就学前の子に多い「発達障害もどき」。「発達障害かもしれない」とき、親がやるべきこととは【小児科医からの提案】

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近年、劇的に増えている「発達障害」の子どもたち。しかし、増えているのは「発達障害」の子ではなく、「発達障害もどき」ではないかというのは、35年にわたって子どもの脳・育ちに向き合ってきた、小児科医・成田奈緒子先生。新刊『「発達障害」と間違われる子どもたち』が話題になっている成田先生は、「発達障害もどき」から抜け出す方法があると言います。

落ち着きがない、集団生活に適応できない、衝動性が高いなど、発達障害と類似した症候で私のところに相談に来られる親子のすべてに発達障害の診断をつけられるわけではありません。

発達障害は「先天的な脳の機能障害」と定義されるため、診断のためには「生まれたときからの生育歴」を聞き、診断基準に照らし合わせる必要があります。その結果、生育歴に問題はなくても「発達障害のような」行動が見られる子どもが発達障害もどきです。特に小学校入学前までの幼児期に多く見られる症候です。

「発達障害もどき」の子ども達に共通してみられること

このような子どもたちに共通して見られるのが、生活リズムの乱れと、テレビやスマホ、タブレットなどの電子機器の多用です。脳の発達では、生まれてから5年間は「立派な原始人」になるための生活が優先されます。

新生児は「本当の意味で人間になりたて」でまだ「動物」です。まず目指すのは立派な原始人でそこから徐々に「現代人」になっていけばいいのです。脳の中で最初に育てるべきは「寝る・食べる・動く」をつかさどり、生きるために欠かせない働きをする脳の部分です。

生活の中で五感にくり返し刺激を入れて脳を発達させ、自然界で生き延びる力を獲得することが大切で、この原始的な脳が発達していないと言語も感情も社会性も獲得できないのです。

脳の発達を阻害する生活リズムの乱れとスマホやタブレットの過剰使用

生活リズムが乱れ、電子機器を多用すると、この原始的な脳の発達が遅れ、脳機能のバランスが崩れます。その結果、発達障害と同じような行動を見せるのだと私は思っています。 「発達障害と同じような症候を見せながらも、正確には診断がつかない」という事例をこれまでに私は何例も診てきました。

特別支援教育の考えが保育園や幼稚園、学校現場に普及し、多くの方が発達障害の知識を持つようになりました。その結果、発達障害とよく似た行動を見せるお子さんの親御さんに、「発達障害かもしれません」と伝える場面がよくみられるようになりました。

  • 生活リズムを整えると発達障害の症候は目立たなくなる

 保育士や学校の先生から困った行動を指摘された場合、医師の診断を仰ぐ前に、「今の生活の中で改善できることはないか」を模索し、次にお伝えする方法を試してみてください。

 生活改善に欠かせない3つのポイント

1 朝、起きたら朝日を浴びて体内時計をリセットする

人の生体リズムをコントロールする体内時計は地球の自転1回分の24時間ではなく、24時間よりも少し長い時間に設定されています。そのズレを調整するためには、朝起きたら太陽の光の刺激を目から入れて、朝であることを脳に知らせ、体内時計をリセットすることが重要です。

  • 2 充分に睡眠を取る 幼児は20時、小学生は22時前に就寝を
  • また、質・量ともに高い水準の睡眠をとることで、生活リズムが整います。例えば幼児期では20時、小学生の場合、どんなに遅くとも22時には熟睡しているようにしましょう。まずは、早寝早起きの生活リズムをつけることです。
  • 3 規則正しい時間に食事をする

規則正しい時間にしっかりと食事をとることで、脳を刺激できます。

夜早く寝てしっかり睡眠をとれば、朝起きたら空腹になっているはず。朝ごはんをしっかり食べると体内時計が刺激され、正しく動きだします。体内時計が動けば朝食を食べた後に便が出ます。排便がないのであれば、昼行性の動物としての体内時計が働いていない証拠だといえます。

「発達障害もどき」であれば、生活習慣を見直すことで改善される

睡眠がしっかりとれていると、朝起きると自律神経は活発になり、脳が空腹を意識するので朝ごはんをしっかり食べることができます。朝昼晩と規則正しい時間にしっかりと食事をとることで、脳を刺激できます。

最初から早く寝かせようとしても、夜ふかしがくせになったお子さんには難しいので、朝早く起こすことから始めましょう。大好きな音楽を大きな音でかける、お風呂場に連れていき、朝から一緒に水遊びをしてみるなど、お子さんの好きなことをして、朝楽しく目覚められる工夫をしてみましょう。

朝早く起きることで、幼児期なら最短1週間で夜早く寝るようになります。とくに2~3歳の時期には、睡眠リズムが変われば、昼間の様子も驚くほど変わることが多々あるのです。

 お子さんの行動が「発達障害もどき」からくるものであれば、生まれつきの脳の凸凹(発達障害)とは事情が少し違うので、変化の速度は早いといえます。「うちの子、発達障害かも」という気づきは、子どもとの暮らしを見直すチャンスでもあるのです。

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増えたのは本当に発達障害?小児科医・成田奈緒子さんの提言本

成田奈緒子/著 青春出版

お子さんの行動が気になる方、保育園や幼稚園、学校などで、発達障害かもしれないと言われた方は、ご一読をおすすめします。発達障害の行動が見られたとき、どうすればいいかというアドバイスも掲載

記事監修

成田奈緒子|小児科医・医学博士
1963年、仙台市生まれ。神戸大学医学部卒業。米国セントルイスワシントン大学医学部、独協医科大学、筑波大学基礎医学系を経て2009年より文教大学教育学部特別支援教育専修教授。2014年より子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表。『高学歴親という病』『山中教授、同級生の章に脳科学者と子育てを語る』(山中伸弥氏と共著)など著書多数。

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