子どもの「語彙力」を上げる方法は? 専門家が教える家庭でできるトレーニング方法とNG行為

昨今、大人の語彙力のありなしが話題になることがありますが、自分の語彙力の乏しさを実感すると、自分の子どもには苦労させたくないと感じませんか? 幼児から小学校低学年のうちに、語彙力を上げておくことができたらいいですよね。

そこで今回は、子どもの語彙力を伸ばすための家でできるトレーニング方法のアイデアを、小学校受験の専門塾「コノユメSCHOOL」を運営する大原英子さんにうかがいました。お受験を目指す家庭はもちろんのこと、お受験を考えない家庭にもおすすめの方法です。

語彙力とは?

まずは語彙力の言葉の意味から確認しておきましょう。

語彙力というと、言葉を覚えている数や種類が多いイメージがありますが、それだけではなく、次の2つの意味が含まれているといわれます。

●言葉の知識量の多さ
●状況に応じて適切な言葉を選択して使用する能力

ただ単に言葉を多く知っているだけでなく、その多くの言葉の中から、シーンに応じて臨機応変に使い分けられる能力を、語彙力と呼びます。

もちろん、言葉の数が少なすぎると使いこなせないため、知らなければ使うことすらできません。いわゆる「言いたいことはあるんだけど、言葉が出てこない」といった状態になりがちです。

けれども、いくら単語を覚えていても、語彙力は培われません。同時にたくさんの言葉の中から、最適なものを選ぶ能力を上げることが重要なのです。

子どもを持つ親としては、ぜひ子どもの語彙力を上げてあげたいものですよね。そこで、幼児期から小学校低学年の時期に語彙力を上げる方法を、大原さん監修のもと、見ていきましょう。

幼児期から小学校低学年の時期に語彙力を上げるメリット

幼児期から語彙力を上げると聞くと、「そんなに早くから取り組む必要はあるの?」と感じるかもしれません。実は早期から語彙力を上げるメリットはたくさんあるのです。

吸収する知識の正確性や質・量が飛躍的に高まる

幼児期から小学校低学年にかけては、子どもの言葉に関する世界が一気に広がる時期です。情報の受け取り方が多様になり、周囲とのコミュニケーションも活発になるタイミングです。

語彙が豊富な子どもは、文章を読んだり、人の話を聞いたりした際に、その意味を正確に捉え、知識を吸収し、日々触れる情報の質と量も飛躍的に高まっていきます。

自信や自己肯定感アップにもつながる

語彙が豊富だと読解力や表現力も早期に育ち、生活の中でも「わかる・伝えられる・考えられる」場面が増え、自信や自己肯定感にもつながります。

人間関係を良好に築くことができる

語彙力は感情のコントロールや人間関係を築く力にも関係しています。自分の気持ちを的確な言葉で表現できる子どもは、トラブルを減らし、他者との対話も円滑に行えます。

語彙は単なる言葉の数ではなく、人生を豊かにする“思考と対話の道具”と言えるのです。

幼児期から小学校低学年の時期に家庭でできる語彙力を上げる方法3選

幼児期から小学校低学年の時期には、ぜひ親子で語彙力を上げるトレーニングを行いましょう。おすすめの方法を3つご紹介します。

1.「五味太郎・言葉図鑑」

「五味太郎・言葉図鑑」は、面白い絵と一緒に言葉が描かれた図鑑です。「うごきのことば」「ようすのことば」など、身近な言葉をテーマ別に、豊富なイラストとともに紹介しており、この本を何度も親子で読むだけで自然と語彙力が上がるでしょう。

全部で10冊あるので、すべて手に取ることが難しいかもしれません。その場合は、「てくてく」「ふわふわ」などオノマトペがたくさんつまった「言葉図鑑2 ようすのことば」から手に取ってみてください。様子を繊細に表現をできる人は、感情も豊かになり、物の微細な様子に目を向けられる人になるでしょう。

2.しりとり・言葉遊びゲーム

しりとりは、幼児にとって語彙を増やす最初の一歩です。基本のしりとりに慣れてきたら、「3文字の言葉」「食べ物」「“ん”で終わる言葉」「赤いもの」「見えたものを全部言葉にする」などの言葉遊びをしましょう。

テーマを変えるだけで数えきれないほどの多様なゲームができ、より効果的に語彙が広がります。幼稚園や保育園までの行き帰り、病院の待ち時間、お風呂の中など隙間時間にできます。

小学生になって漢字をたくさん覚えたら「漢字しりとり」もおすすめです。「工事」→「事件」→「件数」など、漢字でつなげていきます。おのずと漢字への関心が深まりますし、漢字から言葉の意味や使い方を知ることができます。高学年になったら、「四字熟語をたくさん挙げる」など、年齢に合わせてテーマを工夫しましょう。

3.ジェスチャーゲーム

「言葉を体で表す」ジェスチャーゲームも語彙力育成に効果的です。「野球」「料理」などの名詞を動きに変換する際、動詞的な発想が求められるので、言葉の意味を実感を伴って覚えることができます。さらに、相手の動作を見て言葉を引き出す過程で、「連想」や「言い換え」の力が育ちます。

また実際のコミュニケーションでは、言葉そのものだけでなく、表情やしぐさといった視覚情報が大きな役割を果たします。言葉と同時に身体表現力も育てることで、気持ちや意図がより正確に伝わり、豊かで信頼感のあるコミュニケーションにつながります。

4.ごっこ遊び

昔から行われている「ごっこ遊び」もおすすめです。お店屋さんごっこでは、「いらっしゃいませ、こちらの商品は●●です」と、役割に応じた言葉を使うことで、敬語や説明語彙を自然に習得できます。

子どもの語彙力のためにやってはいけないこと

子どもの語彙力を上げたいと思ったら、日頃の大人の意識や行動にも注意しましょう。

1.スマホを見ながらの会話は意欲を失う

言葉は日常の中で覚え、実際に使うことで豊かになっていくものです。中でも、家庭での会話量は子どもの語彙力と深く関わっています。子どもが話しているときに、親がスマホを見ながら聞いたり、途中で話を遮(さえぎ)ったりすると、子どもは話す意欲を失い、結果として言葉を使いこなすチャンスを失ってしまうので要注意。

2.間違えても叱責・笑うのは厳禁

新しい言葉を覚えたての頃は、使い方を間違えることもありますが、「使ってみよう」とする姿勢こそが語彙力を伸ばす大切な一歩です。間違ったからといって叱責したり、笑ったりせず、優しくその場で正しい使い方を教えてあげましょう。

3.大人自身も豊かな語彙を意識して使う

日常の中で親が使う言葉は、子どもに大きな影響を与えます。子どもとお出かけした際にいつも「楽しかったね」で終わらせず、「ワクワクした」「感激した」「夢中になった」「驚いた」「心が満たされた」など、たくさんの表現を使ってみてください。私たち大人自身も、豊かな語彙を意識して使うことで、子どもたちの言葉の世界もより広がっていきます。

[まとめ]子どもの語彙力を大人がサポートしてあげよう

語彙力は、言葉を知っている量と共に適切に選択して使いこなせる力です。語彙力が低いまま過ごすデメリットは多く、良好な社会生活を営むのに語彙力アップを心がけたいものです。

幼少期から語彙力を上げることはとても有益です。親子で語彙力アップの取り組みを楽しく行ってみてください。日頃のささいな会話から言葉選びを重視して、大人がサポートしてあげましょう。

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記事監修

大原 英子 さん 株式会社コノユメ 代表取締役

東京大学卒業後、大手通信会社勤務。その後、自身の母親が30年続けている受験絵画教室のメソッドを活かし、2011年小学校受験専門幼児教室を設立。2022年5月に株式会社コノユメを設立し、過熱する小学校受験の現状に対し、「家庭での学びを大切にする」という視点を提案。特に共働き家庭でも無理なく受験できるオンラインSCHOOLを開設し、対面とオンラインの両軸で指導を展開。
慶應義塾幼稚舎、慶應義塾横浜初等部、早稲田実業学校初等部、雙葉小学校、白百合学園小学校等、難関校に合格者を多数輩出。自身も二児の母。

構成・文/石原亜香利

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