山下智久演じる永瀬の誠実さが胸を打つ「今できることを正直にやるだけ」『正直不動産』【連載第7回】

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山下智久主演のNHKドラマ「正直不動産」前7回は、山下さん演じる主人公・永瀬財地が過去に犯した自分の過ちにきちんと向き合い、今自分にできることを模索していくという感動の回でした。

過去の出会いがあるからこそ、今の自分がある

©NHK

ウソがつけない不動産屋の営業マン・永瀬財地(山下智久)の奮闘を描いていくNHKドラマ「正直不動産」(総合毎週火曜22時~)。今回は、永瀬と共に、シソンヌの長谷川忍演じる強面部長・大河真澄の過去も明かされましたが、「誰しも過去があるからこそ、今がある」という人生における出会いの大切さが紡がれていました。

もともと大谷アキラ・漫画× 夏原武・原案水野光博・脚本の原作コミックで、メインキャラクターたちのビターな過去が丁寧に描き込まれていますが、ドラマの脚本家・根本ノンジも、それらを毎回過不足なく抽出してきました。その積み重ねによって、永瀬たちの人間関係がより立体的に浮かび上がり、人間ドラマが縦軸、横軸ともに広がりを見せています。

今回でいえば、永瀬と大河部長の過去が描かれたことで、最もフィーチャーされたのは、2人の恩人である登坂不動産の登坂寿郞社長(草刈正雄)の人間力でした。彼の“人を見る目”はさすがの一言。こうなると、悪徳業者ミネルヴァ不動産のラスボス社長・鵤聖人(高橋克典)との勝負の行方が、より一層楽しみになってきます!

過去の過ちを認め、逃げなかった永瀬に拍手

(以下、ネタバレを含みます)

©NHK

ミネルヴァ不動産のスパイだった課長が退職したことで、急遽、課長代理に抜擢された永瀬。これは昇進のチャンスか!と思いきや、ふってきたのは事務作業の山で、おまけに彼がウソを連発していた時代の契約者からのクレームも舞い込んできて、永瀬はトホホ状態です。

 

©大谷アキラ・夏原武・水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中

©大谷アキラ・夏原武・水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中
©大谷アキラ・夏原武・水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中

以前の永瀬は「客を人だと思わない」という極めて非情なウソつきでしたが、今の永瀬は違います。もちろん、過去を変えることはできませんが、永瀬は「今できることを正直にやって、誠意を伝えるしかない」と腹をくくります。

永瀬を見ていて毎回心が高揚するのは、どんな逆境におかれても、ズルをせずにバカ正直に対応していく誠実さと、「ピンチをチャンスに!」というハングリー精神です。諦めたらそこでゲームオーバーですが、根気強く、泥臭くリベンジをしていく永瀬は、まさにヒーローそのものです。

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ちなみに登坂社長と出会った頃の若い永瀬は、山下さん本人が演じています。山下さん主演作「クロサギ」シリーズの原案者でもある夏原さんが、本作の山下さんについて「一流の演者になっても、謙虚さはあの当時と何も変ってない。正直不動産、主演してくれて本当にありがとう」とTwitterで称賛していたことも胸アツでした。山下さんの人となりが永瀬に反映していることは間違いないですが、そこは実写化作品ならではの醍醐味ですね。

余談ですが、「正直不動産」は、令和のコンプライアンス問題をきちんと踏まえたドラマになっているなと、今回も感心しました。「ドラえもん」で言うところのジャイアン的キャラである大河部長が、時折“旧態依然のサラリーマン”キャラを引っ張っているところが、個人的にツボです(笑)。

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部下の月下をガミガミ叱ったあと「これはパワハラじゃないから。教育だから」と言い訳をしたり、登坂社長について「俺はこの人のためだったらいつでも死ねる」という手垢のついた昭和台詞を吐いたりするところに思わずニンマリ。幅広い世代のハートを鷲づかみするドラマは、こういうコテコテの濃いキャラが果たす役割がかなり重要です。

不動産屋という職業の奥深さを再確認

©NHK

「正直不動産」を観ていると、不動産屋という職業の奥深さを再認識させられます。彼らが扱っている“家”というのは、“house”というよりも“home”なのかなと。すなわち家はただの“箱”ではなく、“家庭”や“家庭生活”を含んだものであり、永瀬の言う「お客様の人生を背負う職業」という捉え方にも納得がいきます。

©大谷アキラ・夏原武・水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中
©大谷アキラ・夏原武・水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中
©大谷アキラ・夏原武・水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中

今回、前田吟と中田喜子というベテラン2人が演じた老夫婦が住み慣れた自宅を売ろうとした際に、永瀬が反対するシーンで、そのことを確信しました。永瀬が2人を説得したあと「家を通じて、お客様の人生を豊かにする。その手伝いをすることが不動産屋の仕事ですから」と語るシーンは、今回のハイライトでした。

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老夫婦に寄り添い、永瀬はアドバイスをしたわけですが、彼にとっては一円の儲けにもならなかったので、例によって“ジャイアン”大河部長から雷が落ちたことは言うまでもありません(苦笑)。

確かに家についての考え方は十人十色だし、幸せの価値観なんて人によって違うのは当たり前。改めて人生の豊かさについて考えさせられる展開で、最後のオチも含めて大いに見応えがありました。

さて、第8回では、永瀬と月下が、競合であるミネルヴァ不動産に大勝負を挑み、ひと波乱が巻き起こりそう。原作でもインパクトが強かった“地面師”のエピソードが展開され、登坂社長の過去が明かされるという重要な回となります。さらに元同僚、桐山貴久(市原隼人)が再登場するので、これは見逃せませんぞ!

文/山崎伸子

「正直不動産」毎週火曜日、夜10時からNHK総合にて放送 再放送は毎週火曜日 午後3時10分~3時55分にNHK総合にて放送

見逃し配信はNHKプラスで!(放送後、最新話が公開されます)

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大谷アキラ 原案/夏原 武 脚本/水野光博607円(税込)

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そんな不動産業界に前代未聞の爆弾が、いま炸裂する!!千三つと言われる海千山千の不動産業界でかつての成績が一気に低下する中、永瀬は、嘘が上手くつけない正直営業で苦戦するが…!?
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全宅ツイ|1650円(税込)

本書は、大人気漫画『正直不動産』で取り上げてきたテーマのうちの24テーマを、宅建業者のTwitter集団・「全宅ツイ」の各専門クラスターが数人ずつトーク形式で語る本です。

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