ジュニアNISAが終わって「このままでいいの?」今後注目される“こども支援NISA”って? 子育て世代の次の一手をマネーのプロが指南【連載第10回】

人には聞きにくいけれど、知っておきたいお金のあれこれを、「アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所長」の伊藤雅子さんがやさしく解説する好評連載、親子で学ぶ「マネーの本質」。第10回は、ジュニアNISAが終わって今後どうしたらよいか悩むHugKum読者の相談に答えます。

お悩み「10歳の子どもがいます。ジュニアNISAが終わって今後どうすべき?」

Q:10歳の子どもがいます。5歳からジュニアNISAをしていましたが終わってしまい、今後どうするか悩んでいます。子どもの未成年口座を作ったほうがいいですか?

ジュニアNISAは、終了後も運用の継続が可能

はじめにお伝えしておきましょう。ジュニアNISAの新規投資は2023年で終了しましたが、今まで投資した分は、お子さんが18歳になるまではそのまま非課税で運用し続けることができます

もしすぐに使う予定がないのであれば、そのまま運用を継続するのも一つの選択肢です。ただし継続する場合、以下の2点は必ずチェックしておいてください。

1. 18歳になったとき、成人のNISA口座へ非課税枠のまま移管できない

ジュニアNISAを継続したままお子さんが18歳を迎えると自動的に成人用のNISA口座が開設されますが、ジュニアNISAで運用してきた商品をそのまま移管することはできません。課税口座に移すか、一度払い出して新しいNISA口座で買い直す必要があります。

2. 払い出しは「全額」のみ

たとえば80万円の運用をしていて、そのうち20万円だけ使いたいと思っても、払い出すときは全額を払い出さなければなりません。複数商品を持っている場合、一部の商品だけを払い出すこともできません。子どもが成人に近づいてきたら、売却して運用を終了するタイミングも意識するとよいでしょう。

その他、海外留学などでお子さんが非居住者になると継続できないなどの注意点もありますので、不安な点があれば利用している金融機関に確認してみてください。

期待される新構想「こども支援NISA」

現在、NISA口座を開設できるのは18歳以上に限られていますが、実は今、「つみたて投資枠」を未成年も利用できるようにする見直しが検討されているのをご存じでしょうか。金融庁と子ども家庭庁が共同で税制改正要望を提出しており、報道等では「こどもNISA」や「こども支援NISA」などと表現されています。

これが実現すれば、18歳未満でも年間120万円まで(ジュニアNISAは80万円でした)非課税で投資できるようになります。ジュニアNISAがあまり広がらなかった理由の一つに、18歳まで引き出せないことがありましたが、既存の「つみたて投資枠」の条件がそのまま適用されていつでも引き出し可能になれば、使い勝手は格段に向上します。子育て支援策として注目度も高まりそうですので、今後の情報はしっかりウォッチしていただきたいと思います。

未成年口座を作るかどうかは目的で決める

さて、今すぐ未成年口座を作るべきかというご質問ですが、まず考えていただきたいのは「何のために作るのか」という目的です。それによって選択する手段は変わってきます。

たとえば、教育資金の準備が目的なら、親名義のNISA口座で運用するという選択肢もあります。大学の学費などは親が支払うご家庭が多いですから、必ずしも子ども名義にこだわらなくてもよいでしょう。親のNISA口座なら非課税枠も使えますし、管理もシンプルです。

一方で、金融経済教育が目的なら子ども名義の未成年口座を開設するのもおすすめです。お子さんが「自分のお金」「自分の口座」という意識を持ちやすく、少額であっても実体験を通じて学べることは多いと思います。ただし、この未成年口座は課税口座になるため、非課税の恩恵はありません。

「投資」というお金の使い方を知る

私は、子どもが早くから投資を体験することには大きな意義があると考えています。実際、小学校低学年くらいのお子さんのために未成年口座を開いて、毎年のお年玉などを入れて運用しているご家庭もあります。

未成年口座では個別株も買えます。「この会社を応援したい」という気持ちで株を買うことで、投資が単なるお金儲けではなく、「社会への参加権」でもあることを実感しやすいでしょう。

ただ、子どもたちが知っているような有名企業の株は高額で買いづらいものが多いのも事実。また、一つの企業に絞るのは難しく、お年玉を全額投資した会社の業績が悪化してしまったら、お子さんも悲しみますよね。そんなときは日本企業の株式を集めた投資信託を選ぶのも一つの方法です。具体的な選び方は今後の連載でお話ししますが、ファンドマネジャーの投資方針や哲学に共感できるかをぜひ見てほしいと思います。

10歳のお子さんであれば、口座開設や投資商品選びは親が主導すると思いますので、ぜひ価値観や思いを共有しながら、親子で一緒に学んでいく姿勢で取り組んでいただけたらと思います。

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ロールプレイング型のトレーニングでは街を歩いて情報を集め、企業を選び、投資の判断をする体験ができます。10歳くらいのお子さんにはちょうどいい難易度で、未成年口座を開いて一緒に学んでいくときのよい教材になると思います。実際にファンドマネジャーが子どもたちに教えるワークショップ録画も見られるのですが、小さな子どもたちが「少子高齢化」なんて言葉を使って真剣に議論している姿を見ると吸収力の高さに驚かされます。

長期でお金を増やすということがどういうことなのか、職業体験を通じて理解できる内容になっていますので、まずはここから、お子さんと投資の話を始めてみてはいかがでしょうか。

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プロフィール

伊藤雅子 アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所長

2003年興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne )入社。外為マーケット経験を生かし、専門的な話をわかりやすく伝えることを第一に投資信託の普及に努め、20年に渡り営業員向け研修や一般投資家向けセミナーなどで講演。
個人の資産形成、ファイナンシャル・ウェルビーイングや金融経済教育の分野における啓発・普及活動を目的として、2023年10月にアセットマネジメントOne内に未来をはぐくむ研究所を設置、初代所長に。

アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所のHPは>>こちら

※本記事は情報提供を目的とするものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。

構成/古屋江美子 撮影/五十嵐美弥

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