ダウン症の俳優 吉田葵くんと小倉匡くんが作家・岸田奈美さんの弟役を熱演!NHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」トークイベントレポ

作家・岸田奈美さんが自身の家族について綴ったエッセーが原作となったNHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」に出演していた、吉田葵さん、小倉匡さんと岸田さんによるトークイベントが開催されました。ドラマの裏話や岸田家の皆さんのドラマに対する想いなど、イベントの内容をレポートします。

草太役の俳優が大集合!「かぞくトークイベント」

書籍『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』は、作家・岸田奈美さんが車いすユーザーの母、ダウン症で知的障害のある弟、ベンチャー起業家で急逝した父との笑えて泣ける家族の日々のことをつづった自伝的エッセイ。
ドラマでは、書籍の内容を基に岸田家や関係者への取材によるエピソードや、独自の視点での脚色を加え、全10話で放送されました。そして、弟の草太役としてダウン症の役者が日本初となる連続ドラマのメインキャストを務め、反響を呼びました。

草太役を務めた、吉田葵くんと小倉匡くんの演技に感動した岸田さんが、一緒になにかできないか…と考えていたところに、実現したトークイベントが「かぞくトークイベント」です。

ダウン症の俳優が撮影で大変だったこと

イベント前半は奈美さんの弟、良太さんも一緒に登壇して草太役の吉田葵くん、ミニ草太役の小倉匡くんと4人でトーク。じつは、草太役は4人いて、ミニミニ草太と赤ちゃんの頃の草太も会場に来ていました。

左から良太さん、奈美さん、葵くん、匡くん

奈美さん:葵くんに会うのは久しぶりだけど、最近はどんなことをしていましたか?

葵くん:学校以外では、色々なイベントで司会やダンスを頑張っています。学校では、2つの検定の勉強を頑張っていて、1つは漢字検定5級の勉強で、もう1つは喫茶接遇検定の勉強で接客やコーヒーのドリップの練習をしています。昨年は3級をとったので1級を目指しています!

奈美さん:撮影で一番楽しかったことは?

葵くん:草太になって演技をしたことです。全部が最高でした!

匡くん:沖縄で食べたそばが思い出に残っています。


奈美さん:ドラマの撮影で大変だったことは?

葵くん:プールでの撮影のときに「ここは南極ですか!?」ってくらいに寒くて全身がカチンコチンになったことです。

奈美さん:葵くんの頑張りは、すごかったよね。私は沖縄のロケを見学したのですが、葵くんは水に顔をつけるのがすごく苦手やったんよな。けど、ホテルに泊まっているときにお父さんと一緒にお風呂で練習して、できるようになったんだよね。

匡くんがすごく頑張っていたのが、車に入るシーンの撮影だよね。扉を閉めるときのバーン!って音が苦手で耳をふさいでうずくまっちゃったりとか、パパ役の錦戸さんに鍵を渡すシーンもどのタイミングで渡したらいいのかわからなくなって、何回もやり直してすごい頑張ってるのがわかるんですよ。

それで、匡くんは型にはめた演技ではなく自由に動いてもらおうと専用カメラをつけて撮り逃さないようにして、カメラのないところで錦戸さんがカギを渡すタイミングを合図したり..とても臨機応変な現場で、2人とも自分に出来ることを最大限努力して成長していく姿を見て私は泣きそうになりました。

奈美さん:2人には演技指導の人も付いていて、匡くんは馬場さん、葵くんは安田さんと一緒にいたよね。どういう練習をしていたんですか?

葵くん:安田さんは常に僕のそばにいてくれました。演技の表情とかもすべて撮影用のノートに書いてくれたのが、本当に嬉しかったです。

「ドラマに救われた」母、ひろ実さんの想い

後半は、ひろ実さん(岸田さんの母)、さちこさん(葵くんの母)、けいこさん(匡くんの母)、お母さんたちも一緒に撮影を振り返ります。

ひろ実さん:一般人である私たちの家族をドラマ化すると聞いたときに、驚きと同時にどんなドラマになるんだろうと思っていたら、こんなに素晴らしいドラマにしていただいて感激しました。

ドラマの岸本家は、自分たち(岸田家)は本当はこうなりたかったってことを叶えていてドラマを通して幸せな気持ちになりました。

奈美さん:パパが錦戸さんっていうのがまた嬉しかったよね。

ひろ実さん:私の記憶の中でお父さんは、上書きして錦戸さんになっています。怒られますね(笑)。


奈美さん:お母さんたちも、撮影で何か月も朝から晩まで大変でしたよね。

けいこさん:息子の撮影中に私の姿が見えると集中できないので、隠れて待機していました。先ほど奈美さんが話していた車のシーンのときは、地下駐車場の現場がとても寒くて私は地上にいたんです。撮影が終わって戻ったら、匡のことをすごく褒めてくれる方がいて、それがプロデューサーの坂部さんでした。そのときに、プロデューサーが誰か知ったくらい撮影時はドタバタしていました。

さちこさん:撮影はほとんど送迎係といった感じで、現場に入ったら演技指導の安田さんにお任せしていました。

ドラマの現場では、スタッフの方が小道具や演技の中に葵の要素を入れてくださったことにすごく驚きました、とても嬉しかったです。

撮影スタジオのリビングで長時間撮影をするので、葵ができるだけ落ち着いて撮影に臨めるようにと、事前にスタッフの方がわが家を見に来てくださって、葵の部屋の雰囲気を取り入れて私物もたくさん置いてくれたんです。爆睡してしまうこともあったくらいリラックスできたようです。

本当は良太さんはコーラが好きだけど、葵は飲めないからリンゴジュースにしてくださったり、いろいろな面で心を寄せてくださったので無事に撮影をやりきることができました。


奈美さん:ドラマで好きなシーンはありましたか?

私は、葵くんのアドリブもすきでしたね。第1話で、岸本家が草太を連れてコンビニに謝りにいくという緊張感があるシーンで、草太がうわの空で近くのケーキ屋さんでケーキを買っている子を眺めて「どんだけ食べんの」って呟いたときは、めっちゃ笑った!関西人を笑わすなんてセンスあるよね。

ひろ実さん:良太が小学生のころ、パパが亡くなった後によく「パパがいる」っていってたんですよ。もしかしたら良太には、パパが見えるのかなと思っていたのですが、ドラマでもパパが幽霊になって登場したシーンがありました。大人になった子どもたちに、パパが「大丈夫やで」っていってくれたシーンをみて、救われた気持ちになり、私たちの夢を叶えてくれたのが嬉しかったですね。

かぞかぞチームは、まさに家族

葵くんに靴ひもの結び方を教える安田さん

イベントのはじめに、奈美さんが「アットホームな感じで今日のこの場所は、ほぼ家です」といっていたように会場には、ドラマ出演者、関係者が集まりあたたかい空気に包まれていました。草太くんたちのトークをやさしく見守る、プロデューサーの坂部さん、演技指導の安田さん、馬場さんたちは、まるで父のよう。
トークショーの最後には、奈美さん、草太役を演じた葵さん、匡さんが共演者に感謝のメッセージを送りました。葵さん、匡さんが、草太を演じたこの経験を通して、これからどのような活動をしていくのか楽しみですね。

取材・文/やまさきけいこ

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