メジャーへ憧れる子どもたちへ「どこでもドアで体感させてあげたい」マック鈴木さんが語る 野球から学べる大切なこと【MLB CUP 2025】

大谷翔平選手をはじめ、多くの日本人メジャーリーガーが活躍する今、MLBに憧れる子どもたちが急増しています。そんな子どもたちに向けて、全国の小学校や野球教室で「野球の楽しさ」を伝えているのが、マック鈴木さんです。実は、彼こそが日本のプロ野球を経ずにメジャーリーグへ挑戦した、最初の日本人選手。1996年にデビューしてから5球団を渡り歩いた、まさに日本人メジャーリーガーのパイオニアなのです。今回は、マックさんがゲストとして参加したMLB CUPの会場で、MLBと野球の魅力についてお話を伺いました。

滋賀で行われた「MLB CUP 2025 」野球教室も同時開催

MLBの主催で、2025年11月22日(土)から24日(月・祝)に開催された硬式少年少女野球全5団体所属の小学6年生以下の選手を対象にした全国決勝大会「MLB CUP 2025 ファイナルラウンド」。

全国予選を勝ち抜いた9チームが戦い、最終日の決勝戦は、大阪柴島ボーイズ(ボーイズリーグ)と勝呂ボーイズ(ボーイズリーグ)が延長戦までもつれ込む大接戦に。最後は7回8-4で、大阪柴島ボーイズが栄冠を手にしました。

優勝を決め喜ぶ大阪柴島ボーイズ(ボーイズリーグ)のナイン

惜しくも決勝トーナメント進出とならなかった選手たちは、ゲストのマック鈴木さん、小笠原慎之介選手による野球教室に参加。

マック鈴木さんの発する一言ひと言を真剣に聞く選手たち

野球教室を終えたマック鈴木さんは、「野球教室を通して、子どもたちが知らなかったことを知り、野球のスキルアップをしていくお手伝いができたかなという想いがあります。同時に、みんな野球が好きなんだなということが、強く伝わってきました。試合に負けてすごく悔しいと思っているはずですが、また努力を続けて、来年、再来年に帰ってきてくれたらうれしいですね」と話してくれました。

日頃から、子どもたちに野球の楽しさを伝えているマックさんに、MLBと野球の魅力について伺いました。

マック鈴木さん「生きていくのに必死だった」16歳での挑戦が原点

日本人メジャーリーガーのパイオニア的存在のマック鈴木さん

――野球を始めたきっかけや、長く続けてこられた理由を教えてください。

マックさん:自分から「やりたい」と言ったのが野球だったんです。父から「続ける覚悟があるんだったら」と約束させられて始めました。小学2年生の時です。土日はお母さんの送り迎えやお弁当があって、道具も高い。甘い考えではできない、と。

だから、やらせてもらった瞬間から、やめたいと思ったことは一度もありません。

――16歳でマイナーリーグからスタートされましたが、その努力を支えた原動力は何だったのでしょうか?

マックさん:もうね、生きていくのに必死だったんですよ。英語もわからないままアメリカに放り出されて、自分で生活していかないといけない状況でしたから。

たまたま就職した先がプロ野球の1Aのチームで、洗濯係などの雑用をしながら、毎日142試合、プロの試合を見られる環境にいました。仕事に追われていたので、辞めたいとか、しんどいとか、帰りたいとか思う暇もなかったんです。

メジャーリーグに憧れる子どもたちへ「自分の目で見て、肌で感じてほしい」

森井翔太郎選手のホームランダービーでは、投手役を務めたマックさん

――メジャーリーグに憧れる子どもたちに、ご自身の経験から伝えたいことはありますか?

マックさん:もしできるなら、どこでもドアを使ってあの場所を感じさせてあげたいです。そうすれば「ここでやりたい」と一発でわかると思います。

僕もメジャーで投げ始めて、「ここで1日でも長くやりたい」という気持ちが固まりました。やるんだったら、やっぱり自分の目で見て、肌で感じるところまで行ってもらいたいですね。

失敗しても守備で取り返せる。それが野球の魅力

MLB CUPと同時開催された、はじめての野球体験「PLAY BALL in SHIGA」では、子どもたちを温かく見守る

――全国の小学校や野球教室で、子どもたちに野球を教えているマックさんですが、野球というスポーツだからこそ得られる楽しさとは何でしょうか?

マックさん:攻めると守るがはっきり分かれているところですね。この回は攻める、裏は守る、というように。だから、攻める時に失敗した選手は、守る時にカバーできます。

三振してショックを受けても、次の守備でファインプレーをすれば元気に帰ってこられる。失敗したことを忘れて、次の打席で打つこともできる。一つの失敗で一喜一憂せずに、次のチャンスで取り返せるということを野球から学んでほしいなといつも伝えています。

MLB CUP 2025の表彰式。優勝した大阪柴島ボーイズ(ボーイズリーグ)の選手の健闘を称えるマックさん

一度のつまずきにとらわれず、次の一歩をまた踏み出す——野球を通して、子どもたちのチャレンジをそっと後押ししていきたい、そんな思いが伝わってくるマックさんのお話でした。

お話を伺ったのは

マック鈴木さん

1975 年、兵庫県⽣まれ。1992 年、アメリカに野球留学。1993 年にはシアトル・マリナーズと契約をして 1A サンバラディーノで 4 勝 12 セーブを挙げ、1996 年に⽇本⼈三⼈⽬となるメジャーデビューを果たす。⽇本プロ野球界未経験者として初の快挙であり、アメリカンリーグ初の⽇本⼈メジャーリーガーでもある。1998 年にメジャー初勝利を挙げ、2000年にはカンザスシティ・ロイヤルズで 8 勝を挙げ⾃⾝初の完封勝利を達成。2002 年、オリックス・ブルーウェーブに⼊団。2006 年よりメキシコ、台湾、ベネズエラ、アメリカ独⽴リーグ、ドミニカなど、さまざまな国でも活躍した。

◾️小学硬式野球の憧れの地「MLB CUP 2025」とは

MLB CUP 2025ファイナルラウンドの開会式

2016年にスタートし、今年で9回目を迎えるMLB CUP。昨今の野球人口の減少に歯止めをかけるべく「MLBとして全ての野球選手を平等にサポートし、野球業界の発展に寄与できれば」という想いから、5リーグの垣根を越え、これまでの公益財団法人日本リトルリーグ野球協会(リトルリーグ)所属チームのみを対象としていたトーナメントに加え、公益財団法人日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)、一般社団法人日本ポニーベースボール協会(ポニーリーグ)、一般社団法人全日本少年硬式野球連盟(ヤングリーグ)、九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)の4リーグを対象とした新たなトーナメントを発足。小学校4年生以下を中心とするマイナー部門と、5年生以上を中心とするメジャー部門の2つのトーナメントを開催し、一人でも多くの子どもたちに夢を届けられる活動の一環として開催されている。

「MLB CUP 2025 ファイナルラウンド」 試合結果

優 勝 大阪柴島ボーイズ(ボーイズリーグ)
準優勝 勝呂ボーイズ(ボーイズリーグ)
第3位 北関東リトルリーグ(リトルリーグ)  
第3位  稲沢中央ボーイズ(ボーイズリーグ)

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取材・文/吉利智子

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