龍たまこさんは、3人のお子さんを育てる人気絵日記ブロガー。漫画で綴られる子どもたちとの日常は、子育て中のママパパにとっては共感必至です。そんなたまこさんの次男で今年小学校に入学した「ゆうたろうくん」は、発達に特性があり、現在は小学校の普通級に通いながら、放課後デイを利用しています。
今回はたまこさんに、ゆうたろうくんが通った療育について、入学準備や放課後デイについて伺いました。
目次
保育園の先生からの指摘をきっかけに、療育に通うことに
――次男のゆうたろうくんの発達の特性がわかったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。
龍たまこさん(以下たまこさん):保育園の担任の先生から、集団からの遅れや癇癪、手先の不器用さなどを指摘されたことがきっかけでした。家庭で見ている時と、集団に入った時ってやっぱり全然違うんですよね。コロナ禍だったこともあり、集団での息子の姿を見る機会がほとんどなかったので、先生からの話を聞いて、はじめて具体的に息子の保育園での様子を知りました。
――突然のことで驚かれたのではないでしょうか。
たまこさん:それまでは、息子がもしかしたら発達障害かもと考えたこともありませんでした。先生からの指摘にショックがなかったわけではありませんが、それよりも、息子の発達の特性を見過ごすことの方が嫌だったので、見つけてもらってよかったという気持ちの方が強かったです。
療育に通って、自分で「SOS」を出せるようになった
――その後、療育に通うことになったのですね。
たまこさん:息子の場合は、ST(言語療法)とOT(運動療法)という2種類の療育を受けることになりました。STでは相手とコミュニケーションをとること、OTでは遊びながら体幹を鍛えることを中心にやっていました。発達凸凹の子って体幹が弱いことが多いそうなんです。体幹がしっかりしてないために、座っていてもすぐに姿勢が崩れてしまう。手先にも力が入りづらいので、筆圧が弱くて、文字を書くのが苦手だったり、お菓子の袋を開けられないとか、そういうことにもつながってくるそうなんです。
――療育に通われてみて、どのような点がよかったですか。
たまこさん:療育に行ったからといって、「苦手」が「得意」になるわけではなく、苦手なことは今も苦手なままです。 ただ、その苦手なことに対してどう対処するかっていうことを学べたと思うんです。
以前の息子は、困ったことがあるとフリーズしてしまって、何も言えなくなってしまっていたのですが、療育の先生とのやり取りの中で、 「助けてください」とか「手伝ってください」とか言えばいいんだということを経験して、困った時に周りにちゃんSOSを出せるようになりました。それが1番大きかったと思っています。
それに、STもOTもマンツーマンでやってもらえるので、誰かと比べることなく、できるようになったことを褒めてもらえたこともよかったです。私自身もそうだったのですが、集団生活の中だと、どうしても「自分だけできない」とか「自分はダメだ」とか、そういうことが積み重なって、運動が嫌になったり、恥ずかしくなったりしてしまいますよね。でも療育でできることを褒めてもらったことで、自信がついたと思います。
入学前の放課後デイ探しは、早めの行動がカギ!
――小学校の入学準備は大変でしたか?
たまこさん:子どもの発達に関しては、オープンにしていない方もいるので、周りとも情報交換しにくいんですよね。放課後デイサービス(放課後デイ)を探すために役所の福祉課に行っても、書類をもらっただけで、何をどうすればよいのかわからず、私は動き出すのが遅くなってしまいました。でも、後で聞いた話では、人気のある放課後デイはだいぶ前から申し込みをしている人も多いようです。
結局、もらった書類に書いてあった相談事業所に電話をかけて相談したところ、トントン拍子に話が進みました。自治体によって差があるようなのですが、私がお世話になった相談支援事業所の支援員さんは、こまめに連絡とってくださるし、 「じゃあ、ここに相談しましょう」「あそこに見学行きますか?」みたいな感じで、その場で先方に電話してくださったり、見学に付き添ってくれたりと、本当に助かりました。
息子の場合、入学前に児発(児童発達支援センター)に通うことになったので、まず、保育園の先生を交えた話し合いがあり、その後、放課後デイの方との打ち合わせが2回ぐらいありました。それとは別に、役所の福祉課の方が家にきて、生活状況や、生まれてから今までの発育状況の聞き取りもありました。
小学校は普通級に通いながら、放課後デイを利用
――今、息子さんは普通級に通いながら放課後デイを利用されているのですね。
たまこさん:普通級か支援級かは、家庭の希望を尊重してもらえますが、学校側も先生が足りなかったりして、支援級に入りたくても、入れないというケースもあるみたいです。息子は、普通級+支援員さんのような形になりました。
そして週4回、2つの放課後デイを利用しています。放課後デイと一言で言っても、それぞれ特色があるんですよね。息子が行っているのは、ひとつは保育士さんが中心となっているアットホームな事業所で、宿題をしたり、近くの公園で遊んだりして過ごしています。生活力を身につけるということも考えてくれていて、長期休暇のときはお料理をしたり、外に買い物に行ったりということもあるようです。先日、お弁当を持たせた時は、食べ終わったお弁当箱を先生と一緒に洗って持ち帰らせてくれて感動しました! もうひとつの事業所は運動に力を入れていて、グループに分かれて遊んだり、体を動かしているようです。
どちらの事業所も、スタッフの方が学校まで迎えに行ってくれます。ひとつの事業所は完全送迎なので、帰りも自宅まで送り届けてくれます。もう1カ所はお迎えが必要なので、うちの場合は私の母にお迎えに行ってもらうことが多いです。
長期休業のときも普段と変わらず見てもらえて、送迎もしてくれるのでありがたいです。
入学後に出てきた意外な困りごと
――学校生活で困ったことはありましたか?
たまこさん:小学校に入学して最初に出てきた困りごとは「提出物を出せない」「忘れ物が多すぎる」でした。学習面やお友達との関係で何かトラブルが出てくるかなと心構えはしていましたが、これは想定外でしたね。保育園のときはほぼ親が持ち物を準備するし、先生がしっかり声かけしてくれるので、小学生になって急に目立つようになったのだと思います。
視覚に訴える方法で忘れ物を減らす対策
――困りごとが出てきた時に、気をつけたことはありますか?
たまこさん:気をつけたのは子どもを責めないことです。忘れ物も「何で持って行かなかったの!」と言ったところで、本人はわかっていないんですよね。息子の特性がわかるから、口で伝えるのではなく、視覚情報で対策することにしました。
視覚といっても、文章にしてしまうと難しいんですよね。文章を順番に読むって意外と高度な技術なんです。なので、忘れ物や提出物は、何を出せばいいかわかるように、放課後デイの事業所ごとに大きく名前を書いたファイルを作って、その中に提出物を入れています。学校用の連絡袋は別に作って、ランドセルを開けたところに、今日することや連絡を書いたパスケースをぶら下げています。これがやっぱり目に入るみたいで今のところ効果がありました。
あとは連絡帳にめちゃくちゃ細かく、「今日はこれを持たせています」とか「集金のお金を持たせています」とか書いて、先生と密に連絡を取るようにしています。
学校も変わってきているから大丈夫! 心配なことは入学前にしっかり相談を!
――お子さんの発達グレーや、発達凸凹などで心配を抱えているママやパパにメッセージをお願いします。
たまこさん:私もそうなのですが、昔は「発達障害」なんて言葉もなくて、ただ見過ごされていて、大人になってからやっとわかるパターンもありますよね。でも、そこに至るまでに自尊心が削れてしまっているんですよね。人と関わることとか、社会に出ることが怖くなったりしてしまっているんです。
だから、発達障害があってもなくても、自分の特性を知っておくって大切なことだと思うんです。早いうちから「自分はこれがちょっと苦手だな」っていうのがわかっていれば、無駄に自分を責めなくていいんです。「助けて」とか、「ちょっと手伝ってほしい」って言ったら、手伝ってもらえる。私たちはスーパーマンではないから、何でも自分でできるようになることが大事なわけではないと思うんです。
小学校入学に関しては、とにかく就学相談のときに先生に心配事は全部話してみるといいと思います。療育に行かれている場合は、そこで診断書や意見書をももらえると思うので、 それを持って行くといいですよ。
放課後デイの方が、学校に子どもの様子を見に行ってくれたりもするんですよ。困りごとが出てきた時に、第三者も入ってしっかり支援していくっていうシステムもできているので、 そんなに不安にならなくても大丈夫だなと思っています。
今の親世代が小学校に通っていたのって、だいたい30年くらい前の話じゃないですか。でも、その時の感覚とは、もう全く違うので。なので、大丈夫だよ! とお伝えしたいです。使えるものは全部使って、やっていきましょう!
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取材・文/平丸真梨子