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児童館ではトラブルメーカー、保健師さんにも指摘され…多動に悩んだ幼少期
長男のキョウタは、幼いころから動きが激しく、児童館でも走り回ったり高いところから飛び降りたり、お友達とトラブルになってしまったりと、心配が絶えない子どもでした。2歳児健診では保健師さんから専門家への相談を促され、ショックを受けたことも…。
子どもを育てる立場であれば、多くの方が共感する感情かと思いますが、やはり、自分の子に「障害があるかもしれない」という現実は、なかなか最初は受け入れづらいものでした。
次男のアイキが生まれてから、私の育児の過酷さはさらに増していきました。これまで誰にも自分の遊びを邪魔されたことがなかった当時3歳のキョウタ。そこに、ハイハイや伝い歩きを始め、キョウタのおもちゃに手を出すようになったアイキがやってきます。自分のおもちゃにちょっとでも触られると、キョウタからバシーンと手が出るようになりました。しかし、負けじと邪魔をするアイキ。そうなると兄弟でバシン、ドシーン…。
周りの男の子兄弟を持つママに聞いても、こんなに攻撃的なお兄ちゃんは聞いたことがなかった私は、次第に「やっぱり、キョウタは少し違う?」とモヤモヤを抱えるようになっていきました。
託児所ルームの先生の言葉で気持ちが変わり…いざ、専門家に相談
キョウタが3歳のころ、私は時々託児所ルームにキョウタを預けていました。しかし、託児所ルームでも利用回数を増すごとに、問題行動が増えてきてしまったのです。
・友達を叩く
・危ないことを注意するとかんしゃくを起こす
・泣き始めると30分くらい泣き止まない
・みんなと同じことができない
そんな報告を聞くたびに、不安になっていく日々の中、思いきって先生に相談した時に返ってきた言葉が、転機となりました。
「キョウちゃんは、みんなと持っている引き出しが違うかもしれないね。もしかしたら、幼稚園や小学校に入ってから、キョウちゃんは怒られる対象になってしまうかもしれない。それはとても可哀想よね。もし、専門家の先生に相談することで、いい対応を教えてもらえるかもしれない。そしたら、キョウちゃんも、それにお母さんもラクになるんじゃないかな」(ラム*カナさんのブログ「カラフル牧場」より)
この言葉が、すとんと腑に落ちた私は、すぐに専門家(心理士)に相談。すると、キョウタの様子を見た心理士さんから次のような言葉が返ってきたのです。
「キョウタくんは、自分の興味のあることだけに走る傾向は強い子ですね。でも、能力はある。ただ、やりたくないからやらないだけで、できないわけじゃない。そういう意味では他の子と比べると、持ってるバランスが違うかもしれないわね」(ラム*カナさんのブログ「カラフル牧場」より)
これにも完全に同意した私。想像以上にスッキリし、今度はリハビリセンターで、小児科のお医者さんにキョウタを診てもらうことにしたのです。
そこで、ついにキョウタは「広汎性発達障害とADHD(注意欠陥多動性障害)の疑いがある」と言われました。
しかし、もはやそこにショックは受けず、「だから育児が大変だったんだ!」というスッキリした明るい感情しかありませんでした。こうして、専門家のフォローを受け、相談先と安心感を得た私は、新たなステップに進んでいくことができたのです。
団体行動が苦手なキョウタ。徐々に成長を見せていった幼稚園時代
その後、幼稚園に入園したキョウタですが、年少さん~年中さんのころは多動のピークでした。
運動会のダンスなどでもはみだしてしまうことは多く、気になることは多々ありましたが、本人にマイナスなことは伝えず、できたことを褒めていくように努めました。あとは、毎年担任の先生が変わるので、毎回、担任の先生に細かく特性を伝えていくということに気を付けていました。
幼稚園と並行して療育へ、親子ともに救われた思い出
幼稚園に通うキョウタは、彼なりに成長を見せていました。が、それでもADHDの傾向があることから、担任の先生からは「できないこと」ばかり報告されることが多かったです。わが子の「できないこと」を告げられるのは、必要なことだとわかってはいてもつらいものがあります。
しかし、同時期に通い始めた療育が、私の救いとなりました。
幼稚園ではどうしても「問題児」として扱われてしまうことが多いキョウタでしたが、療育では、「キョウちゃんはこんなことができたね、あんなことができたね」と、良いことをたくさん褒めてくれたのです。親として、自分の子が褒められるのはとても嬉しいもの。しかも、療育では親たちの大変さも受け止めてくれるので、私たち親のこともたくさん褒めてくれたのです。
当時、幼稚園から責められることが多く、自己肯定感が下がりがちだった私は、心がほぐれていくような感覚を味わいました。キョウタと私、2人にとって療育は大切な場所となりました。
やがてキョウタに心の成長も見られるようになり、「団体行動が自分にとってどのような意味があるのか」を納得するようになっていったのです。もともとキョウタは、自分で納得しないと前に進めないところがあったため、納得感が生まれるに伴って、団体行動に対する苦手意識もなくなっていきました。
ついに告げられた「ADHD」の診断、心境の変化は?
キョウタが年中さんになった4月のこと。通っていたリハビリセンターで、ついにお医者さんから正式に「ADHD(注意欠陥多動症)」の診断を受けました。私はその時の様子をブログに綴っていますが、キョウタの様子を伝えたところ、お医者さんからこんな言葉が。
「あっはっは、それって典型的なADHDじゃないですか~」
あまりのあっさりとした診断で思わず聞き逃すところでしたが(笑)、先生のこのライトな感じがむしろ“マイナスなことを伝えられているわけではない”という雰囲気で、私も笑顔で受け止められました。そして、この日を境に「ADHDグレーゾーン」から正式に「ADHD」と診断が変わったわけですが、キョウタはキョウタ。何も変わらないし、むしろ「ADHDの子を育児してるんだー!」と誇らしい気持ちでした。
ADHDならでは!キョウタくんの良いところ
中学3年生になった現在、行動面の多動が無くなった今も、常に脳内はたくさん動いている、いわゆる「脳内多動」のキョウタ。私は、そんなキョウタの「脳内多動」が、彼の良いところにつながっていると思うのです。
常に頭の中でいろいろなことを考えているキョウタは、「誰か困っていないかな?」と常にぐるぐる考えています。そのため、誰かが困っている状況をキャッチするのがとても早いのです。それに加えて、ADHDによる持ち前の衝動性から、「誰かの困りごと」に対して動くのも早いキョウタ。そういうところは、まさにADHDの特性が、彼の良い面として出ているところだなと思っています。
ADHDによって困ることもありますが、成長によって課題への向き合い方や、工夫の仕方もキョウタなりに取り組んでいるので、「克服しよう」とは私は思っていません。
「何か問題に直面したら、その都度工夫していこうね、苦手なことは苦手なままつきあっていけばいい、ただ、生きていく上で工夫していけることは工夫していこうね」
キョウタの特性について、私はいつもそういうスタンスでいます。
ADHDっておもしろい!困ったことも、ブログのネタに
私は自分のことを、「みんなと違うことを『楽しい』と捉えるあまのじゃくな性格」と捉えています。だからなのかもしれませんが、世間では小数派のADHDの特性を魅力的と感じることが多いのです。イラストブログを描いていることもあって、キョウタのいわゆる「珍行動」があっても、頭の中にパパパッと四コマが浮かびます。そしてそれをそのままブログに描いているので、ブログによってネタを昇華できていることが、自分の救いにもなっているかもしれません。
それでも、思春期には育児に困ることがあったり、特性により大変なこともあったりしましたが、一緒にタッグを組んで育児に向き合う夫に話を聞いてもらうなどして、乗り越えていきました。これからも、楽しい息子たちと、ポジティブに毎日を過ごしていきたいです。
後編では、宿題の困り事や忘れ物など学校生活について伺っています。
お話を伺ったのは
文・構成/佐藤麻貴