茅の輪くぐりとは?
茅(ちがや)というイネ科の植物で編んだ直径数メートルの輪をくぐる「茅の輪くぐり」。心身を清めて災厄を祓い、無病息災を願う行事です。
茅の輪は、神社の境内や鳥居の下など、いわゆる「結界」の内側に設置されます。
由来は?
茅の輪くぐりの由来は、日本神話にあります。
備後国(広島県東部)を旅していたスサノオノミコトは宿を探していました。そのとき、蘇民将来(そみんしょうらい)という人物は貧しい暮らしをしながらもスサノオを手厚くもてなしました。
数年後、スサノオは再び蘇民将来のもとを訪れ、「病が流行ったら茅で輪を作り、腰につけて難を逃れなさい」と教えました。その後、教えを守った蘇民将来は難を逃れることができたそうです。それが茅の輪くぐりの由来とされています。
昔は茅の輪を腰につけて無病息災を願いましたが、江戸時代初期ごろに、現在のように大きな輪をくぐるようになったとか。
輪に茅が使われる理由には、茅に利尿作用があり、生薬として用いられ、夏の体調回復に使われていたから、あるいは茅は魔除けの力を持つと考えられていたから、などの説があります。
茅の輪くぐりが行われるのはいつ?
茅の輪くぐりは毎年同じ日に行われます。日にちはいつなのか、解説していきましょう。
夏越の祓(なごしのはらえ)の6月30日
茅の輪くぐりは、毎年6月30日に行われるのが一般的です。この日は、1年の半分が過ぎた6月の晦日(みそか)にあたり、「夏越の祓(なごしのはらえ)」と呼ばれています。
神社によっては、6月30日頃からしばらくの間、茅の輪が設置されるところもあります。設置されている期間中はいつでも茅の輪くぐりができます。
年越の祓(としこしのはらえ)の12月31日にも
6月の晦日に行われる「夏越の祓」は、12月の大晦日である31日に行われる「年越の祓」と対になる神事です。夏越の祓と年越の祓の2つを合わせて「大祓(おおはらえ)」といいます。どちらも災厄を祓い清める儀式です。
茅の輪くぐりは、12月の「年越の祓」にも行っている神社もあります。参拝者が多い神社であれば、28日頃から茅の輪を設置し、新年の初詣の時期まで置いてあるところもあるようです。
茅の輪くぐりの手順や方法は?
茅の輪くぐりは、ただ輪をくぐり抜けるものではありません。一般的なくぐり方を手順に合わせてご紹介します。
ご本殿に向かって一礼
まずは手水舎で手と口を清めましょう。 その後、茅の輪の前に立ち、ご本殿に向かって一礼をします。
一周目(左回り)
茅の輪の正面に立ち、一礼します。その後、左足で茅の輪をまたいでくぐり、輪っかの左側を通って正面に戻ります。
二周目(右回り)
茅の輪の正面に立ち、一礼します。その後、右足で茅の輪をまたいでくぐり、輪っかの右側を通って正面に戻ります。
三周目(左回り)
茅の輪の正面に立ち、一礼します。その後、左足で茅の輪をまたいでくぐり、輪っかの左側を通って正面に戻ります。
お参り
そのままご本殿に進み、お参りします。
茅の輪くぐりに「唱え詞(となえことば)」がある!?
茅の輪をくぐるときには、言葉を唱えます。この言葉を「唱え詞(となえことば)」といいますが、神社によって唱え詞が異なります。
訪れた神社の指示に従い、唱え詞を言いながら茅の輪くぐりを行いましょう。
祓へ給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸へ給へ(はらえたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ)
代表的な唱え詞は、「祓へ給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸へ給へ(はらえたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ)」というものです。
「お祓いください、お清めください。お守りください、幸福をお与えください」という意味で、神様にお祓いとお力添えを願います。
神社によって違う唱え詞が存在する!?
唱え詞には、「水無月の なごしの祓 する人は ちとせの命 のぶといふなり」や「思ふ事 皆つきねとて 麻の葉を きりにきりても 祓へつるかな」「宮川の 清き流れに 禊せば 祈れることの 叶はぬはなし」などがあります。
この唱え詞を、茅の輪くぐりの一周目、二周目、三周目に、順に唱える神社もあります。そのほか、茅の輪くぐりの由来となった人物の「蘇民将来 蘇民将来」と唱えることもあるようです。
茅の輪くぐりができる神社
毎年、茅の輪くぐりが行われている神社をご紹介します。
東京「東京大神宮」(東京都千代田区)
「東京のお伊勢さま」ともいわれ、縁結びの神様として人気の「東京大神宮」。6月30日に「大祓式(おおはらえしき)」が行われます。茅で作った大きな輪をくぐる「茅の輪くぐり」で、半年間の厄や穢れを祓い清めましょう。
また、「形代(かたしろ)のお祓い」も行われます。形代と呼ばれる人の形に切り抜いた紙に、名前と年齢を書き、形代で身体を撫でて息を吹きかけて、自分の罪や穢れを清めてもらいます。
東京「神田明神」(東京都千代田区)
「神田明神」は、「明神さま」の名前で親しまれています。6月30日に「夏越大祓式」が斎行され、茅の輪くぐりができます。
また、人形(人の形に切った白紙)を用いて、罪穢れを託し祓い清める神事もあります。なお、「夏越大祓式」の様子は、YouTubeの神田明神チャンネルで見ることができます。
東京「烏森神社」(東京都港区)
「烏森神社」は新橋に鎮座する神社です。6月30日に「夏越大祓」が行われ、茅の輪も設置されます。烏森神社を訪れたら、ぜひ御朱印をいただきましょう。
というのも、烏森神社は限定御朱印で有名な神社。夏越大祓限定の御朱印は、カラフルで、茅の輪が描かれているそうです。
茨城「笠間稲荷神社」(茨城県笠間市)
「笠間稲荷神社」は、日本三大稲荷のひとつ。6月晦日(日付は年によって変わります)に「夏越の大祓式」の一環として、珍しい「車の茅の輪くぐり」が行われます。
車の茅の輪くぐりでは、交通安全と事故防止を願って直径6メートルにもなる日本一の茅の輪を、自家用車や、大型バス、工事車両、二輪車などがくぐります。
6月30日には人間がくぐる「茅の輪くぐり」も行われます。
京都「北野天満宮」(京都府京都市)
全国約1万2000社の天満宮、天神社の総本社である「北野天満宮」。6月25日の「御誕辰祭」は「夏越天神」ともいわれ、真夏を迎えるにあたって無病息災を願う「大茅の輪くぐり」が行われます。
北野天満宮の「大茅の輪」は、直径約5メートル。京都最大と言われています。また、厄除け・病気除けとして直径7~8センチの小型の「茅の輪」の授与も行われます。
茅の輪くぐりで無病息災を祈願
「茅の輪くぐり」は、各地の神社で行われます。正しい作法で、唱え詞を言いながら茅の輪くぐりをし、心身を清めて厄災を払い、無病息災を願いましょう。
状況によって予定が変更になることもあります。各神社の公式ホームページをご確認のうえ、お出かけください。
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文・構成/HugKum編集部