【発達障害の子育て】「いい子」を演じている?聞き分けのいい「きょうだい児」にこそ目を向けて!

発達障害のある子どもを育てる家庭では、保護者の負担が大きくなりがちです。特にシングルペアレントの場合、仕事・養育・生活のすべてを一人で担うことになり、その重さは計り知れません。そうした状況の中で、きょうだい児、とりわけ上の子は、知らず知らずのうちに保護者の精神的な支えを担う役割を引き受けていることがあります。表面上は「しっかりした子」に見えても、その負担は周囲からも、本人自身も気づいていないということがあるそう。事例を基に、親としての心得を、療育アドバイザーの藤原美保さんに教えていただきました。

発達障害の弟を持つ女の子。高校生になって親との関係が悪くなってしまい…

今回は、私が受けた相談のケースの中できょうだい児に生じるリスクと、保護者として日常の中で意識しておきたいことについてお伝えします。当初この保護者からの相談は、2人きょうだい(姉と弟)の弟の発達に関するものでした。

相談者はシングルマザーで、発達障害の診断を受けた男の子(当時小学3生)を育てているご家庭です。母親は仕事のために日中の家事を小学校高学年の長女に任せることが多く、近くに住む祖母に時々様子を見てもらっていたようです。
その後、母親に新しいパートナーができ再婚。中学生になった長女も賛成し、ステップファミリーとして生活を始めました。弟の発達相談を続けるうちに、話は家庭全体のことへと広がり、保護者から長女の学業が心配だという相談が出てくるようになりました。

長女が高校生ごろになると、コミュニケーションが難しくなり、弟との関係も悪化し、生活態度が乱れ、学業不振が目立つようになったようです。話を聞いていると保護者が長女の気持ちの変化よりも学業について気になっている様子が気になり、話を伺うことにしました。

親の感情的な負担を子どもが担う「ペアレンティフィケーション」

ヤングケアラーと似た意味にはなりますが、ヤングケアラーは家事や介護といった実務的な役割を担うため、本人に自覚がある場合が多いのですが、ペアレンティフィケーションは、感情的、精神的な部分という目に見えにくい部分であるため、周囲には子ども自身が「しっかりした子」「優しい子」と映り、保護者との関係性に気づいてもらいにくいのが特徴でもあります。

本人もそれが習慣づいている場合、自分への負担であると気づいていないことが少なくありません。幼い子どもの場合、親に認められたいと無自覚に「いい子」を演じているケースもあり、問題として認識しにくい構造があります。

ペアレンティフィケーションが有害なリスク因子として働くか、成長を支える保護因子として働くか、については「子ども自身がその役割を公平・有意義と感じているかどうか」にあるかどうかによります。

無理をして「いい子」を演じていると将来的に負のリスクが

家族への貢献が保護者を含む周囲から認められ、本人も「意義のあること」と感じられている場合には、責任感や他者への共感力といった力を育む場合がありますが、それが保護者の承認を得るために無理をして「いい子」を演じている状態に気づいてしまったり、あるいは「なぜ自分だけが」という感覚が続いたりする場合には、将来的に抑うつ症状などのリスクとなることが指摘されています。

自分だけが我慢を強いられていると思わせていないか

子どもの公平さへの感覚は幼児期から存在し、年齢とともに強まることが言われています。自分だけが我慢を強いられている状況が続く場合、たとえ言語化できなくても、子どもはその不公平感を内側に積み重ねていきます。

特に共感性の高い長子の場合、表面上は親の期待に応え続けながら、内側では不公平感が積み上がることがあります。それを「聞き分けのいい子」「頼りになる子」と受け取り続けると、思春期になってその反動が行動として表れることは、臨床的にもしばしば経験することです。問題行動は「ずっと前から積み上がっていたもの」の表れであり、表面化したときには、すでに親子関係が硬直してしまっていることが多いのです。

長女の「いい子ぶり」に頼ってきた母親は…

今回のケースでは母親にカウンセリングをお勧めしました。長女の気持ちに寄り添えるようにすることもですが、母親自身が、娘に対して素直に向き合えなくなっていたからです。

母親は、長年、娘の「いい子」ぶりに頼ってきたこと自体への気づきは少しずつ出てきていましたが、いざ向き合おうとすると、どう接してよいかわからなくなっていました。

言いかえれば、娘に甘えてきたという事実に、母親自身がまだ十分に気づけていなかったのです。「娘への心配」として相談は始まりましたが、実際には保護者自身が変わる必要がある段階に来ていました。

言葉だけで変わろうとしても、関係が硬直化した状態では子どもには届きにくいものです。子どもは、母親が口で言うことよりも、何をするかを見ています。

保護者がカウンセリングに継続して取り組み、代わろうとする姿を娘に見せることは、「あなたのことを大切に思っている」という意思を、言葉ではなく行動で示すことでもあります。また、母親が自分自身の課題に向き合う姿勢を見せることは、子どもにとっても「大人がどう生きるか」を示すモデルになります。大人として何をするかを見せることが、この段階では最も誠実な関わりの一つだと考えました。

幼少期から、自分は親にとって大事な存在だと思ってもらえるようなかかわり方を

きょうだい児自身が、自分は親にとって「後回しにしていい存在なのだ」だと感じていないか、その子の行動を「言いくるめて」自分に都合よく変えていないか、「この子は大丈夫」と思い込んでいないかどうか上の子のことを改めて見てみてください。

自分が楽をするために上の子を都合よく使っていないかの問いを日常の中に置いておくことが、きょうだい児の健全な育ちを守る第一歩になります。きょうだい児の「いい子」は、「後回しにしていい子」ではないことを覚えておいていただきたいのです。

こちらの記事もおすすめ

これって、きょうだい児育児あるある?特別支援学校に通う自閉症の息子のママが語る、妹の小学校入学で感じたギャップとカルチャーショック
特別支援学校と普通級の違いに、親が受けたカルチャーショック 私には、重度知的障害を伴う自閉症の息子と、そのきょうだい児にあた...

記事監修

藤原美保|株式会社スプレンドーレ代表

保育士、公認心理師。発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育を行う放課後等デイサービスLuce(ルーチェ)を2022年まで運営。現在は障害のあるお子さんと保護者が一緒に通うことができる脱毛サロンLuceを運営(施術中に療育相談に対応可)、子育てや療育相談、事業所での性教育のやり方、職員研修やコンサル、講演等を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』、『発達障害の男の子のお母さんが早めに知っておいて良かったこと70』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中

編集部おすすめ

関連記事