【自閉症の息子は小学1年生】支援級?支援学校?進路決定の決め手になったのは

べっこうあめアマミさんは、自閉症の息子さんときょうだい児の娘さんを育てる二児の母。2021年に1年生となった息子さんの就学への道のりストーリーの3回目です。
障害のある子どもにとって、就学は将来につながる大切な選択の第一歩。いざ、準備を始めようというタイミングで起こったコロナ禍で、情報収集に奔走。そして、同じ立場のママたちと情報を共有したいと電子書籍を刊行!いよいよ、進路決定の時を迎え、主治医と、幼稚園の園長に相談をしてみると…

支援級?支援学校?1歳半から通う主治医の意見は…

息子の発達段階を考えると、就学先は支援学校が妥当な気がする。でも、本当にそれでいいのだろうか?周りの動きを見てあわせようとする息子は、定型発達の子どもたちと多く触れ合える環境の方が、成長できるんじゃないのかな‥‥‥?漠然と不安を抱えていた私は、息子のことを良く知っている先生たちに相談することにしました。

療育の先生とは頻繁に面談があったため、就学については定期的に相談していました。でも幼稚園と、通院していた病院の主治医とは、しっかり就学についての相談の場を持ったことがなかったのです。そこで、病院の主治医と、幼稚園の園長先生にも息子の就学について相談の機会をもらうことにしました。

息子は、1歳半健診で発達の遅れについて指摘されてから、小児神経科のある大きな病院に通院していました。

息子は引っ越しや成長過程に伴って、関わる施設を転々としていたため、この時点までの息子を最初から通して知っている専門家は、病院の主治医の先生だけでした。ですから、私はこれまでの息子の経緯なども踏まえ、就学先をどう考えたらいいか、主治医の先生の意見を聞きたいと思ったのです。

社会性を伸ばすことを考えたら支援級。でも、個別の支援は薄くなる

先生はまず、支援級のメリットとして社会性を伸ばしやすいことを挙げてくれました。

支援級は1クラスの人数が少ないといっても、多くの場合支援学校よりは多いです。そして、言葉を話せる子がほとんどです。

対して、比較的障害の程度が重い子が多い支援学校では、どうしても言葉を話せない子の割合が多くなります。そうなると、子ども同士のコミュニケーションの活発さにも差が出てきます。

そのため、「社会性を伸ばす」という観点で考えると、支援級の方がより多くの刺激を得られて伸びやすいかもしれないという話をされました。でも、授業中えんぴつをなめているだけになってしまったら?

支援級は支援学校に比べると、どうしても個別の支援は薄くなります。そのため、息子のように自分でうまく意思を伝えられない子にとっては、より手厚く見てもらえる支援学校の方がいいかもしれない、とも言われました。

学習が目的の支援級。身辺自立が目的の支援学校

支援学校の主な目的が身辺自立なのに対し、支援級の目的は学習です。

そのメインとなる学習の場で、息子があまり目をかけてもらえずに授業にもついていけず、授業中にただえんぴつをなめているだけになってしまったら‥‥‥?そうなると、小学校生活6年間のうちかなりの時間が無駄になってしまいます。

先生からは、息子の発達過程における大切な時間をそのように浪費してしまうのは、もったいないという話もされました。この点については、私も大いに納得しました。

問題行動の少ない息子は、支援級でもやっていけると思っていた

そして、就学先を選ぶ上で大切な視点も教えていただきました。それは、「周りへの迷惑より、本人にとってメリットがあるか」ということです。

息子は知的発達の遅れは大きいものの、おとなしくて問題行動が少なく、周りになじみやすい性格です。そのため支援級に行っても、教室を飛び出したり走り回ったり大きな声を出したりといった、授業を妨害する行動はしないのではないかと思いました。

だからこそ、私は息子が「支援級でもやっていけるのでは」と思っていたのです。

でも、先生からの指摘はこの考えにメスを入れるものでした。息子が支援級で周りに迷惑をかけずに授業を受けられたとしても、その時間は息子にとってどうなのでしょうか?

考えるべきは周りへの迷惑より、本人のメリットという主治医からの指摘

周りの子はその時間、きちんと授業で学びを積み上げていけるでしょう。でも息子は授業の内容がわからず、同じ時間に何も積みあがっていかないかもしれません。それではそこにいることが、息子にとって何のメリットも無いのです。

発達障害がある子でも、息子のような主張が少ないタイプは、周囲への影響が少ない分、本人の困り感が見過ごされて埋もれてしまいがちです。主治医の先生はその点を心配していました。

私はこれまで、「周りに迷惑をかけないから息子は大丈夫」と思っていたことに気づかされました。でも、私が本当に考えるべきだったのは「周り」ではなく、「息子」へのメリットだったのです。

園長先生からの問いかけで明確になった「今の息子に必要なこと」

お母さんは将来、お子さんにどうなっていてほしいですか?

次に、息子が通っている幼稚園の先生にも、息子の就学先について相談する機会をいただきました。

面談の場で、園長先生はまず私に聞きました。

「お母さんはお子さんに将来、どうなっていてほしいですか?」

正直な所、私は息子に将来、障害者雇用枠で企業に就職してほしいと思っていました。まだ幼いとはいえ、年長時点で発語が1つもないほど知的障害の程度が重い息子には、それは難しい願いかもしれません。でも、それは私にとって最も理想の形であり、夢でもありました。

息子には、できれば自分で働いて得た給料と障害年金などの手当で、なんとか経済的に自立して生きていってほしい。話しながら涙がこぼれた私に、園長先生は優しく言いました。「お母さん、私はそれは無理なことだとは思いませんよ」と。

将来の息子が私の理想の姿に近づくために必要なこととは

園長先生は、息子が将来自立した生活ができるようになるために、まず次の2つのことが土台になると言いました。

①気持ちを落ち着かせて一定に保つこと

②身辺自立(身の周りのことを自分でこなす)ができること

この2つは、一般的な発達過程を辿る人からしたら、特別な支援を受けなくても自然と身につくものだろうと思うかもしれません。ですが、息子のような障害がある子どもが身につけるには、適切な支援と長い年月をかけた努力が必要です。

そして、その2つができた上で次にくるのが、自分の気持ちを相手に伝える「コミュニケーション力」だと言われました。

先に挙げた2つの能力の土台の上に、更にコミュニケーション力が身につけば、息子の将来の可能性はグッと広がるでしょう。園長先生はこのような理由から、就学先ではこの3つの力を身につけることが求められるのではないかと言いました。

将来のために、「今」必要なこととは

息子の「将来」を見据え、逆算的に今やるべきことを把握する考え方は、私にとってとても貴重な意見でした。私にとって重要なのは、「今」息子が支援級に行って地元の小学校で学ぶことではなく、「将来」息子が自立した大人になることだったからです。

そして私は思いました。息子が支援級で、前述した「3つの能力」を身につけるのは、今の状態からしてかなり荷が重いということを。支援級では、普通級よりゆっくり進められるといっても、やはり教科の学習がメインとなります。

それよりも、身辺自立を第一の目標とし、加えて感情コントロールなども丁寧に学ばせてくれる支援学校の方が、息子にとって必要な学びの場だと確信しました。

支援級から支援学校希望へ・・・そして迎えた就学相談の結果

・息子の今の発達段階

・先輩ママ達からの経験談

・先生方からのお話

これらの情報から、就学相談の結果を待たずして、私の気持ちは支援級希望から支援学校希望に変わりました。

その理由は、目の前の「普通の小学校に行く息子」より、10年先20年先の「自立した大人になった息子」の方がよっぽど価値があると思ったからです。そして就学相談は進み、教育委員会から就学相談の判定結果の連絡がきました。ドキドキして電話を受けると、教育委員会からも「特別支援学校が最適」という判断をもらいました。

こうして、息子の就学先は無事、支援学校に決まったのです。

小学生になった息子と私の「今」

学校が大好き。お休みはキライ!

息子は去年の春、特別支援学校の小学部に入学しました。長い就学先選びの末の息子の学校生活、どのような未来が待っていたかを、少しだけお伝えしたいと思います。

入学して1年が経ち、この4月から2年生になりました。息子がこれまで行き渋りをしたことは一度もありません。息子は学校が大好きで、週末や長期休暇になると途端に機嫌が悪くなるほどです。

3学期に、無発語から「パパ」と発語

身の周りのことも自分でやる意識が身に付き、着替えなども随分手がかからなくなりました。

そして1年生の3学期には、初めて息子から、「パパ」という発語を聞くことができました。単語だけですし、いつでも言えるわけではありません。でも、これまで無発語を通していた息子の、確実に大きな一歩でした。

先生への絶対的な信頼感。そして、子育てが一気に楽になった!

支援学校は支援が手厚いため、親の負担は少なく、私の自由時間も増えました。息子の障害がなくなったわけでも軽くなったわけでもないのに、私の子育ては一気に楽になったのです。

そして、特別支援教育のプロである支援学校の先生には、絶対的な信頼感があります。

スクールバスがあるので私が学校に行く機会はほとんどありませんが、先生は何度も電話で私の悩みを聞いては一緒に対応策を考えてくれて、学校での様子も教えてくれました。

クラスのお友だちとも仲良くなりました。休日にたまたまお友だちと会った時、にっこり笑って息子の名前を呼んでくれた時は、とても嬉しかったです。私は今、息子の就学先を支援学校に決めて、本当によかったと思っています。

1点の後悔もありません。

親子ともに納得できる決断をするために

ただし、就学先がどこが良いかはその子それぞれ、違う答えがあるものです。一概に「こうするべき」と言えるものはなく、あらゆることを総合的に考えて判断すべきだと思います。

ただ、私が1つだけ言えるのは、子どもの就学先に不安があるのなら、できるだけ早めに動いたほうが良いということです。

子どもの今の発達段階や障害、周囲との違いに向き合うことは、親として勇気がいることかもしれません。「今を生きるのに精一杯なのに、将来なんて……」と、考えることに抵抗感がある人もいるでしょう。

でも、子どもにとって大切な、小学校生活6年間の過ごし方です。時間をかけてじっくり選ぶことで、親子ともに納得できる決断ができると思うのです。

ぜひ、子どもの「今」だけではなく「将来」までを見据えた後悔の無い決断ができるよう、今から動き出してみてください。

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べっこうあめアマミ

ライター&イラストレーター。知的障害を伴う自閉症の息子ときょうだい児の娘を育てながら、電子書籍作家としても活動する。出版した電子書籍は障害児育児をテーマにしており、Amazonランキング1位を獲得するなど、障害児や発達に特性がある子を育てる多くの家族に読まれている。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害がある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信を、Twitternoteなど各種SNSで続けている。

 

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