようで、最後まで全然ブレなかったですね。小5のときには、ほかの学校の学園祭にも行って楽しかったようですが、「やっぱり第1志望の学校がいい」と言っていました。

――クラスが上がると、周囲から「もっと上の学校を狙えるんじゃないか」という声が出ることもありますよね。桃太郎くんはクラスが上がってもそうはならなかったんですね。
うえださん:桃太郎は最初から行きたい学校がはっきりしていたので、「偏差値を上げるための受験」じゃなくて、「この学校に受かるために、今なにが必要か」を考える受験でした。それはすごくよかったと思っています。クラスや成績の変動はもちろん気になりましたが、「じゃあ、もっと上の学校を目指そう」ではなくて、「第1志望に近づいたね」という話しかしなかった。受験の軸が決まっていたから迷いが少なかったのかなと思います。
――志望校が決まっている一方で、教科面では課題もあったそうですね。4教科のバランスはいかがでしたか。
うえださん:理科と社会は得意な方でしたが算数と国語が弱く、それを最後まで引きずりました。難易度に関係なく、初見の問題は一定の割合で間違えてしまいました。4教科受験では算数、国語の配点が高いので、それには最後まで足を引っ張られました。過去問を解くようになり、やれることはやりましたが、基礎力の大切さを痛感しました。

夫が舵取り。小4から受験スケジュールをイメージ
――お父さんが受験の舵取り役を担っていたことも大きな特徴だと感じました。夫婦で「こういう風に中学受験をやろう」と話し合ったのでしょうか。
うえださん:そうですね、最初から「第1志望の学校に行かせるためにはどうするか」という感じで進んでいましたね。桃太郎が4年生の頃から夫が「2月1日はこの学校を受験して、2日は……」ともう受験スケジュールを組んでいたので、私が「まだ早くない?」と(笑)

――4年生から併願スケジュールを考えるのはかなり早いですね(笑)。桃太郎くんは塾に通っていましたが、家庭学習はお父さんが見ていらっしゃったそうですね。
うえださん:私は漫画家で、家で仕事をしているので、どうしても子どもと一緒にいる時間が長くなるんですよね。ずっと一緒にいる私が、桃太郎の生活も勉強も全部見ていたらたぶんお互いに限界が来ていたと思います。
夫は中学受験を経験しているので、夫を全面的に信頼して任せていました。そのおかげで、桃太郎が6年生の夏休みに、3歳下の弟、金太郎と私で1泊2日の旅行をしました。兄が中学受験をしているからといって、金太郎に「我慢しなさい」と言うのはちょっと違うなと。それも私が桃太郎の勉強を見ていなかったからできたことです。
――うえださんからご主人への信頼が深いですね。
うえださん:夫が桃太郎のことをちゃんと考えてやってくれてるのは分かっていたので、最初から最後まで夫の考え方を尊重していました。
――桃太郎くんが小6のときは、お父さんとの関係が厳しいときもありましたね。それを乗り越えての受験。結果を待つ親のメンタルが一番揺れる時期でもあります。うえださんご夫婦はその時間を、どんな気持ちで過ごしていましたか。
うえださん:受験なので、合格も不合格もあります。私は心がすり減りました。時には結果の画面を何回も見直して、「システムの不具合じゃないか」って思ったりして。私も緊張と不安でなかなか勝つイメージができないときもあったのですが、桃太郎の前では「いけるよ、いけるよ!」と言い続けました。親が不安定だと、子どもがグラグラするのも分かっていたので。
夫は終始、ポーカーフェイスを貫いていたのですが、後から聞くと「心の中は大荒れだった」と言っていました(笑)。
不安な夜は、寝付くまでそばに
――受験がはじまって毎晩、桃太郎くんが寝るタイミングでうえださんがお声がけされていましたね。
うえださん:金太郎は、まだ私に「隣で寝てほしい」と言うので、3人で寝室にいきますが、金太郎が寝たら「じゃあおやすみ」と桃太郎に言って私は部屋を出ます。でも受験がはじまると桃太郎が不安になってしまって、私に「一緒にいてほしい」と言うので、桃太郎が眠りにつくまで励ましてやっていましたね。
――不安の中、最後まで桃太郎くんは挑戦されましたね。
うえださん:彼の一番の長所は粘り強さなんです。根拠のない自信を持ちがちなんですけど(笑)、それが中学受験でいい方向に働いた。親としては「子どもを信じるしかない」というのが正直なところでした。
「私、穏やかそうに見えますか? 全然(笑)」
――ところで、漫画やSNSを拝見していると、うえださんはとても穏やかな方という印象を受けます。
うえださん:全然そんなことないです(笑)。漫画でのやりとりは、私が桃太郎に繰り返し言ってきたことの中の一場面。ページの都合上カットしているだけです(笑)。
本当に、子どもっていらんことばっかりするんです。そういうとき私は、桃太郎に落ち着いて話をするようにしていましたが、まあ、聞いてくれない(笑)。鉛筆でいらんところを塗る。走るなって言っても走る。飛ぶなって言っても飛ぶ。4、5年生くらいになってくると、家だけで気をつけていてもどうにもならないことを覚えて帰ってくるんですよね。下ネタを言ってみたり、ゲームをしながら「クソ」とか乱暴な言葉を使ったり。
怒りって、一個のきっかけで「あのときも」「こないだも」と思い出して、どんどん膨らむじゃないですか。話しているうちに、自分でも喋りながら怒りが増幅しているなと気づくこともありましたよ(笑)
――それでも、基本姿勢としては「寄り添う」ことを大切にされていた。

うえださん:桃太郎が自分で決めたことだとは言うものの、中学受験は勉強にかける時間が本当に多い。それを小学生がやるわけで、本人が「合格したい」と言いながらも、遊びたい気持ちはどうしてもあると思います。私が「これをやりなさい」と桃太郎に押し付けても桃太郎にとってはキツイ。ある程度は目をつぶり、それでも「今が踏ん張りどころでしょ」という場面では、厳しく言うようにしました。
弟には兄の経験を活かす。次の受験に向けて
――金太郎くんも受験をされるそうですね。桃太郎さんと金太郎さんはタイプが違うとか。
うえださん:桃太郎の受験が終わった直後に、金太郎に「どうする? 中学受験、やらなくてもいいよ」と聞いたんです。そしたら、「俺は頑張れる」って言って(笑)。それで、じゃあやってみようか、という感じでした。
低学年の頃は2人それぞれ別の通信教育を受けていたくらい、タイプが全然違います。金太郎はせっかちで、慣れないことをすごく嫌がる。だから、できるだけ早く塾の環境に慣れさせたくて、3年生から桃太郎が通っていた塾に入れました。
――桃太郎くんの受験で金太郎くんに活かしたいことはありますか?
うえださん:桃太郎は算数は最終的になんとか形になりましたが、国語は最後まで課題が残りました。だから金太郎には、国語の力を早めにつけたいと思って工夫しています。
著書の監修をしてくださった西村創先生のお知り合いの方に教えていただいたやり方があるんです。文章を「。(句点)」で区切って、私と金太郎が交互に読む。金太郎に1人で読ませると、文字は目で追っているけれど、内容が入っていないんですね。このやり方なら、集中できているかな、とあれこれ工夫しています。
「悔いのない中学受験」って?
――最後に、「悔いのない中学受験」とは何だと思いますか。
うえださん:難しいですね……。振り返ると、こうすればよかったというのは絶対にあります。でも、第1志望に100%挑戦できた。全力を尽くして終わった。その感覚が残る受験なら、後悔はしないんじゃないかなと思います!
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2025年2月、中学受験に挑戦したうえだ家。もともと受験を考えていなかったごく普通の家庭でしたが、長男が入学した公立小学校は、周囲の多くが中学受験を目指す環境でした。情報の多さに戸惑い、思うように伸びない成績や、親子関係の変化に悩む日々。準備段階から本番までの葛藤や気づきを、リアルな視点で描いたコミックエッセイです。受験指導の専門家による解説コラムも収録。これから中学受験を考える家庭に、そっと寄り添う一冊です。
お話を聞いたのは
Instagramのフォロワーは12.6万人。livedoor公式ブロガーとして、小学生の2人の息子を中心にした日常を、率直でユーモラスなコミックエッセイとしてブログやInstagramで発信している。現在は、KADOKAWA児童書ポータルサイト「ヨメルバ」にて、『うえだしろこの「まなむすこは 学びの 日日是好日」』を連載中。