【中学受験】妻からのバトンを受け取り、父子で勝ち取った御三家合格ストーリー

Hugkumでは、中学受験に取り組んだ親子を取材し、本音の体験談をお届けしています。

現在、御三家A校で、勉強はもちろん、興味あることにのびのび取り組んでいる おとくん(中3/私立男子校/中3)。おとくんの中学受験を応援し、ともに戦ったのはお父さん(東京都在住/Kさん)でした。学校選び、勉強の進め方、模試の活用など、一般的な母親伴走型とは一味違う視点が光る「父子の受験ストーリー」を紹介します。

本人の意思を確認し、3年生の終わりごろに入塾

続けていたサッカーだが、応援に熱の入る親に冷めた様子も見せはじめた3年生の終わり頃

―中学受験を始めたきっかけを教えてください。

 私は関西出身で、中学受験の準備はしたものの、結局中学受験はせず、高校受験をしました。それに、東京の中学受験事情について何も知りませんでしたし、妻も中学受験は経験していません。だから、息子の中学受験はまったく考えていませんでした。
ところが、妻が、周りのお母さんたちから、東京の受験事情についていろいろ聞いてきたんです。それによると、東京の私立校では中高一貫校が多く、高校での募集がない私立校も少なくないということでした。小学校に入ったばかりで高校入試なんて、まだまだ先だと思っていたので、驚きました。でも、中学生になっていざ高校入試を迎えたとき、行きたい学校に募集がないというのも困ります。それで、本人に「中学受験するか?」と聞いてみました。

―息子さんの反応は、どうでしたか?

 「受験する」という答えが返ってきました。当時、息子はサッカーをしていて、私もよく試合の応援に行っていたのですが、熱が入るあまり、「もっと走れ~!」と声をかけることも多かったのです。どうもそれが本人にとって嫌というか、熱く応援する親の様子にちょっと引いていたらしく(笑)、3年生の終わりごろには、サッカーにそれほど興味はなくなっていたようです。「受験するなら、サッカーはやめなくちゃいけなくなるよ。どうする?」と聞いたら、あっさり受験を選びました。

―勉強と習い事をどう両立させるかという心配はなかったのですね。

 続けていたそろばんも5年生でやめて、趣味程度に卓球はやっていましたが、勉強との両立で板挟みになるということはありませんでした。

―塾はどのように選びましたか?

 大手の中学受験塾にしました。自宅近くの塾にこだわっていたわけではありません。息子はサッカークラブには電車で通っていたので、塾も行きは自分ひとりで行けるだろうということで、電車で通う校舎に入りました。入塾は、3年生の終わりごろです。

受験サポートを母から父へ変更した理由

「受験しなくていい」6年生になって妻がそう言い始め…

―塾にはすぐ慣れましたか?

 妻に任せていたのでよく知らなかったですが、友達もできて、楽しく通っていたようでした。ところが、成績のほうは全く順調ではなかったようですね。4年生になると、どんどん優秀な子が増えてくるせいか、成績は少しずつ落ちていきました。クラスも徐々に落ちてしまって…。中学受験は、やはり難しいなと思いました。

―教科によって成績のばらつきはありましたか?

 国語は比較的まし、理科はかなり苦手で、算数やや苦手。社会はまあ普通という感じでした。気になったのは、プリント類です。5年生になるとプリントが多くなりますが、それがぐちゃぐちゃの状態だったんです。私自身は、中学受験はしなかったのですが、準備はしていました。また、家庭教師で多くの子どもたちを教えてきた経験もあるので、「これはまずい。このプリントを整理しなくては」と思いました。

―どのように整理しましたか?

 5年生になってからA4のプリントが入るファイルを買ってきて、ファイリングをし始めしました。5年生のときは、A4プリントが入るファイルを10冊ぐらい。6年生になると、その数は25冊にもなりました。実際、家の廊下にずらっーと並べてみると、すごい量でした。

―プリントの管理は、中学受験の親にとって頭の痛い問題です。お母さんがプリントの管理に追われて大変という声も多くありますが、おとくんのおうちでは、お父さんが積極的にプリントの管理に取り組まれたのですね。

 実は、6年生になった頃から妻が「受験しなくていい」と言うようになったんです。まあ、成績もふるわず、プリント類もぐちゃぐちゃ、塾の送り迎えも大変ですから…。私も仕事にかまけて受験を妻に任せっぱなしだったことも要因です。でも、本人が「受験する」と言って始めたものを、何もやめさせなくてもいいだろうと思い、「じゃあ、受験のサポートは私がするよ」と妻に言いました。私が勉強のサポートも塾の迎えもするということで、受験は続行しました。

 志望校は自宅からの近さを優先

「自宅から遠い学校へは通うな」その理由は?

―志望校を選ぶときに、どんなことに気をつけましたか。

 息子には、共学でも男子校でも、進学校でも大学付属校でも、どこでもいいから好きな学校へ進学してほしいと思っていました。ただし一つだけ「自宅から遠い学校には通うな」と言いました。実際、通学にあまり時間のかからない学校なら、学校の知名度や偏差値などは、気になりませんでしたから。

―自宅に近い学校を候補にしたのはなぜですか?

 通学時間が短ければ、その分、勉強や自分の好きなことに時間を使えるからです。そもそも、どこの学校へ進学するかというより、中学や高校時代に、どう時間を使って自分にとって有意義に楽しく過ごすか、ということが大切だと考えていました。

―学校見学には行きましたか?

 4~5年生のときに、いろいろな学校を回りました。妻の要望で、大学付属校も何校か見にいきました。

―各学校の印象はどうでしたか?

 A校の雰囲気が気に入りました。自由度が高くて、あまり学校や先生方による管理が厳しくない、ゆるやかな雰囲気がいいなと思いました。

受験はしませんでしたが、見学には行った大学付属校もよかったです。文化祭を見に行ったのですが、「自分たちの学校はこんな学校だ」と、生徒たちが発信するメッセージがはっきり伝わってきました。

B校は、ビジネスマンのようにプレゼンのうまい先生がいて、おもしろいと感じました。ただ、親が前面に出てあれこれ世話をするような雰囲気は、ちょっと気になりましたけど。

C校の印象もよかったです。共学ということもあり、明るく華やかな雰囲気でした。もしこの学校に進学したら、楽しい学校生活を送れるんだろうなあと想像しました。

D校は、私としてはあまりしっくりきませんでしたが、妻が熱烈に希望していたので、結局、A校、B校、C校、D校に絞り込みました。

―熱心に研究されていたのですね。息子さんの志望は?

 息子はA校が気に入ったようで、「絶対、A校に行きたい!」と言っていました。ただし、偏差値的にはかなり頑張らないといけない成績でしたが…。本人がA校を目指して頑張る分には、成績も伸びてくるだろうと思っていましたので、「そうか、じゃあ、勉強頑張らなくちゃな」と発破をかけました。

―志望校はすんなり決まったのですね。

 いいえ、それが…。私と息子はだいたい同じ方向性でしたが、妻には妻の希望や憧れがあったので、夫婦ゲンカになったこともありました(笑)。

夏休み「解けなかった問題だけ繰り返しやる」勉強法を徹底

夏休み前までは、必死の受験生とは言い難い状況だった

―入試の際にターニングポイントなると言われる夏休み。どんなふうに勉強していましたか?

 実は、夏休みぐらいまで、「土曜日はゲームしていいかな?」というほど、のんびりモード。とても必死の受験生とは言えない感じでした。「ゲームがしたいって、まだ塾の宿題も終わってないじゃないか」と父子バトルになったこともあります。

―そんな息子さんに対して、どう対応されましたか。

 「どこの学校へ行きたいんだっけ?」「A校だよ」「じゃあ、ゲームやってる場合じゃないだろう」などと話し合いました。よく言われますが、男の子の中には、ギリギリなるとエンジンかかって成績も伸びる子も多くいます。競馬でいうところの「差し足」です。でも、そういう伸びるときを待っているうちに、完全に手が届かないところまで落ちてしまうかもしれません。だから、せめて後伸びすれば志望校に手が届く場所にいさせてあげたいと考えていました。たとえば、秋から直前期に後伸びして偏差値5ぐらい上がれば、現状は合格の可能性が20%でも、入試直前には50%ぐらいまで到達できるはず。50%なら、半々の確率ですから、合格できるかもしれないという希望も生まれます。そんなことも意識して、夏休みの効率的な使い方、「手の届く場所にとどまらせる」ための勉強法を考えました。

―効率的な勉強法とは?

 まず、息子にアドバイスしたのは、「わからないところだけ、苦手なところだけ勉強しよう」ということです。そもそも塾から与えられた問題集の束はとても全部はやりきれません。親も子も「とてもできない」と思ってしまって当然の、すごい量ですから。正解できている問題は、もう理解して解けているわけですから、それ以上、やる必要はありません。でも、やる気のないときでも、「わからなかった問題だけ解きなおすやり方」ならば、何とか出来るだろうと考えました。

―この勉強法について、塾の先生には相談しましたか?

 いいえ、塾には相談しなかったし、また出来ないとも思います。塾は集団に対して勉強を教えるスタイルですから、個々のウィークポイントの分析とその問題解決の勉強法について考えるのは親の役目でしょう。実際、模試や問題集を丁寧に見直すと、息子の苦手な分野やミスしやすいところが見えてきました。

―親だからこそのきめ細やかさですね。息子さんのスイッチは入りましたか?

 実は、本格的にスイッチが入ったのは、9月中旬頃でした。自分から進んで勉強するわけではないものの、夏休みにはそれなりの量はこなしていたと思います。「オンラインの算数講座を取るか?」と聞くと、「やる」と言いましたし。

―ズバリ、夏休みの勉強量はどれくらいでしたか?

 基本的には塾の夏期講座を受け、その宿題をする…という毎日でした。ただ、苦手な算数は、2週間で1000問くらいのペースで取り組ませました。特に、時計算が苦手だったので、オンラインの算数講座から200ページくらいダウンロードして解かせました。100問解かせて、間違ったところをピックアップして、またその問題を解かせて…。徹底的に「解けなかった問題」を繰り返し解くことで、大問4問中の2問までは解けるくらいに成長しました。この繰り返しは、算数の下支えになったと思います。

―算数以外の教科はどうですか?

 理科も同じ方法で勉強させました。私が週一でチェックして、間違えた問題、解けなかった問題をピックアップして「ここ、また間違えているから、解きなおして」と指示しました。

 

志望校は御三家A校。おとくんがその目標に向かって、父のアドバイスとともに算数の基礎固めに頑張った夏休み。果たして秋以降の成績は⁉ 気になる受験結果は⁉ 後半に続きます。

 後編はこちら

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取材・文/ひだいますみ

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