早生まれの子は「発達障害」と診断される確率が高い?「発達障害もどき」と呼ばれる子どもたちとは【小児科医監修】

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近年、劇的に増えている「発達障害」の子どもたち。しかし、増えているのは「発達障害」の子ではなく、「発達障害もどき」ではないかというのは、35年にわたって子どもの脳・育ちに向き合ってきた、小児科医・成田奈緒子先生。新刊『「発達障害」と間違われる子どもたち』が話題になっている成田先生に、どのような子が「発達障害もどき」とされるのかうかがいました。

発達障害と診断される子は13年で10倍に

私は、脳科学の研究をしながら、小児科医として発達障害が疑われる子どもの診療を行っています。

また、教育の現場にも関わりを持ち、さまざまなお子さんの相談を受けている立場でもあります。そんな中で、気になっているのが、「発達障害の子どもが増えている」というニュースです。

2006年の時点では、発達障害の児童数は約7000人でしたが、2019年には7万人を、2020年には9万人を超えました。数字だけ見ると13年(2006〜2019年の間)で10倍に増えているのです。

「発達障害かも?」と診察にきても、診断がつかない「発達障害もどき」

劇的に増えている「発達障害」の子どもたち。その背景には、文科省の研修などに参加するようになった保育現場や学校教員が「発達障害のカテゴリーに入ると思われる子どもたち」を見つける機会が多くなったことがあります。そうして、保育士や先生に言われたからという理由で私のもとに来る親子も増えたのです。

しかし、相談に訪れる子ども達は、医学的には診断がつかないケースが多くありました。そんな「診断がつかないのに、発達障害と見分けがつかない症候を示している状態の子ども」を私は、「発達障害もどき」と呼んでいます。これは、診断名ではなく、私が診療を通して子ども達の症候を見る中でつくった言葉です。

早生まれの子は診断がつきやすいという調査結果も

私のところに診察に来る人には、「早生まれの子」が多くいます。発達障害の疑いを抱かれる子は、早生まれに圧倒的に多いと感じています。私が実際に診ている患者さんにも1〜3月生まれのお子さんがたくさんいます。

私自身も3月生まれですが、小学校のときの私は、発達障害の診断がつけられてもおかしくないような問題児でした。体が小さく、授業などでもほかの子についていくことができず、失くし物、忘れ物の数も多かったのです。

小学校に上がってすぐの頃は生まれ月による差がとても大きいですよね。

ADHDの診断は、早生まれの子に多い傾向

4月生まれと3月生まれでは約1年も成長の度合いが違い、体格も落ち着きも全然違いますから、どうしても早生まれの子の問題行動は目立ってしまいます。

特にADHDの診断に導かれやすい子は、生まれ月の遅い子に多いようです。

実はADHDの診断を受けている子の中には「早生まれの子が多い」という、米国で4〜7歳の子ども40万人を対象にした調査結果もあります。米国では9月に入学するので、8月生まれと9月生まれを比較した調査で、8月生まれの子のほうが9月生まれの子よりもADHDと診断される率が34%も高いことがわかりました。

この調査結果は、米国のものですが、国内でも同様のことがいえるのではないでしょうか。

診断されるまでに必要なこと、医療機関選びのためのポイント

そもそも発達障害の診断の基準とは、どのようなものなのでしょうか。

診断に必要な項目は以下の2つ。

・母親の胎内にいるときから生まれた後の生育歴

・心理検査の結果

病院によっても異なりますが、一般的には(少なくとも私は)、子どもの生育歴・発達歴に加え、現在の生活環境、夫婦関係、祖父母がいるか、祖父母と同居しているか、学校での環境など、子どもに関わるあらゆることを聞いて判断します。

また、診断の補助的検査として行う「心理検査」は、子どもの得意なところ、苦手なところが把握でき、これによって、子どもの関わり方のコツがわかり、環境を調整するためのヒントを得ることができます。

医療機関選びの3つポイント

子どもの場合は、小児科、児童精神科などの専門医を受診することになりますが、発達障害の診察を受ける際は、

① 発達障害の対応をしている医療機関かどうか

② その医療機関で心理検査が行われているか

③ 心理士(公認心理師または臨床心理士)が検査を行ない、対応してくれるかどうか

以上の3つを確認するとよいでしょう。

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記事監修

成田奈緒子|小児科医・医学博士
1963年、仙台市生まれ。神戸大学医学部卒業。米国セントルイスワシントン大学医学部、独協医科大学、筑波大学基礎医学系を経て2009年より文教大学教育学部特別支援教育専修教授。2014年より子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表。『高学歴親という病』『山中教授、同級生の章に脳科学者と子育てを語る』(山中伸弥氏と共著)など著書多数。

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