【発達凸凹の子ども達へ・まり先生の解決記】聞いてないって言われるけど…。こうすれば気づけると伝えよう!「マンガ あやまらなくていいんだよ 」

発達凸凹の子どもたちにとっての「人生っていいもんだな」「学校って楽しいかも」を追求してきた、特別支援学校・支援学級のまり先生(公認心理師)が、学校でのあるあるトラブルを、ユーモラスに解決するエピソードをご紹介!

発達凸凹の子たちの想い

トラブルメーカーに見える子の行動の真意や、やればできるのに怠けているように見える子の想い、大人には理解できそうにない強いこだわりの理由などを知ると、子育て中のイライラが、爆発する前にボヤ騒ぎくらいで済む場合があるんです。

クスッと笑える漫画を得意とするイラストレーター エイイチとコラボして、子育てに愛と笑いと「まぁいっか」を注ぎ込む『大喜利的エデュケーションマンガ』第9弾!

あやまらなければダメ?

ちょっとボウッとして返事をしないでいたら、大声で「ねえ聞いてる!?」って言われちゃった。「聞こえてないじゃん!」って怒られるけど、話しかけられてるのは分かってるし、そんなに大きな声を出さなくても一応聞こえてるよ。

 

BGM的に聞こえてはいるんだよね

ボーッとしているように見えたり、集中しすぎて聞こえてないように見えるけど、音としては聞こえてはいるんだよ。何かを集中して見ていたり、頭の中でいろんなことを考えていたりすると、話しかけられても、何を言われているかまでは分からないんだ。だから、話しかけられているのに気づかなかったり、先生の説明をうっかり聞き逃したりしちゃうこともあるんだよね。

なんでかな?

『聞こえている』と言っても、“音として聞こえていること” と、“何を言われているか理解すること”は別問題。“何を言われているか理解すること” は、耳で聞いた言葉を理解していくことだよね。でも、耳で聞くより、目で見た方が理解が早くて得意な人もいる。特に、目で見たことの方が理解が早い人は、目に見えてることから優先して分かろうとするから、聞こえてくることを理解する作業は後回しにしちゃうんだ。

苦手より、得意の方を生かした方が楽でしょ。

こうしてみるといいかもよ

目に見えることの方が情報としてキャッチしやすいなら、視界に入って話しかけたり、手がかりになる物を見せながら話しかけてくれたりすると、目で見た情報が手助けになって、何を話されているのか理解がスムーズになるよね。そして、案外自分に話しかけられていることに気付かないときもあるから、肩を叩かれたり、名前を呼ばれてから話しかけられると、聞く準備ができるよ。

公認心理師・松尾まりか先生が解説

いつも怒ってる!と感じてしまう原因

動画を見ている子どもや大人に話しかけても、返事をまったくしない、または、心ここに在らずな生返事されることってこと、よくありませんか? 私も、スマホでメールの返信をしているときなど、家族に話しかけられても「あぁ、うん…」なんて返事をして、「聞いてんの?」と言われます。そして、いつも「あ、なんだった?」と顔を上げる頃には、話しかけてきた相手は機嫌が悪くなっている。こっちは、まだ話しかけられて間もないと思っていたり、今これに集中しているんだから、ちょっと待っててくれたっていいじゃない!と思うんだけど、実は、話しかけている相手は、私が思う以上に何度も繰り返し声をかけていたんですよね(汗)。

これは、聞いていないとか、集中しすぎているというより、目で見る視覚情報を優先して脳みそが処理・理解しようとしているから、耳から聞こえる聴覚情報は後回しになっちゃう現象なんです。だから、これは誰にもで起きること。でも、聞いて理解することが苦手だったり、聞くより見て理解する方が断然得意!って人は、集団で話を聞いている時や、何かしている最中に話しかけられる時に、頻繁に起こります。

話しかけている側にとっては、1~3回くらいは優しく話しかけているのに、全然気づいてくれなかったり聞く態度にならなかったりするから、それはイラつきます。4~5回目には「早く席につきなさい!何回言ったらわかるの!?」と爆発してる。でも、聞いている本人にとっては、1~3回は気付いてないので、聞く準備ができた頃にはもう相手の怒りはMAX。「いつも怒ってる!」「すぐに怒る!」「怒った言い方しかできないの?」というふうに感じちゃうんですよね。

話しかけ方次第でグッと聞ける

個別で話しかける時のポイントは、2つ。

①視界に入って話しかけることは、まず大前提です。そもそも、話しかけられていないと思っていますから、タイミングを見計らって近くで話しかけましょう。

②遠くから声をかけるときは、同じトーンで繰り返し話しかけると、4~5回目になった時も怒った口調にならずにすみ、受け取る側も怒られている感じがしないので、指示も快く聞いてくれます。

そして、一斉活動のときの話し方ですが、結論をドーンと打ち出してから、話す内容や順番を提示して、簡潔かつ手掛かりとなる具体物を見せたり、話した内容のキーワードを書いておくなどが大切です。要は、1から10まで話して、最後に結論はこうなんだよね~と話していても、途中で何かのキーワードに引っかかった子はそこで思考を広げてしまったり、聞いている最中に視界に入った友達の動きが気になって注目が逸れたりしちゃうから、早めにドーンと結論言ってくれ、ということです。

また、『注意深く聞く』という経験をするために「今から話すお話で、『かえるくん』って言葉が出たら、手を挙げてね」とゲーム感覚であそんでみたり、絵本の読み聞かせをした後に、お話の結論からふりかえりクイズゲームをしたりします。例えば、「赤ずきんちゃんは最後どうなった?」「狼のおなかから出てきたのは、どうして?」「なぜ、猟師はおおかみのお腹を切ったの?」など、結論から聞いて、話を遡って思い出させていくんです。正解でも、正解じゃなくても、そんなやりとりを楽しむことで、注意深く聞くという楽しい経験やスッキリ聞けた!という感覚を養ってほしいと思っています。

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前回のお話はこちら

【発達凸凹の子ども達へ・まり先生の解決記】じっとしていられないけど…。刺激タンクをコントロールしてみよう!「マンガ あやまらなくていいんだよ 」
発達凸凹の子たちの想い トラブルメーカーに見える子の行動の真意や、やればできるのに怠けているように見える子の想い、大人には理解できそうにな...

原作

松尾まりか|特別支援学校教員資格・公認心理師
日本と海外の特別支援学校で14年間勤務した後、特別支援学級で勤務。児童発達センターの指導員、乳幼児の発達相談員と、教育界と福祉界を渡り歩きつつ、発達が気になる子と関わる教員、支援員、高校の寮のハウスマスター向けに、すぐに実践できる研修も行う。モットーは、子どもたちの 『人生っていいもんだな、おもしろいな 』を増やしたい。小学校・幼稚園・特別支援学校教員資格・公認心理師。

企画構成イラスト

エイイチ|イラストレーター
テレビや書籍にて漫画、挿絵、芸能人の似顔絵を描いているほか、学校の教材アニメーションを制作したりするなど、多様なコンテンツを手がける。著書に「見えないボクと盲導犬アンジーの目もあてられない日々」(小学館)「スキンヘッドパパの育児日記」(日経BP)など。東京都生活文化スポーツ局「パパズ・スタイル」にて子育て漫画を連載中。

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