小学校1,2年生向けのおすすめ
丸善丸の内本店 木村さん推薦
『おろしてください』(有栖川有栖・ 作 市川友章・ 絵 東雅夫・編 岩崎書店)
怖い絵本と言われたらまず最初にうかぶ、岩崎書店の「怪談えほん」シリーズ。読んだら絶対に電車に乗れなくなること間違いなし!!! 怖いもの好きのあなた、ぜひぜひぜひ読んでみて下さい。後悔はさせません。いや、ある意味後悔しかしないかも。
【読書感想文ポイント】
知らない道を通ってみたり、いつもの裏山をちょっと奥まで入ってみたり、日常のちょっとした冒険は子どもたちにはつきものです。でも、その冒険は、こんな“こわ~い”瞬間が隣り合わせかもしれない、そして、帰れるはずのおうちに、もし帰れないできごとが起きてしまったら……と、自分に置き換えて想像すると、本当にぞぞっとするお話です。
「自分がどんなときにぞぞっとするか」「おうちに帰れないような怖いことが起きたらどうしよう?」などと、この絵本と絡めて考えを述べると、真に迫った読書感想文につながりますよ。
ジュンク堂書店池袋本店 山﨑さん推薦
『絵本遠野物語 ざしきわらし』(柳田国男・原作 京極夏彦・文 町田尚子・絵 汐文社)
「ざしきわらし」って知ってる? その神の姿は、一様に童子だという。座敷わらしがいる家は栄えるといわれている。だけど居なくなった家は……どうなるか知ってる?
静かにひっそりと背筋が冷える。ずっと居てくれたらいいけど、でも、居なくなったら……。
【読書感想文ポイント】
遠野物語とは、岩手県遠野地方に伝わる逸話などを記した説話集です。一般的に「ざしきわらし」という妖怪は、姿が子どもで家を栄えさせるというところから、良い妖怪のイメージがありますが、それが“去ってしまったら”という怖さをこのお話は伝えます。
この絵本では、なぜざしきわらしが去ってしまったのかは何も描かれてはいません。「突然、不運なことが起こったら?」「妖怪って、人間にとってどんな存在なのか」などを深く掘り下げて考えることができるお話です。
小学3,4年生向けのおすすめ
ジュンク堂書店上本町店 米谷さん推薦
『注文の多い料理店』(宮沢賢治・作 しまだむつこ・絵 偕成社)
「どなたもどうかお入りください。けっしてご遠慮はありません」
二人の紳士が山奥でたどりついた西洋料理店の入り口にはそうありました。次第に異界に迷い込んでいく不安感。最後にあっと言わされる、切れ味の鋭さ。まさに名作中の名作!
絵本としても何度も刊行されていますが、この挿絵がいちばん、こわいです。
【読書感想文ポイント】
宮沢賢治のあの名作童話を原文そのままに絵本化した本作は、挿絵によって宮沢賢治の描くブラックユーモアをさらに具体的に子どもたちに伝えてくれます。
最初は不遜な態度だった紳士たちが山猫にどんどん追い込まれていく様は、小気味よくもありますが、ありえないシチュエーションなのに、都合よく信じ込んでしまう流れには、「こんなことって今の時代にも意外とあるかも?」という視点が生まれてきます。自分だったら、どんなことに騙されてしまうだろう? と怖さの裏側を考えるきっかけにもなりそうです。
ジュンク堂書店あべのハルカス店 森口さん推薦
『ちょっとこわいメモ』(堀川理万子 作・絵 あかね書房)
ゆうとが書いた「ちょっとこわいもののメモ」からなる、よっつのおはなし。
おそるおそるよみすすめれば、気がつけばおはなしのなかにいるかのよう。つきまとう、ぞわぞわするこのこわさ、ほんとうに「ちょっとだけ」?
【読書感想文ポイント】
薄暗い路地、ぬめぬめした学校のプール、空き地に捨てられたテレビ。怖がりのゆうとくんが、「ちょっとこわいかも」と思ったものをメモにしていきます。
読んだ後、「自分にとってこわいものってなんだろう?」と、メモを取ってみると、自分の苦手なもの、いやだと思うものが浮かび上がってくるかも。そしてそれが、自分を見つめなおすポイントになるかもしれません。
小学校5,6年生以上のおすすめ
ジュンク堂書店藤沢店 鈴木さん推薦
『二ノ丸くんが調査中』(石川宏千花 偕成社)
今日太はクラスメイトの二ノ丸くんのことが気になって仕方ない。ふつうの小五男子っぽくないし、歯に衣着せぬ物言いにぞくぞくしてしまう。そんな、意味不明でおもしろい二ノ丸くんの興味関心は都市伝説について調査すること。
『記憶をなくせるトンネル』二ノ丸くんはちゃんと忠告したのにね。『生きかえり専用ポスト』では伝えわすれの恐ろしさを。生まれたての都市伝説の『アンジェリカさん』。そして黒丸の本領発揮な『黒い制服の男たち』。
冷静な二ノ丸くんと天真爛漫な今日太の凸凹バディっぷりにも注目!
めでたしめでたしで終われない!?となりに潜む不思議な世界。さぁ、これは黒丸(ホンモノ)かな?白丸(ニセモノ)かな?
珠玉の都市伝説があなたをぞくぞくさせてくれる連作短編集。
【読書感想文ポイント】
小学生が大好きな“都市伝説”! 二ノ丸くんは、そんな都市伝説を調べています。
日常に潜む都市伝説、深入りしない方がよいとはわかっているのに、なんで惹かれてしまうんでしょう?
都市伝説ってどうやって生まれるんだろう? なんでみんな伝えていくんだろう? 自分の周りにはどんな伝説がある?など、ドキドキワクワクしながら考えていくと、読書感想文がノリノリで書けますよ!
丸善丸の内本店 広瀬さん推薦
『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー ポプラ社)
ドラキュラや狼男などとともに、ハロウィンの仮装でもおなじみのフランケンシュタイン。そのキャラクターは知っていても原作を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。
およそ200年前に若干20歳の女性によって書かれたこのお話は、じっくり読めば読むほど怪物の姿ではなく、人の心にひそむ怖さが際立ってきます。美しく、悲しく、やるせない物語です。
【読書感想文ポイント】
フランケンシュタインとは人造人間のモンスターの名前だと思われていますが、本当は、人造人間を作り上げたヴィクター・フランケンシュタインの名前からきています。
ヴィクターは身勝手な興味から、死体を使って人間を作る研究に熱中し、ついに人造人間を完成させます。しかし、それは美しい姿ではなく巨大で不格好な化け物だったため、人造人間を放置して逃げ出します。身勝手に生み出されたにもかかわらず、捨てられ誰からも恐ろしがられてしまった怪物の悲しみ、苦しみが胸に迫る物語です。
醜い人造人間は本当に恐ろしい怪物なのか、彼の心を知らず異様な姿のみを忌み嫌う人々の心こそが醜くはないのか、様々な問いかけから、「見た目で人を決め付けたことはないか」「人間の醜さや怖さとはどういった部分なのか」という深い洞察を行うことができる作品です。
「ほんとうに、こわいほん」フェア開催中!
上記でご紹介した本は、丸善ジュンク堂書店全店で開催中の『丸善ジュンク堂の推し本BOOK FUN LETTER~わたしの好きな本教えます~』という企画の夏のテーマ・「ほんとうに、こわいほん」の中で、オリジナルPOP(=FUN LETTER )をつけて紹介されています。
書店で興味をもったらぜひ本を手に取って読み、本に挟んである専用用紙に感想を書いてみましょう。お店のBOOK FUN LETTER専用ポスト、または応募箱に入れてもらうと、X(旧Twitter)上でお返事が届くかもしれません。パパママのアカウントで、ぜひフォローしてみてください。
丸善ジュンク堂書店“ブックファンレター”の公式Xは>>こちらから
「こわいほん」のドキドキは、読書感想文にぴったり!
「読書感想文」と聞くと、堅苦しくて気持ちが乗ってこない子どもたちも、「こわいほん」のハラハラドキドキ感は、ふだんは考えないような自分の内面や考えに目を向けるきっかけとなります。そうして心を揺さぶられる体験が、「わたしって、こんなことを考えていたんだ!」と気づき、読書感想文が書きやすくなるのです。
とてもとても暑い夏が続きますが、今年の夏休みは、暑さを“ひんやり”とやわらげ、子どもたちが自分の内面を掘り下げられる“こわ~い”本で、じっくりと読書感想文に取り組んでみてはいかがでしょうか?
教えてくれたのは・・・
丸善丸の内本店
〒100-8203
東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ1階~4階
広い書店内には、青少年読書感想文全国コンクール課題図書や、先生のすすめる夏休みすいせん図書もズラリ!
壁面やディスプレイウィンドウでは、ここでしか見られない話題の絵本の原画展を行うなど、丸善丸の内本店の児童書コーナーでは常に楽しいイベントを行っています。
読書感想文の本を探しつつ、本屋さんを丸ごと楽しんでみてください! 様々な本との出会いがあるはずです。
公式HPもチェックしてみてください!
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取材・文/徳永真紀