「才」には、もともと「年齢」の意味はない
年齢を書き表すとき、みなさんは「才」と「歳」、どちらの漢字を使いますか?あまり気にしていないとか、普段は「歳」と書くけれど、急ぎのときは画数が少ないので「才」を使うとか、いろいろでしょうね。でも、違いは何なのかおわかりですか?
結論から先に言いますと、「才」という漢字にはもともと年齢の意味はありません。
「才」という漢字の字源は諸説ありますが、たとえば『新選漢和辞典』(小学館)では次のように説明しています。
「才」の字のそれぞれの部分「一」「亅」「丿」は、「一は地、亅は上に進むこと、丿は枝葉が生じようとすること」で、それは「草木の枝葉が地から出ようとしている形」を表し、「はじめ」「わずか」の意味になる
そして「この状態でも、草木のすべての要素がそろっていることから、人の能力をも才という」と説明しています。
つまり「才」は、うまれつきもっているもの、資質、はたらき、うでまえ、能力といった意味の漢字なのです。「才能」「才覚」「才気」「才人」といった熟語で使われるのはそのためです。
そのような意味の漢字ですから、「才」にはもともとは年齢を表す意味はありませんでした。年齢に関しては、日本で生まれた意味なのです。『新選漢和辞典』は、日本特有の意味として「俗に、年齢の「歳」の略字に用いる」と説明しています。
江戸時代には、年齢に「才」を使っていた
ただ、なぜ「才」をまったく関連のなかった「歳」の略字に使用するようになったのか、はっきりとした理由はわかりません。同じ「サイ」という読みだったという単純な理由からかもしれません。
年齢に「才」を用いるようになったのはいつのことなのか、これも正確にはわかりませんが、江戸時代には確実に使われていました。たとえば元禄9年(1696年)に刊行された井原西鶴作の浮世草子『万の文反古 (よろずのふみほうぐ)』でも年齢を表す「才」が使われています。
「才」は小学校2年生、「歳」は中学校で習う漢字
「才」を「歳」の代わりに使うのは一般に通用していることですので何の問題もありませんが、小学校では別の事情があります。
「才」は小学校で習う教育漢字(2年生)ですが、「歳」は常用漢字ですから小学校では習わず、中学校で習う漢字なのです。そのため、厳密にいうと小学生は年齢を表す漢字は「才」しか使えないということになります。
中学生になったら急に「歳」を使えと言われたら、混乱してしまうかもしれませんね。でも年齢を表すときは「才」は「歳」の代わりに使うことができるとされていますので、あまり神経質になることはないでしょう。
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